第45話 元魔王組織幹部・狂色のビービリカ
※エイン目線に戻ります。
私たちがオークを倒した後、後ろの方からパチパチパチと手を叩く音が聞こえた。その音の方向に視線をやると、誰か知らない人がいた。パッツパツの黒い服を身に纏って身体のラインがこれでもかと強調された女の人だ。スタイルが良い。背の高さもルースちゃんくらいはある。
けど気になるのは……此処には私たちと敵以外誰もいなかったはず……まさか……!!
(謎の女)「……あ、どうも〜!元魔王組織幹部、'ビービリカ・イリルルス'って言います!ビリカって呼んでね!キャッチコピーは【色は濃いほど透明に】、狂色のビービリカで通ってました!」
(エイン)「ガ、ガイドさんはどうしたんですか?!」
ガイドさんは『ビリカ』と叫びながら私たちとは反対方向に向かっていった。つまり、このビリカと名乗った人を追いかけていったんだ。そのビリカが此処にいるということは……ガイドさんがやられている可能性もない事はないということだ……!
(ビリカ)「あー、あの人?どうだと嬉し?私に倒されちゃったとかだと……どのくらい嬉しいかな?」
ビリカからオークとは比にならないほどの威圧感が発せられる。今命をかけて倒したオークよりも更にその上をいく力を。魔力量ですらもさっきの死にかけていた時に溢れ出ていたオークの魔力くらいには多い。
(ガイド)「何バカ言ってるんですか……」
その時後ろからガイドさんが現れてビリカの頭を叩いた。ビリカは『もう〜、いいとこなのに〜』と愚痴を言いながらガイドさんの右腕を抱きしめる。
(ガイド)「紹介します。この子が言った通り、名はビービリカ。元々は私の部下ですが、今は別々の道を歩いています。仲良くしてあげてください」
(ビリカ)「よろしく!」
ガイドさん達のちょっとしたやり取りに私の気は抜けてしまう。それはルースちゃん達も同様だった様で、私たちは3人とも力が抜けてその場で座り込んだ。
(シェーラルカ)「……狂色のビービリカは……【勇者伝記・インカノート】にも載っている程の大魔族の1人……もう400年は前の御伽話のはずだけど……本当なのか?」
(ビリカ)「あぁ、私エルフだから。耳はカモフラージュで短く見せてるだけ。術解くと長いの」
そう言ってビリカさんが指を一回鳴らすと、言った通り耳が長くなった。嘘はついてなさそうだ。
(ルース)「一先ずは……敵では無いと判断してよろしいですか?」
(ビリカ)「もちもち!これからはまたガイド様についてくことにした!ガイド様が味方なら味方だよ!」
(ガイド)「え?」
まさかのガイドさんも想定外だという反応をしている。
(ガイド)「あなた、やりたい事があるのでは?」
(ビリカ)「あー、アレ?アレは……ほら新しい魔王候補は死んじゃったし……」
(エイン)「アレって何ですか?」
(ガイド)「この子は世界征服をしたかったそうです。今でこそ亜人種は人間に分類されていますが、400年前は魔族の扱いでしたので、それなりに人に恨みがあるんですよ」
(ビリカ)「そそ!人を支配してその愚かさを知らしめたいの!……、ま、そんな目標もね、ガイド様に潰されそうだし。他の目標見つけることにした。今」
(エイン)「今」
(ビリカ)「んー?何か文句でもあるのかなぁ?」
ビリカさんがガイドさんを流し目で見た後、私の前に来てしゃがみ、私の顎を右手で下から持った。簡単に言えば、アゴクイみたいな感じだ。金色の瞳が私の目の奥を覗いている様な、そんな感覚に襲われる。
(ビリカ)「ふむ。ふーむ」
ビリカさんは私にしたみたいにルースちゃんとシェーラルカさんにも同じ様に視線を合わせた。された側の2人は私と同様特に抵抗もしていない。
ビリカさんは立ち上がり少し伸びをした後、私たちの周りを歩いた。
(ビリカ)「あなた達いい目をしているね!……、ガイド様はこの時代は勇者につくんだよね?だったら私も本当にそうしても良い?」
(ガイド)「まぁ、あなたが良いのなら止めはしませんけど……」
(ビリカ)「やりぃ!あ、そうだ君」
そう言った後、ビリカさんはシェーラルカさんの前にしゃがみ込み、また視線を合わせる。少し含み笑いをした後、重たい音を乗せた声で次の言葉を言った。
(ビリカ)「君、【半魔】でしょ?」
(シェーラルカ)「ひっ……!!」
シェーラルカさんの身体がガタガタと震え始める。聞こえたハンマという言葉が私には何か分からないから、シェーラルカさんがここまで震えている意味が分からなかった。
(エイン)「シェーラルカさん?」
(シェーラルカ)「……、……っ!……エイン、その通りだ……、あの技を見せた時点で分かっただろ……?私は半魔なんだ……、……っ!」
(エイン)「え?あ、いや、ハンマって何?」
(シェーラルカ)「……っ!わかってる……!おまえはそういうやつだ……!でも……!!気は遣わないでくれ……!本当なんだ……!」
(ガイド)「……、半魔の概念は此処100年くらいの最近出来たものですからね。勇者様伝記にも載ってないので知らないのも無理ありませんね」
(ルース)「魔族と魔物の違いも知らなかったみたいですし……本当に知らないのでは?」
(シェーラルカ)「……、本当に知らないのか?知らないなら……なんでこんなところで……!くっそぉっ……!」
(エイン)「……え?何?結局なんなんですか?」
私はガイドさんに視線を送る。ガイドさんは仕方がないといった感じで口を開いた。
(ガイド)「半魔とは、人やエルフと言った人間に分類される種と魔族との間に生まれた半分人間半分魔族の者たちです。生まれが生まれなので……人間と扱う人もいれば魔族として扱う人もいるそうなのですが、魔族として扱われる事が多いですね」
(エイン)「へー」
(シェーラルカ)「……」
(エイン)「でもあの技って一体どれの事ですか?」
(シェーラルカ)「……ルース、……」
(ルース)「……、鬼の爆拳だと思います。通常、鬼人にしか使えないとされる技が使えるという事はそういう事でしょう。鬼の一撃や鬼の拳はあくまで鬼人を真似た技ですが……鬼の爆拳は……鬼人の血を持つ者にしか使えないとされています。それに魔法系統も……」
(エイン)「ふーん。オークとかにもあるの?そういうオークにしか使えない技とか」
(ルース)「オークだと……、地鳴足踏がそうですね。戦いの時、オークが跳んだ後に地面を揺らした技ですよ」
(エイン)「そうなんだ!他の魔族とかにもあるんだ!」
(ガイド)「はいはい!そんな事は今どうでも良いです!シェーラルカさんについては何かないですか!」
私がシェーラルカさんの方を向くと、シェーラルカさんはまだ身体がガタガタと震えている。こちらを見ようとしているが、身体が拒否して見れないみたいだ。
(エイン)「……、魔族という人が多いって言ってたけどシェーラルカさんは冒険者だよね?別に良いんじゃないかな?依頼をこなせばシェーラルカさんが良い人だって分かってくれると思うよ?というか、もう既に分かってくれてるんじゃないかな?」
(シェーラルカ)「……、そうなのかな……」
(エイン)「何処で冒険者登録したの?」
(シェーラルカ)「……中央」
(エイン)「じゃあアレッタさんやミドルさんだよね?あの2人は人を見る目があるから、シェーラルカさんが半魔って事も見抜いてるよ!それでもツァービさんとパーティーを組めたんだからこの人なら大丈夫って思ってくれたんだよ!それにさ!ツァービさんはシェーラルカさんの事大好きみたいだし!そんなに気にしなくても良いんじゃないかな!!」
(シェーラルカ)「……ツァービ」
シェーラルカさんの横顔が少し穏やかになったことを確認し私はルースちゃんを間に挟みシェーラルカさんと距離をとる。そしてルースちゃんに小声で話しかけた。
(エイン)「だ!大丈夫だったかな?!良かったかな?!シェーラルカさんに対して今の良かったかな?!ちゃんと励ましてあげられたかな?!」
(ルース)「お、落ち着いて下さい!……、あの穏やかな表情を見るに大丈夫です」
(ビリカ)「尊きは友情と宥恕だよね。さすがガイド様の選んだ勇者ちゃん……」
ひどく冷たい目で私を見つめるビリカさん。冷たすぎて刺されていないのに刺された様な痛みが胸部に走る。
(ガイド)「コラ!そういう事しない!」
(ビリカ)「あ!ごめんごめん!ごめんね!勇者ちゃん!ガイド様〜、許してよぉ!」
ビリカさんがガイドさんにベタベタとくっつく。相当な甘えたがりなのかもしれない。ここで私は一つ気になることを訊いてみることにした。
(エイン)「あの、ビリカさん。最初透明になってましたけど……あれは何かの技ですか?私にも出来たりしますか?」
(ビリカ)「……んー、技っちゃ技なんだけどね。先ずは私の事を理解してもらう必要があるかな?」
お疲れ様です。
洋梨です。
前の鬼人使ってなかったぞ
と思うかもしれません。ですが、あれは刀もとい剣術を誇りにその道を極める覚悟をした魔族です。どんなに劣勢でも多分使いません。(実は何も考えてなかっただけ)
異様に硬い鎧は落ちていた鎧にビリカの強力な防御魔法がかけられていただけで、特に深い意味はありません。




