第50話 気を抜いた故の失態
私は小屋の外に出てルースちゃんと合流した。結界の効力は大きく、周囲に魔物はいないらしい。安心して休めるとの事だ。その為、私達は小屋の屋根に登り屋根の上で休憩する事にした。
(エイン)「全員で10人なんだって」
(ルース)「10人?!……少ないですね。ならば尚のこと、魔物使役者がいなければ無謀な山越えなのに……」
(エイン)「でも誰も欠けてないらしいから、中に魔物使役者が居るんじゃないかな?」
(ルース)「……、うーん……それは明日伺いましょうか」
(エイン)「そうだね。ところでさ、また山登るの?こっちの森突っ切った方が良くない?ほんとに道とかないの?」
(ルース)「……うーん。本当に道は無いんですよね。整備されている道は山越え用しかありません。森は森で魔物の数が夥しいので……道を作る事も維持することも難しいですから。その点、山越えなら魔物使役者さえいてくだされば、頂上の魔物を使役して楽に渡れるんですよ」
(エイン)「ふーん。あ、これ美味しいね!はい、あーん!」
私は持って来ていた食料の一部を自分たち用に持って来ていた。それで腹ごしらえをしている。
今この時食べたお団子がかなり美味しかったのでルースちゃんにもお裾分けした。
(ルース)「あーん、……、……でも良かったんですか?全て渡してあげた方が……あちらもギリギリかもしれませんし……」
(エイン)「んー、元気そうだったから良いと思うよ。そんなにすぐには餓死もしないと思うし。帰る時に私たちがお腹空いて力出せないんじゃ、笑い話にもならないよ」
(ルース)「……、それはそうかもしれませんが……」
(エイン)「あ、コレも美味しい!!あーん!!」
(ルース)「あーん。……!美味しい!!」
(エイン)「でしょ?!帰ったらいっぱい買おう!!」
(ルース)「そうしましょう!!」
その後、私たちは夜空を少し見た後2人で眠りについた。眠る前に魔物の探知をしたけど、やはり周囲には小さな気配は複数あれど、大きな気配などなかった。その為、2人で安心して眠る事にした。
……………
朝起きるとルースちゃんが既にいなかった。顔でも洗っているのかと思い、池を見るがそこにルースちゃんの姿は無い。一旦、依頼者の人たちの様子を見ようと思い小屋の中に入ると、私は言葉を失った。小屋にいた人達が皆、居なくなっている。
皆んな……いない……??!!!?
私は慌てて屋根に飛び乗り周囲の魔力を探知する。しかし、私の探知できる範囲に誰の魔力も引っかからない。
(エイン)「……!誰も何処にもいない?!まさかルースちゃん達だけで帰ったとか?!いやそれは無い!!」
荷車が小屋の前にある。全員が歩きでこんな魔物だらけの山を山越えなんて考えられない。でもだったらどこに?!
(ルース)「エイン!!!」
(エイン)「……!!!ルースちゃぁあん!!!!」
屋根に飛び乗って来たルースちゃんに私は思いっきり抱きついた。ルースちゃんは少しだけ頭を撫でてくれる。
(ルース)「……、これは大失態です……」
(エイン)「大失態?」
(ルース)「皆様の反応が何処にも見当たりません……半径1キロメートルにはいないかと思われます……」
私は半径100メートルくらいしかわからないから、ルースちゃんやガイドさんはやはりすごい。それよりも、そんな遠い距離まで反応がない事が気になる。
(エイン)「……皆んなで何処かに行ったってこと?」
(ルース)「無事であるのなら本当はそれが1番良いのですが……考えれる可能性として……魔物が小屋に侵入して連れ去ったか……その場で食べてしまったか……」
(エイン)「食べたのなら、壁や床に血とかついてるんじゃないの?何一つそういう跡無かったよ?」
(ルース)「……何も無い事が……問題なんです……」
(エイン)「どういう事?」
(ルース)「……、一先ずは街に戻りましょう。少々危険ですが……!森を突き抜けます!ついてきてください!!」
そう言ってルースちゃんは森の中を走っていく。私は慌ててルースちゃんを追いかけた。
襲ってくる魔物を避けながら、私たちは街まで戻ってきた。かなりギリギリで、下手に戦わず逃げに徹していた事が功を奏した。
(ルース)「……、エイン。少しだけ心当たりがある話をします」
(エイン)「う、うん」
ルースちゃんは歩きながら重そうに口を開いた。相当、話しにくいものだと大体わかる。
(ルース)「『大地の花には赤い水 かわいい子には蝶の紐 愛しいものには恵みをあげましょう さてさて今日は幾人か』という自然都市に伝う歪な唄をご存知ですか?」
(エイン)「う、うん。勇者様伝記に書いてあった【関わる事に注意を要するもの】の一つに紹介されてた気がする……'ガイボン'だっけ?」
(ルース)「はい。ガイボン……人を主食とする魔族の一種だとされています。ただ、勇者インカの時代から今現在に至るまでその正体は全くの不明……自然都市にしかいないとされている事で王族としての対応は……後回しにされています」
(エイン)「ふーん。それがどうしたの?犯人って事?」
(ルース)「……、容姿等、ほとんどの事が不明でその強さも不明ですが……一つわかっている事があって……それが、神出鬼没という事。いつ何処に現れるかもわからず、姿も見せず、骸を発見した場所からは何処か遠くから唄が聞こえる……そんな魔族です。連れ去ったのがその魔族なら……あの部屋に何もなかった事も説明がつきます」
(エイン)「うん……?……、……?でも唄残していってないよね?違うんじゃないの?」
(ルース)「……、それはその……眠っていたので……」
大雑把な考え方すぎる。まぁでも、神出鬼没の魔族ならルースちゃんの言っている通り連れ去る事も可能だろうし、可能性はないことはないのかな?でもそれより気になる事がある。
(エイン)「結界張ってたよね?侵入されたって事?」
(ルース)「おそらくはそうかと。……、それほどの強さなのかもしれません……これまでそのガイボンを討伐または捕獲しようと冒険者単位では対応してきました。しかし、その対応に出た冒険者は皆行方不明になっています……」
(エイン)「……、ルースちゃん。怖いの?」
(ルース)「い!!!い!いえ!!!そんな!!!その!!!……お恥ずかしい限りですが……その……出来ることなら関わりたく無かった……という気持ちがあり……でも皆様を助けなければいけないという事もわかっているので……でも……心の準備が……!!」
苦虫を噛み潰したような顔してる。よっぽど嫌な案件らしい。それでも行方不明者の為に挑もうとしているルースちゃんは素直に尊敬する。ただ、情報が少なすぎる魔族相手だからこそ、慎重になるべきだとは思う。
(エイン)「……、でもとりあえず、ガイドさん達にも話を聞いてもらいたいな」
(ルース)「そ、そうですね……急がねば!」
お疲れ様です。
洋梨です。
ルースは命をかける覚悟は常日頃から持ち合わせていますが、それとこれとは別の恐怖ということです。
基本的にはこの自然都市編は主軸となるテーマとネイチャルエデンの過去しか決めてない(それも大雑把に)ので、変なのいっぱい出てくると思います。




