第44話 覚醒した器・一人目
※戦闘シーンが始まります。今後戦闘シーンはエイン目線ではなく、神の目線とどのつまり第三者視点で書いていきます。
エイン達が洞窟の中を進むととある開けた空間に出た。円形の空間で直径はおおよそ50メートルはあるだろう。壁には等間隔に並べられた松明がある。そしてその空間の入り口とは1番離れた場所、つまり空間の最奥には椅子が置かれていてその椅子には兜を被り、鎧を着たオークが座っていた。
(オーク)「……、随分と遅かったな」
オークはほくそ笑んだような顔で目の前に現れたエイン達に話しかける。その顔を見えるエインは剣を持ち構をとった。それと同時にルースとシェーラルカが構を取る。
(エイン)「(これはさっきまで作戦を立てていた事に気づかれている……)、遅れてくるのは英雄の特権だからね!!」
そう言った瞬間エインは斬撃を飛ばした。オークはただ座ったまま動こうとせず、斬撃を真正面から受ける。直撃した斬撃は鎧に弾かれ、横の壁を切り付けた。
(オーク)「存外、威力が高いか……おもしろい」
そう言ったもののオークはまるで動く様子を見せず、最初に見せたほくそ笑んだ顔を崩さない。
(シェーラルカ)「(冗談だろ!?エイン、コイツ……!いきなり仕掛けるのかよ……!!急なやつに合わせるの骨だぞ……)」
シェーラルカがエインの方を一瞥した瞬間、ルースが突如として飛び出し、オークの眼前まで近づく。そしてオークに向かい剣を振り下ろす。
オークは腕を前に出し剣を受け止めた。剣は鎧に阻まれ、オークの肉まで刃が届かない。
オークは剣を弾き、ルースの身体を少し後ろに飛ばした。ルースは少しだけ宙に浮く。それを見たオークは飛び出して、ルースの顔面目掛けて拳を繰り出す。
その拳に足をかけ、ルースは攻撃をかわしながらオークの懐へ入る。そして剣の柄をオークの顔面に当ててから、オークを蹴り飛ばし、距離を取った。
(シェーラルカ)「(お、お、おまえもかぁああ!!!!……即席すぎるチームだ……、連携が取れるとも思ってなかったが……!2人とも好き勝手しすぎだろうが……!……1人は完全初心者……方やあの兄達とパーティーを組んでたんだから好き勝手しててもなんとかなってたやつ……、それも仕方がないか……)」
(エイン)「シェーラルカさん!!!!」
シェーラルカがルース達に気を取られている最中に、オークがシェーラルカの眼前まで近付いていた。
(ルース)「鳶玉・檸檬!!!」
ルースが技を繰り出し、螺旋を描いた斬撃をオークに対して飛ばす。オークは咄嗟に両手を前で交差させ、その斬撃を受け止めた。
(シェーラルカ)「(チャンスだ!!)、鬼の拳!!!!」
シェーラルカの拳がオークの鎧をとらえる。鎧は激しく音を鳴らすものの、ヒビ一つも入りはしなかった。
(シェーラルカ)「そ、そんな……、がはっ!!!」
シェーラルカはオークの膝蹴りをモロに腹にくらった。そして続けて回し蹴りを喰らい、壁まで吹っ飛ばされた。吹っ飛ばされた先で、シェーラルカは座り込む。
シェーラルカを見て口角を上げたオークの隙をつき、エインは首目掛けて剣を突き刺そうとする。しかし、オークはいとも簡単に剣を掴んだ。
(ルース)「青炎の海豚!!!」
オークの剣を受け止めた腕を目掛けて、ルースが青い炎を纏った剣を振り抜く。腕に剣が当たった瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、エインやルース、果てはオークまでもを吹っ飛ばした。
その3人は一瞬で体勢を整える。しかし、シェーラルカは動かない。
(エイン)「(シェーラルカさんは……さっきのでもう動けない……?それとも……いや、まずは目の前のことに集中しないと……)」
(オーク)「ふむ。どうやら、気をつけねばいけないのはそのピンク髪だけのようだな」
(エイン)「……、……!、気を付けなければいけないのは……、もう1人いるよ!!」
エインが飛び出し、オークに対し縦に思いっきり剣を振る。オークは兜でエインの剣を受け止める。受け止めた瞬間、オークの顔はシェーラルカに蹴られた。蹴りが当たった瞬間に出た衝撃波により、エインは吹っ飛ばされる。
(シェーラルカ)「おらぁああああ!!!!!」
シェーラルカはその場で回転しながらオークの首に更に蹴りを入れた。オークは首に力を込めて、シェーラルカの蹴りを受け止める。
(オーク)「なかなか!」
オークはシェーラルカに対して猛攻を仕掛ける。シェーラルカは後退りながらも、オークの攻撃を受け止め躱す。
(ルース)「風切風見鶏!!」
暴れているオークの足首を狙い、ルースが剣を振るう。しかし、オークは上に飛び上がりそれをかわした。オークが地面に落ちてきた瞬間、地面を大きく揺らす。その揺れでエイン、ルース、シェーラルカの3人はバランスを崩した。
バランスを崩した瞬間、オークはシェーラルカの顔面を殴り壁まで吹っ飛ばした。シェーラルカは再度地面に座り込むかと思いきや、座り込むどころか身体を横たえる。
(エイン)「(シェーラルカさんがやられた……?!)、……っ!」
(ルース)「シェーラルカ……!このままでは……!」
(オーク)「……、特に思い入れもないがこう言った方が盛り上がるか」
そう言ってオークは両の拳を上に突き上げる構を取る。そして魔力を放出させた。
(エイン)「?!ルースちゃん!!」
(ルース)「鬼神傀儡……!!!」
オークから漏れ出る魔力に反応してルースも凄まじい魔力を身体中に纏わせる。エインから見て、オークとルースの魔力の強さは大して変わらないように見える。
(オーク)「……!我が同胞の仇!!!取らせてもらう!!!」
(エイン)「……っ!……はっ!!」
エインはオークの動きに全く反応出来ず、腹を殴られその場で疼くまる。しかし、顔は上に挙げオークを見つめる。そんなエインを無情にもオークは蹴り飛ばした。地面をゴロゴロと転がり、転がった先にはシェーラルカがいた。
(オーク)「最後だ……!」
ルースとオークは一進一退の攻防を始める。とはいうものの、剣を鎧に弾かれてしまうルースの方が若干劣性だった。
(エイン)「……っは……!……シェーラルカさん……!起きてるよね……?」
エインの言う通り、シェーラルカは起きている。目も開けていて耳にも音が入っている。しかし、開いている目に光が入っていないようだ。
(シェーラルカ)「……、私は……もう……(あんなのに勝てるわけなかったんだ……ツァービが勝てなかったんだ……私なんかに……)」
(エイン)「シェーラルカさん……!もう一度言います……!貴方がいなければ勝てるものも勝てない……!!」
(シェーラルカ)「(!?……、エイン……おまえ……、まだ私を……)」
そう言ってエインはオークの所まで走っていく。
(オーク)「まだ立てるか!見誤った!!」
オークはエイン目掛けて拳を振り抜き空気の圧力玉を飛ばした。
エインは身体を捻りながら、飛んできた圧力玉をかわす。その圧力玉について来た突風を自分の剣に纏わせ斬撃を飛ばした。圧力玉は壁に激突し、斬撃は鎧に直撃したものの、鎧にはかすり傷一つ付いていない。しかし、オークが当たった場所を指で擦る。その隙をついてルースはオークに攻撃した。
(エイン)「なんなの!!あの鎧!!」
(ルース)「きゃっ!!!!」
エインが鎧の頑丈さに文句を言っているとルースがエインの方に吹っ飛ばされて来た。ルースはエイン巻き込んで、壁に激突する。激突した壁の下にはシェーラルカがいた。シェーラルカが2人を受け止め、地面に落ちてダメージを負うことだけは防がれた。シェーラルカはゆっくりとしゃがみ、2人を降ろす。
(オーク)「潮時だな。3人まとめて葬ってやろう……!!」
オークから大量の魔力が漏れ出る。
(エイン)「やばい!!!!ルースちゃん!王家一閃でなんとかならない?!!」
(ルース)「あの鎧が壊れない限りは跳ね返される可能性が高いかと……」
(エイン)「シェーラルカさん!!?」
シェーラルカは肩を鳴らした。
(シェーラルカ)「……、1つ……試したい技がある……でもその技は少し溜めがいるんだ……」
(エイン)「分かった!!なんとか時間は稼ぐ!!その技をやってほしい!!」
(オーク)「その技!!放つ前に死ぬがいい!!!圧殺砲!!!」
オークが特大の圧力玉を3人に向かって飛ばした。シェーラルカがエインを遠くへ放り投げる。ルースとシェーラルカはその後、互いに反対方向を壁伝いに全速力で走った。
圧力玉が当たった後、壁には大きな穴が空いた。しかし、3人とも圧力玉から命からがら逃れた。ただ、シェーラルカとルースはかなり息が上がっている。
(エイン)「……!(ルースちゃんはそうだけど、たぶんシェーラルカさんもか……、この2人はどちらかと言うと短期決着型で、体力はあまりない。その代わり、攻撃力が桁外れに高い。だから、当てれば必ず勝てる。なんとしてでも、まずはシェーラルカさんの攻撃を当てる……!)」
(シェーラルカ)「(エインのやつは……こんなみっともない私を見て……それでも頼ってくれようとしてる……先輩として……これ以上ないくらい情けない姿を見せた私をだ……見られるくらいなら死んだ方がマシな技だけど……ツァービ以外には見せたくなかったけど……エインを生かす……!その為なら!!この後の人生……!どうなっても構わない……!!!)」
(ルース)「エイン……シェーラルカ……!私は程なくして鬼神傀儡の効力が無くなります……当初の作戦で指示下さい……!タイミングはお任せします……!」
そう言った後すぐ、ルースがオークに対して攻撃を仕掛ける。鎧の隙間を狙う攻撃は巧みに防がれ、それ以外の攻撃はオークの鎧に弾かれる。
(エイン)「付与・風!」
ルースの動きが鈍くなった一瞬、オークの拳がルースの顔面目掛けて繰り出される。その拳をエインが斬撃を飛ばし腕を弾いて防いだ。オークは少し距離を取る。エインは離れオークに向かい再度斬撃を放つが、オークはその斬撃を受け止める事なく、身体を斜めにして躱した。
(エイン)「(??逃げた?)」
(シェーラルカ)「だらああああああ!!!!!!」
シェーラルカが勢いよくオークに迫り、勢いそのままオークの顔面に蹴りを放つ。しかしオークはすんでのところで避け、シェーラルカの足を掴もうとする。そんなオークの顎をルースは蹴り上げる。が、オークはその場で回転して2人を吹き飛ばした。ルースとシェーラルカは双方壁まで吹っ飛ばされる。しかし、今度は両方ともすぐに体勢を立て直した。
(エイン)「(距離的にはルースちゃんがちょっと近くて、シェーラルカさんが少し遠い……でもこの距離なら……!作戦通りにいけるかも……!よし……)」
エインは息を大きく吸い込む。
(エイン)「ルース!!!!シェーラルカァアア!!!!これで決める!!!戦闘準備!!!!!」
その声を聞いてルースとシェーラルカはビクッとした後、すぐ両方ともオークに向かい飛び出した。同じくオークもビクッとしたが、突っ込んでくる2人を避けようと動こうとする。
(エイン)「鳶玉・檸檬!!!!」
オークはエインの放ってきた技に対し、受け止める構を取る。必然、突っ込んでくる2人を避けようとしていた動きは止まった。
飛んできた螺旋状の斬撃をオークは受け止め上に弾いた。
(オーク)「……効かぬわぁああ!!!そんなものぉおおお!!!!そして貴様らの策略もこれで終わりだ!!!圧殺砲!!」
オークが近くまで来ていたルースに向かい拳を繰り出そうとする。シェーラルカを攻撃するにはまだ距離があり、ルースを先に潰そうとした。しかし、ルースに繰り出された拳は近付いてきていたエインがまた斬新を飛ばし、その拳を弾いた。
(ルース)「雷鳥の慟哭!!!!」
ルースが斬撃によって寄れた拳とその拳から放たれた小さな圧力玉を避け、電気を纏った剣をオークの胴部に当てる。大きな轟音と共にオークは叫び声を上げて動きが止まる。
(オーク)「お…お……の……れ……!」
(シェーラルカ)「っしゃぁあ……溜まったぞ……!!ルース……!信じてくれるか……?!」
シェーラルカの硬く握られた拳から炎が出ている。
(ルース)「……!勿論です!!友人ですから!!!」
ルースが剣を後ろに持ってきて構える。
(シェーラルカ)「頼むぞ……!!鬼の爆拳!!!!」
炎を纏った拳をそのままオークの鎧に叩きつけた。大きな音と共に凄まじい突風が吹き荒れる。そして、拳を当てた左半身の鎧は砕け飛び、オークは左半身が生身だけになりながら壁に激突した。激突した瞬間とも言って差し支えないほどの差しかないほどの時間の後
(ルース)「王家一閃!!!!」
ルースはオークの左肩から左脇腹にかけて刃を振り下ろし、オークの左半身の腕の部分を斬り落とした。
オークから血が大量に吹きこぼれ始める。その出ていく血と共に生気も抜け出ているように思えた。しかし。
ルース達3人はオークから距離を取りオークを見つめる。
(エイン)「勝った……んだよね?」
(ルース)「……、もう間も無く死に絶えるのでないかと……」
(シェーラルカ)「……、だったらなんなんだよ……!これ……!この凄まじいほどの魔力は……!!!なんで今にも死にそうなやつが……!こんな魔力出してんだよ……!!!?」
シェーラルカが声を震わせて袖を掴みながらルースに話しかける。それほどまでに異様な事態。今にも死にそうな相手から今まで戦ったどの時よりも、強大な魔力が吹きこぼれていたからだ。それは当然、エインやルース達も感じている。だが、まるで何が起こっているか分からない。その為、取り乱しているシェーラルカに対して何かを説明する余力もない。そして戦う余力もだ。ただ、エインだけは少しだけ動く余力を残している。
(オーク)「凄まじい……!これが魔王への覚醒か……!!!これが我の力か……!!!なんとも言えぬ高揚……!!このまま死んでしまうことが何より惜しいほどの力だ……!!!ならばせめて貴様らだけでも……!!!殺してやろう……!!!」
オークがエイン達を目標にゆっくりと歩みを進める。ルースとシェーラルカは後退るが、エインは逆に剣を持ちオークに向かい飛び出した。
(ルース)「エイン!!!!?何を?!!」
(オーク)「死に急いだか!!!!愚か!!!!!」
オークはエインに対して拳を振り空気の圧力玉を飛ばした。エインはその圧力玉を躱す。飛んでいった圧力玉はシェーラルカにぶつかりかけるが、シェーラルカもこける事で何とか当たらずに済んだ。
エインはオークの首に剣を突き刺しオークを押し倒す。オークはそのまま倒れ、今度こそ動かなくなった。
(エイン)「覚醒しても……身体は治っていない……いくら魔力が凄まじくても……その魔力に耐え得る身体じゃ……なかったね……」
エインはオークを見下した様に倒れたオークに視線を向けた。その目は非常に冷たく、何の慈悲もないような目に見える。
(ルース)「エイン……!!!なんて危ないことを……良かった……!!!!」
(エイン)「うっ!!ルース……ぢゃん……!!」
ルースがエインを思いっきり抱きしめる。互いに余力の無いエインとルース。元々の力の差が顕著に出た抱擁はエインにとっては非常に苦しい抱擁だ。ただそれでも、嬉しさが勝っていたのか、エインはルースを止めようとはしない。
(シェーラルカ)「(オークが動けない事を悟ったのか……それともただの無謀か……、何にせよ……この戦いの立役者はエインだな……良くやったな……エイン)」
お疲れ様です。
洋梨です。
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