第51話 得体の知れない何か?
私たちは診療所まで赴いた。
(エイン)「すみませんでした!!!」
(ルース)「すみませんでした……!!!」
私たちはお医者さんに事の顛末を話し、深く頭を下げてお詫びした。お医者さんは「仕方ない事だ、此方こそすまない」と言って、そのまま姿を消してしまった。
どうする事も出来ない私たちは、とりあえずガイドさん達の様子を見にガイドさんとビリカさんのいる病室に訪れる。
私たちが病室に着いた時、ガイドさんはカーテンを開け陽の光を浴びていて、ビリカさんは「そ、そこは?!ダメ!!ガイド様!!」という寝言を言いながら気持ちよさそうに眠っていた。
(ガイド)「全くこの子は……」
そう言いながらビリカさんを見つめるガイドさんの目はとても優しそうで、少し、ほんの少し、だけどいい目だと思った。
(エイン)「ガイドさん」
(ガイド)「エイン、ルースさん、おはようございます。もしかして……心配してくれましたか?」
(エイン)「まぁ、一応……」
(ガイド)「あら!それは嬉しい!!ふふ!!」
(エイン)「ね、ちょっと話良い?」
(ガイド)「……、何かありましたか?」
(エイン)「実は……」
私はガイドさんにお医者さんにしたように、事の顛末を説明した。ガイドさんは少し考えた跡、にへらと笑いながら「ちょっと分かりませんね」と言い、自分のベッドに座る。
(ガイド)「ガイボンである可能性が無いとは言えませんが……、伝承的な話を聞くところソレは人を連れ去るような生き物ではないと思いますよ?それにそのガイボンが出たのであれば、なぜあなた達は無傷なので?」
(ルース)「……、屋根の上で眠っていたから……でしょうか?」
(ガイド)「その可能性もありますが、神出鬼没の魔族が屋根の上にいるあなた方に気がつかない可能性の方が低い。何か特別な事情があれば別ですが……、……何にせよ、魔物使役者を連れていない山越えの方が不可解です。いくら整備されているとはいえ、その人数で魔物使役者のいない一団では最初の山で壊滅する可能性が高い……一体何を考えていたのか……」
(エイン)「単純に途中で魔物使役者が倒されたとかは無いの?」
(ガイド)「……、無いことはありませんが魔物使役者はその一団の要、たとえ魔物使役者以外が死んだとしても魔物使役者だけは生き残る、それくらい重要視されている方々ですよ。それに誰も欠けていないと言ってたんですよね?」
(エイン)「はい」
(ガイド)「ま、詳しい事は分かりません。一旦その現場に行ってみますか?もう一度行けば何かわかるかもしれませんし」
(ルース)「え?!!!も!!!もう一度?!!」
ルースちゃんが今まで一番驚いたのでは無いかというくらいに驚いている。そんなに嫌なのかな?
(ガイド)「?何か不都合でも?」
(ルース)「い!!いえ?!!で!!でも!!ガイボンでなくても!!!なにか!!!得体の知れない何か!!!が?!!いるやも知れませんし!!!??」
本当に異様に行きたくなさそうだ。何か理由があるのだろうか?
(ガイド)「……、!なるほど。もしかして貴方……、お化けの類が怖いとか?」
(ルース)「おば!!いえ!!そんなもの恐れていては!!!!王族の名が廃ります!!!!私は!!!赤髪の王族・ノルヴァルタスの血を引く王女ですからね!!!!」
キャラ崩壊して多分、そんな事は言いたく無いであろう言葉まで言っているので、相当お化けの類は好まないらしい。意外な弱点だ。
(ガイド)「わかった分かった、分かりました。ルースさんはお留守番でビリカのそばに居てあげて下さい。起きた時に一人だと寂しいですからね。私とエインで行ってきますから」
(ルース)「……、うぅ……すみません……」
危険な森を突っ切ってまで街に戻ってきた理由は分かったのだが、私まで行く流れになっている。でも行こうと思っていたのでそれはよし。
(ガイド)「では準備して明日の朝にでも行きましょうか」
(エイン)「はい!」
翌日、言った通り私とガイドさんは山に入っている。ガイドさんが四六時中魔力を発しながら歩いていたのでルースちゃんと来た時より楽に山を登れている。一向に魔物が襲ってこないからだ。
圧倒的強者の一人ではあるということか……こんなガイドさんを拳一つで倒したネイチャルエデンは一体どのくらいの強さなんだろうか。また会えたら聞いてみよう。
さすがに山々蛇に威嚇は効かず、普通に追いかけてきたので2人して全力で逃げながら山を下った。山を下った先の休憩所は昨日と何一つも変わっていない。
私たちは小屋に入って色々と物色を始める。しかし、何も見つからない。見つからないのであるかどうかも分からない何かを探しながら雑談を始めた。
(エイン)「ガイドさんって結界に阻まれないんですね」
(ガイド)「人間ですからね」
(エイン)「人間って言っても妖怪ババ……」
(ガイド)「何か?」
(エイン)「しゅみましぇん……以後気をつけましゅ……」
本気で睨まれた。めちゃめちゃ怖い。
(ガイド)「よろしい。……おそらくこの結界では、エルフやドワーフは勿論の事ですが……オークも入ってこられるかも知れませんね」
(エイン)「え、オークがですか?」
(ガイド)「結界を解析してみましたけど……四足獣等の人型では無い魔物には凄まじい効力があります。しかし、人型に対してはそれ程強い効力は感じません」
(エイン)「じゃあオークが連れ去ったって事?」
(ガイド)「オークだけとは限りませんよ。ゴブリンの可能性もありますし、それに……、………ビリカの様子からも多少は分かるでしょうけど……エルフやドワーフの人間への恨みは凄まじいですから。特にエルフは記憶力が良いので、自分が受けた痛みを昨日のように思い出せる方もいます」
(エイン)「そ、そんなに……」
(ガイド)「時代は変わったと……割り切る事のできるエルフ達がどれだけいるのか……」
(エイン)「……、大丈夫だよ。ルースちゃん達が次の世代の王族だから。時代が変わる事が目に見えて分かるようになる時が来るよ……なーんにも根拠ないですけどね!」
(謎の声1)「根拠のいない言説は……妄想に過ぎん」
私はいつの間にか背後を取られていた。首元にナイフを突きつけられ私は両手を挙げる。ガイドさんも背後を取られていたらしく、私と同じように腕を挙げていた。
(謎の声2)「貴様らも昨日の一団の仲間か?」
(ガイド)「一団?何のことでしょう?」
(謎の声1)「やめろ。訊かなくとも連れかえれば分かる」
(謎の声2)「……そうだな」
抵抗……しない方が良いみたいだ。ガイドさんが私に送ってくる視線は何もするなという言葉を含んでいたから。
その後、私たちは目隠しをされ腕を縛られ何処かに連れて行かれた。長い間連れられていたから今が何処か見当もつかない。
(謎の声1)「ここで時を待つがいい。仲間がいるなら話してみる事だ」
(謎の声2)「いないかも知れんがな!」
2人の声が消えた。それから暫くして私の腕の縄と目隠しが解かれる。ガイドさんが解いてくれたみたいだ。縄の残骸を見るにガイドさんは引きちぎったみたいだけど。
周りを見渡すと辺りは暗く殆ど何も見えない。魔法を使っても私はやっと半径1メートルが見えるか見えないかくらいだ。
(ガイド)「エイン、魔法を使って暗い中も見る事は可能ですか?」
(エイン)「出来なくは無いけど……」
(ガイド)「……一応明るくしますね」
ガイドさんは指を鳴らし炎を出した。その炎を大きくし、空間の四隅そして真ん中に置いた。部屋の中が明るくなり全体が見える。部屋の中には連れ去られたであろう人たちが壁に固まっていて、大きく震えていた。寒さではなく恐怖を感じている震え方だ。
(ガイド)「これは……エイン、昨日言っていた一団はおられますか?」
(エイン)「う、うん。全員いる」
(連れ去られた人1)「その声は!!エイン殿!!助けに来てくださったのですか?!!」
(連れ去られた人2)「ありがたや!!ありがたや!!!」
(ガイド)「エイン、捕まったふりをしなさい……彼らに演技ができるとは思えません……」
ガイドさんが小声で話しかけてきた。私も合わせて小声になる。
(エイン)「演技?何で?」
(ガイド)「今に分かります……早く」
(エイン)「分かりました……、……、すみません皆様……私も捕まってしまったのです……!力になれず申し訳ありません……!」
(連れ去られた人3)「おぉ!なんて事だ!!」
(連れ去られた人4)「救いは!!救いはありませぬか!!」
この時炎が一瞬で消えた。私はガイドさんに引っ張られ壁に張り付く。その私に覆い被さるようにガイドさんも壁に張り付いた。
(謎の声3)「さてさて、今日新しく入ったヤツは……あぁ?入ったヤツいるのか?昨日みたメンツと変わりがねぇみたいだが……嘘ついたのか?」
(謎の声1)「どうした?何かあったのか?」
(謎の声3)「'シェンデラ'……今日入ったヤツどいつだ?俺には昨日と変わらんように見える」
(シェンデラ)「'ギリル'……、貴様には人間が同じように見えるらしいな……何処ってそこに……いない?!なぜだ?!!」
(謎の声2)「どうした?シェンデラ、おまえが騒ぐなど珍しい」
(ギリル)「'パードン'……おまえらの連れてきたというヤツら……いないらしいぞ……嘘ついたのか?」
(パードン)「嘘をついて何になる?嘘をつく意味は俺には無いのだが?」
(シェンデラ)「やめろ。逃げられたのか?この短時間で……、どう足掻いたところでパードン、貴様と私二人の責任に変わりはない。ギリル……中にいるヤツらから情報を聞き出せ。嘘をついていると分かれば少々手荒くしても構わん」
(ギリル)「あいよ……」
お疲れ様です。
洋梨です。
特に何も考えてない展開です。はい。




