第39話 作戦決定
(エイン)「ただいま戻りました!!ガハッ!!」
私が部屋に戻った瞬間、ガイドさんに腹に蹴りを入れられた。壁に激突して床に膝をつける。
(ガイド)「この非常時に一体何を?!」
(エイン)「……!……ッ!……ッ!!!」
私は声が出ないような咳をして、半分くらい息が出来なくなる。涙が出てきて前に映る景色も霞み始める。
(ルース)「エイン!?大丈夫ですか?!」
ルースちゃんが駆け寄ってきて背中をさすってくれる。少しだけ呼吸が落ち着きを見せ始めた。
(ガイド)「エ!エエエ!!エイン??!!!!?そ!!!そそそ、そそんなななな??!に!?」
ガイドさんも私のそばに来て魔法をかけようとしてくれるが、かなり慌てている様子でルースちゃんに止められていた。代わりにルースちゃんが回復魔法をかけてくれたので、私の呼吸は元に戻る。
(ガイド)「エ、エイン……?その……ごめんなさい……そこまで強くしたつもりはなくて……でも……ごめんなさい……ほんとうに……ごめんなさい……」
ガイドは左右の人差し指同士をくっつけ、もじもじとしていた。ガイドさんがここまでしょげているのは初めて見る。自業自得?な感じはするけど、これルースちゃんがいなかったら結構危なかった気もするし、あまり良い気分じゃないし、どうしよう?
(エイン)「……、……」
とりあえず何か言うこともないので、無言で見つめる事にする。
(ガイド)「エ、エイン……?その……」
(シェーラルカ)「エイン、今回のはおあいこだぞ?」
(エイン)「おあいこ?」
(シェーラルカ)「まぁ、情報収集に行ってくれてたとは思うからな。その辺は良いとして、『ネイチャルエデンがいた!!』って理由で急に飛び出したんだ。何も知らないこちら側からしたら意味の不明な行動だな」
(エイン)「う!それは……で、でも……会ったのは事実で……」
(シェーラルカ)「それに、かなり心配してたんだぞ。さっきの今だしな。あの強いオークがいないとしても、他のオークが隠れている可能性だって大いにあったんだ。そのオークにやられてしまう可能性もな。ガイドさん、かなり不安そうにしてずっと魔力探知使いながら、追うか追わないかを悩んでたし」
(エイン)「うぅ……、ごめんなさい……ガイドさん……心配かけて……次からは気をつけるなら……」
(ガイド)「エ、エイン……!」
(シェーラルカ)「……、よし。エイン、存外戻ってくるの早かったな。何か良い情報でも得たのか?」
(エイン)「あ!そうです!オークの根城が森に入ってすぐ近くの所だと聞きました!誰かからは言えませんけど!」
(ガイド)「……、まぁその誰かは今は重要ではありませんが……、森を入ってすぐですか……一旦確認しに行ってきますね。それだけ近ければ端の方に行けば街中からでも確認できると思いますから」
(エイン)「……!!お願いします!!!」
(ガイド)「……、では行ってきますね」
ガイドさんが部屋から出ていった後に、シェーラルカさんがベッドに寝転んだ。そしてすぐに寝息を立てる。
(エイン)「??」
(ルース)「疲れていたのでしょう。ああ見えて、力任せな方ではありませんから。ただまぁ、頭に血が昇った時には猪突猛進しかしない人ではありますけど……」
(エイン)「それを力任せと言うんじゃあ……」
(ルース)「ふふ、そうかもしれませんね。……エイン、ここで話し合った結果、オークの目的は結局分からないと結論づけられました。なので、根城が分かり次第こちらから奇襲をかけます」
(エイン)「え?なんで?」
(ルース)「ツァービさんを奪い返すだけならあの長とも言える強さのオークと真っ向勝負する必要はありません。隙を見て逃げます。その後、万全な体制でオークを討伐します」
(エイン)「ふーん。でも逃げられるの?」
(ルース)「ガイドさんに転移門を繋いでもらう予定です。あの方は本当に素晴らしい呪術師ですね」
(エイン)「そっか。……、その奇襲は誰がするの?全員?」
(ルース)「いえ、私とシェーラルカで奇襲をかけます。私が陽動、シェーラルカがツァービさんの保護です。意外にも彼女潜入は得意だそうなので!」
(シェーラルカ)「おーい……、何か余計な事が聞こえた気がするんだが?」
(ルース)「あら、起きられましたか?もう少しおやすみになっていても良いですよ?」
(シェーラルカ)「……、いや。頭がぐちゃぐちゃするから一度休息をと思ったんだけどな……余計に目が回りそうだ……」
(エイン)「……、私が代わりにツァービさんを助けにいきましょうか?」
さっきまで気が付かなかったけど、すごい疲弊した様子に見える。この状態で奇襲をかけても満足に動けない可能性が高い。
(シェーラルカ)「……、はは。悪いな、私にやらせてくれ。私が、やりたいんだ」
(エイン)「え……でも……」
ルースちゃんは私の肩に手を置いて軽く首を横に振る。ここはシェーラルカさんに任せようという指示だ。
それからガイドさんが戻ってくるまで私たちは少しだけ各々休む事にした。ルースちゃんは剣の手入れ、シェーラルカさんは瞑想、私は街の様子を見ていた。
正直瞑想していて大丈夫だろうかとは思うのだけど、シェーラルカさんが今1番したいことをやってもらった方がいいから、そのまま何も訊かない事にした。
(ガイド)「戻りました。確かにツァービさんの魔力は森の中すぐの場所にあります。ただ、異様なんですよね」
(エイン)「異様ってなんですか?」
私はガイドさんの側に寄って、他の2人はその場から動かないものの、ルースちゃんは手をとめて話を聞いている。シェーラルカさんも目を開けた。
(ガイド)「オークの魔力数が少なすぎます。おおよそ20体程で正直な話、ここにいる4人でも叩き潰しにいける数の少なさです」
あ、一応私も戦力扱いしてくれている。ちょっと嬉しい。
(シェーラルカ)「相手が少数精鋭ならまずい。作戦は変えない」
(ガイド)「えぇ。その方が無難ではあります。しかし、魔力の強さから見ても、あのオークが異常なだけで他のオークはただのオークとあまり変わりがないように思えました」
(ルース)「転移門を使用した者の魔力は感じ取れましたか?」
(ガイド)「いえ、感じ取れませんでした。相当に魔力操作が上手であるのか、もしくは何処かに転移しているのか……何にせよ、あれは私が抑えます。お二人はオークからツァービさんを連れ戻す事だけを考えてください」
(エイン)「……、私は何をすれば良いですか?」
(ガイド)「……、お祭りを楽しんでください」
(エイン)「え……」
(ガイド)「待って。焦らないでください。……実力不足なのはそうですが、今回はあくまでツァービさんの奪還です。その為にこちらは転移門を使用します。転移門は複数の場所を同時に繋ぐことは不可能で必ず1つの道しか作れないんです」
(エイン)「????」
(ガイド)「簡単に言えば、作戦完了のために逃げ道を用意するのですが、その逃げ道は1本ずつしか使えないため逃げ道が開くまでどれだけ辛くてもオークの相手をする必要があります」
(エイン)「ふむ。つまり、人がいっぱいいたら大変になるんだね?」
(ガイド)「そういう事です」
(エイン)「……、わかった。お祭り行ってきます」
(ガイド)「……、その後の討伐作戦にはきちんと貴方にも期待していますから」
ガイドさんは優しく頭を撫でてきた。気を遣ってくれているのだろう。少し心地が良い。
(エイン)「うん。頑張ります」
(シェーラルカ)「話は終わったか?なら今すぐにでも行きてぇ。準備してくれ」
(ルース)「……、いえ。それは推奨出来ません」
(シェーラルカ)「あ?何言ってる??」
(ルース)「シェーラルカ、今かなり疲れているのではないでしょうか?」
(シェーラルカ)「それがどうした?」
(ルース)「……、一旦休息を取りましょう。この作戦は一度目に必ず成功させる必要があります。今のままではその必ずに影響が出かねません」
(シェーラルカ)「言っただろう……休息を取ろうとすると余計に目が回るんだ……今が一番、マシなんだよ」
(エイン)「シェーラルカさん、ぎゅっとしてあげます」
私はシェーラルカさんの横に座り、両手を広げる。
(シェーラルカ)「何だ?」
(エイン)「ぎゅっ!!」
(シェーラルカ)「……、なんだよ……?」
少し苦笑いした後、シェーラルカさんは私に身を委ねてくれた。私はシェーラルカさんを強く抱きしめ、そのまま何も言わないで静かにしている。
(ルース)「あら?落ち着かれたようですね?」
(エイン)「そうだね」
(シェーラルカ)「悪いな……、でもやっぱり眠るのは怖いや……」
そう言いながらもシェーラルカさんは私に抱きしめられたまま動こうとしない。
(ガイド)「そうしておくだけでも回復しますよ。それに丁度良いです。そもそも転移門を構築には時間がかかるので今すぐには行けませんから。回復に努めて下さい」
(シェーラルカ)「……、わかった……」
(エイン)「いい子いい子……ね」
私はシェーラルカさんの頭をそっと撫でる。シェーラルカさんは何も言わないまま、そのされるがままだった。
(シェーラルカ)「……、……」
お疲れ様です。
洋梨です。
ガイドさんはすごい人なんですよ。実は。




