第49話 自然都市での初任務?
私たちはガイドさんとビリカさんを連れて診療所まで来た。ガイドさん達はただ眠っているだけで、特に身体に異常はないのだそう。大丈夫だとは思っていたけど、実際に大丈夫だという判断があると何処となく安心した。
ツァービさんはいまだに記憶が戻らないらしく、シェーラルカさんの話を少し不思議そうに聞いている。
(ツァービ)「旅に?」
(シェーラルカ)「あぁ、もう一度旅をしよう。私と一緒に……嫌か?」
(ツァービ)「……いいえ。むしろ……貴方にそう言ってもらえて……心が温かくなりました……なぜかは分かりませんが……私は貴方と一緒にいたいみたいです……」
シェーラルカさんはそう言ったツァービさんの手を両手で握り、その手を額にまで持って来ていた。
(シェーラルカ)「そうか……ありがと……」
シェーラルカさんの顔は見えなかったけど、どこか温かい空気が流れていた。これがきっと、2人の絆というものなのだろう。
(ルース)「エイン……、戻りましょうか」
(エイン)「そうだね。邪魔しちゃ悪い」
私とルースちゃんが一度ガイドさん達の所まで戻ろうと廊下を歩いていると、前からお医者さんが手を振りながら急いで走って来た。
(医者)「お主らは冒険者だったな?!少し話があるのだが!聞いてくれんか!」
(エイン)「何かあったんですか?」
(医者)「実はの、とあるもの達に事のついでにと切れかけてた薬草を取りに行ってもらったんだが、魔物に襲われて身動きが取れんらしい!助けに行ってもらえんか?!場所は山を1つ越した場所にある休憩所なのだが!!」
(エイン)「……!お任せ下さい!!」
(ルース)「……、お任せを。でも……不思議ですね。自然都市の移送者のパーティーには魔物使役者がいる筈では?」
(医者)「その筈なのだが……理由はよく聞いておらん…すまんな……」
(ルース)「いえ!では行って参ります!エイン、急ぎましょう!」
(エイン)「うん!」
……………
私たちは数日分の食料や飲み物を鞄に入れてから、身動きが取れない人がいるという場所まで急ぐ。道は山道の一本道しかなく、迷う事はないのだとか。そもそも山にある道はこれ一本なのだそう。
そんな山道を駆ける途中には数多くの魔物がいてそれら全てが私たちに襲いかかって来た。
(エイン)「はぁ、はぁ……魔物!!多すぎ!!!」
(ルース)「はぁ……自然都市ですからね。それとエイン、叫ぶと体力を消耗しますよ!」
結局私たちは夜になっても目的の場所まで着かなかった。とある洞窟の入り口で休憩する事にする。夜は目も見えないし、恐ろしい魔物は夜の方が活発に動くから夜に動くのは良くないとガイドさんからも教わっていたし、ルースちゃんも身に染みて分かっている様だった。
(エイン)「近くにあった枝とかおっきな木取ってきたよ」
(ルース)「すみません、危険な事をさせてしまい……此方も着火剤に使える【ボッカの花】や火打石を見つけて来ました」
(エイン)「これで火が起こせるね!」
(ルース)「はい」
私たちは火を起こしてから少しだけ息を抜く。完全に息を抜くには流石に危険だが、魔物の気配も殆どないし常に気を張る必要もないという判断だった。
(エイン)「でも魔物多すぎだよね?私だけで30体くらい倒したよ?ルースちゃんも60体くらい倒してるよね?」
(ルース)「はい。まぁ、自然都市は自然が豊かですから……街の外や畑、田んぼといった人の手が常時かかっていないところは魔物が沢山いますよ。全く人の手のかかっていない所には恐ろしい程に存在しますね……一応、田畑や農場には魔物避けが施されていますが、それも全ての魔物を追い払うまではいきませんので……」
(エイン)「ふーん、でもじゃあ、魔物避けがある所だと少しは安全なんだ?」
(ルース)「そうですね。英雄都市で街郊外を歩くよりは安全ですよ」
(エイン)「なるほど。結構安全だ」
(ルース)「それよりエイン、身体は大丈夫ですか?昨日の今日でこの依頼……慣れていないと大変ではありませんか?」
(エイン)「ん?まぁ、少しは疲れてるけど平気!ルースちゃんと一緒に依頼こなすの楽しいよ!」
(ルース)「……、なら良かったです」
(エイン)「……、ね、この依頼ってさ。ギルド経由じゃないよね?直接だし……そういうのってギルドに怒られないの?」
(ルース)「……うーん。既にギルド経由で依頼を受けているのに、そちらを疎かにしていたら流石に怒られるやもしれませんが……大丈夫ですよ」
(エイン)「そっか。……でも、報酬欲しいなぁ」
(ルース)「ふっ!……、すみません……いや……あの……あまりに率直な意見だったので……」
ルースちゃんが顔を両手で隠して笑っていた。その笑顔を見たくて私はルースちゃんの手を顔から剥がそうとするが、全く歯が立たずこじ開けられない。
(エイン)「ダメだ……!こじ開けられない……!」
(ルース)「……すみません……ふふ!」
その後また少し話した後、私たちは交互に眠った。朝になり、その場を後にし目的の場所へ向かう。
(ルース)「……、山頂が近い。そろそろ……巣があるはずですが……」
(エイン)「どうしたの?」
(ルース)「自然都市には大きな山脈があるのですが……その数々の山の頂上付近にそれぞれ魔物の巣があるんです……それがとてもとても厄介で……」
(エイン)「でも身動き取れない人達は山を越えたんでしょ?ならある程度は大丈夫なんじゃないの?」
(ルース)「それが不思議なんですよね……魔物使役者がいないのであれば……実力のある冒険者でもない限り山を越えることは不可能ですし、一度山を越えたのであればそのまま他の山も越えられる可能性も高いので……魔物使役者の方に何かあったのかも……」
(エイン)「ふーん。あ、巣ってあれ?」
私は大きな卵が2つ入った大きな巣を少し下に見つけた。まさかの巣を通り越していたのだ。私はその巣を指差した瞬間、ルースちゃんに引っ張られ一気に山頂を越え、山を降り始めた。
そして少し山を下ったところでルースちゃんは一旦止まる。私は勢い余ってそのまま山をまだ少しゴロゴロと下った。
(エイン)「うぅ……痛い……」
少し身体を打っただけで怪我はしてない。これは不幸中の幸いだろう。
(ルース)「エイン!!!すみません!!!立てますか?!」
(エイン)「……、立てない……ちょっと休憩する」
(ルース)「は、はい。では少しこの場を威嚇します……鬼神傀儡……!!」
ルースちゃんがその技を使った瞬間、周りの木々や草花からガサガサと大きな音が鳴り響いた。その音はどんどん遠くへ遠ざかっていく。
(エイン)「……やっぱりすごい。……、なんで急に走ったの?」
(ルース)「この山の頂上には、山々蛇という魔物の巣がありまして……とても危ない蛇なので……逃げた方が得策なんです」
(エイン)「最初に言ってくれれば一緒に走ったのに……」
(ルース)「すみません……」
(エイン)「……、まぁ良いや。それよりもさ、あれその蛇じゃない?」
私はスッと立ち上がって今降って来た道を指差す。私の指差す先には、いくらなんでも大きすぎるだろうと言いたくなるほどの大きな蛇がいた。顔だけでも私の5倍は大きい。
(ルース)「そ、そうですね……!!逃げましょう!!」
(エイン)「わかった……!!」
そして私たちは全力疾走で山を駆け降りた。途中までは蛇もついて来ていたが、ある所を境に追ってこなくなる。そして私たちはそのまま山を下り、目的の休憩所まで来た。休憩所は綺麗な小屋で、近くには綺麗な池と池に注がれる滝がある。
(エイン)「すみませーん、お待たせしましたぁ……助けに馳せ参じたエインという冒険者です」
私は持ってきていた青色の石が額にはめられた仮面をつけ、休憩所の扉を開け、依頼者の確認をする。ルースちゃんは外で魔物の警戒をしていた。休憩所には結界が張ってあるからあまり警戒の意味はないらしいが、念の為らしい。
(遭難した人1)「おぉ!助けに来てくれたぞ!!ありがたや!!!」
(遭難した人2)「こんなおチビちゃんがか!!ありがたや!!!」
(エイン)「おチビちゃん?!」
(遭難した人3)「コレ!失礼じゃろうが!!……失礼しました、エイン殿。馳せ参じてくださった事に心より感謝申し上げます」
(エイン)「はい、……ご無事で何よりです」
ざっと見たところ、おおよそ10人くらいしか居ない。この数しかいないのであれば、おそらく死んだ人もいるだろうけど今ここにいる人が無事で良かった。
(遭難した人3)「お心遣い痛み入ります……荷運び全10名、誰1人かける事なくエイン殿に会うことができ、大変喜ばしく思います」
あ、誰も死んでないんだ。良かった!
(エイン)「しかし皆様、今日はもう山越えは難しい故、明日出発いたします。食料や飲み物はある程度は差し上げられますが数が限られていますので、均等に分けてください。私は外にいる仲間と外に居ますので、何かあればお呼びください」
(遭難した人3)「おぅ……ありがたき幸せ……エイン殿、再び感謝申し上げます……!」
お疲れ様です。
洋梨です。
そういえば、ルースちゃんは強い設定ですよ。現時点では、レベルのMAX値を100とすれば、45くらいの中堅冒険者です。エインは20くらいですかね。シェーラルカが42、ツァービが47くらいです。実のところシェーラルカはツァービに勝るとも劣らない程度なんですね。シェーラルカはツァービを神格化しているきらいがありますので。
そして歳は確かルースが18くらい、シェーラルカが19くらい、ツァービが20くらいなので、この3人は若手のホープなんです。
自然都市魔物アベレージは30です(今決めた今後変わるかも)




