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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第2章 自然都市と守護者の宴
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第38話 少しの過ちなら

 ツァービさんが連れ去られ、全員が途方に暮れていた時、シェーラルカさんが口を開いた。


(シェーラルカ)「……エイン。なんで私を止めた……?」


(エイン)「……、入っていきそうだったから……」


(シェーラルカ)「あぁそうだ……!!入っていくつもりだったんだ……!それをおまえは……!」


(ルース)「シェーラルカ、エインは正しい事をしました。あれは【転移門】。上級術の中でも扱いが難しい術です。おそらくあのオークよりも強い魔族が存在します。あのオークにすら歯が立たない私達があの中に入り、オークの根城へ行って何が出来ると言うのでしょうか?」


(シェーラルカ)「じゃあ!!!!ツァービを見殺しにして満足しろって事なのかよ!!!」


(ルース)「そ!そんな事を言いたいわけではありません!!」


(ガイド)「……、過ぎたことは戻りません。ツァービさんを取り戻す作戦を立てましょう。ほら、一旦宿に戻りますよ。ん?エイン?どうしました?」


(エイン)「……、私のせいでしょうか……」


(ガイド)「何がです?」


(エイン)「だ、だって私が抱き抱えている力を緩めなければ!ツァービさんを奪われなかったかもしれないし!シェーラルカさんとぶつかって邪魔しちゃったし!私がもっと強ければ……こんな事には……」


(ガイド)「どんなことにも、その人だけのせいなんてものはありませんよ。皆至らぬ点があった。それだけです」



 それでも、私には至らぬ点が多すぎる……



(シェーラルカ)「ごめん……エイン……、大人気なかった。……おまえがいなかったら、私共々ツァービは何も出来ずに殺されてるだろう。奪い返す機会を恵んでくれたんだ……感謝する……」


 

 そう言ったシェーラルカさんの手の中には粉々になった土が押し固められていた。



………


 私たちは借りているホテルの部屋まで戻る。外の様子を見てみると、相変わらずお祭りは彩りを保ちながら賑やかに開催されていた。少しホッとする。



(ガイド)「さてと、まずツァービさんが何処に連れ去られたかですが……私が探知可能な距離にはいません。半径10キロメートル以上はいないと言って良いでしょう」


(エイン)「10キロメートルというと、街中にはいないって事ですよね?」


(ガイド)「そうですね。街よりは遠くに潜んでいると思われます」


(ルース)「オークであれば、森の中や洞窟を根城にしているはずなので、近くの森を散策した方が良いでしょうか?」


(シェーラルカ)「手探りでって事か?ここは自然都市だ。大半が農場や畑とはいえ、森の広さは他の都市の広さを優に超える。埒開かねーぞ」


(ルース)「流石に街の近くには居るはずです。でなければ、襲ってくることもないでしょうし……それにガイド様に石を投げつけていた魔族もオークでした。石を捌く事に手を焼いてしまいましたが、おおよそで10体ほど確認出来ています」


(シェーラルカ)「それだけの数で来てたから近くから来ているって言いたいのか?奴らの目的がわからねー以上、決めつけるのは良くねぇよ」


(ガイド)「目的、確かに何をしたいのかが分かりませんでしたね。街を襲う事なのか、人を攫う事なのか。人攫いなら少し遠くの可能性もありますが……」


(エイン)「どの道さ、ガイドさんが魔力探知しながら森とか入ればいいんじゃないんですか?」


(ガイド)「もう……」


(エイン)「いたっ!!」



 ガイドさんがいきなりデコピンをしてきた。私は思わず声を出してしまう。



(ガイド)「それは尤もですが、それ以外の事を考慮に入れるんですよ」


(エイン)「それ以外??」


(ガイド)「はい。仮に魔力探知できた瞬間にその場所に奇襲をかけたとして、相手が人質に取られてしまったらおしまいです。あのオーク達がただこの街を襲うためだけなら、ツァービさんの命なんてどうでも良いと考えるでしょうが、人攫いなら死なないように丁重に扱っているはずです」


(エイン)「……、でも、それは考えても仕方のない事じゃあ……」


(ガイド)「……、悪いことではありません。その分、作戦が多く立てられるという事ですから」


(シェーラルカ)「まぁ、エインは初めてなんだろ?こういうの」


(エイン)「は、はい……」


(シェーラルカ)「なら、一旦こういうのは先輩に任せてみな」


(エイン)「……は、はい!!」



 それからガイドさん達が3人で話し合っている。私はそれをずっと見学していたが、ただ見学しているだけでは少し頭が疲れてくる。なので、気分転換しようとした少しだけ外を見た。外ではまだ祭りをやっていた。そして、その中に私が会ったネイチャルエデンらしき人物がいた。



(エイン)「ネ!ネイチャルエデン!!」


(シェーラルカ)「ネイチャルエデン?確かこの土地の神様だな。神楽でもやってるのか?」


(エイン)「いえ!!ネイチャルエデンがいます!!」


(シェーラルカ)「??」


(ルース)「エインは一度ネイチャルエデンに会ったらしいですよ」


(シェーラルカ)「は?会った?神様に?勘違いだろ?」


(エイン)「ネイチャルエデンなら何か知ってるかも!!ちょっと聞いてきます!!!」


(シェーラルカ)「あ!!おい!!」



 私はそう言って街へ飛び出した。ネイチャルエデンの影をなんとか辿り、ネイチャルエデンの止まる場所までやっとながら追いかけた。ネイチャルエデンが止まった場所は誰も人がいないエデン像がある場所だった。

 顔にかかる前掛けが風に揺れてネイチャルエデンの顔が見えそうになる。しかし、光が当たってハッキリとは見えない。ただそれでも、少しだけ微笑んでいるように思えた。



(エイン)「エデンさん!!」


(ネイチャルエデン)「また会いましたね」


(エイン)「はい!!また会いました!!!単刀直入に聞きたいことがあります!!!!」


(ネイチャルエデン)「……、どうされました?」


(エイン)「オークの住んでいる場所を知りませんか?!!」



 この土地の守り神ならオークの根城くらいは知っているはずだ。そう思って訊いてみた。



(ネイチャルエデン)「オーク……、それを聞き出して一体何をするつもりでしょうか?」


(エイン)「私の知り合いがオークに攫われました!!助けに行きます!!!」


(ネイチャルエデン)「……、左様で」



 ネイチャルエデンはそう言った後、固まる。ただ揺れる風に吹かれているだけで、目の前のエデン像のようにただただ立ち尽くしているみたいだった。



(エイン)「……??あの?」


(ネイチャルエデン)「……、私はまた過ちを犯せない」


(エイン)「???」


(ネイチャルエデン)「……ほんの少し前、私はある過ちを犯しました。私は【守護者であり神様ではない】、それなのに本来なら事故で死んでいたはずの子を助けてしまった。あれ程後悔した事はない……後悔しながら喜びに震えていたことも……」


(エイン)「エデンさん!!すみません!!その話は後でいいですか?!!オークの居場所を知りませんか?!!」



 正直ネイチャルエデンの話はかなり聞きたい。でも今はツァービさんを取り戻す為の情報が何より欲しい。それに時間もかけていられない。



(ネイチャルエデン)「……ふふ、すみません。脈絡の無い話をしてしまいました。ではまた別の機会に……、……、明確には言えませんが……、貴方方の探している人間が攫われたオークの根城はこの街、東門を出て森の中すぐの所にあります」


(エイン)「森の中すぐですね!!ありがとうございます!!!」


(ネイチャルエデン)「それともう一つ」


(エイン)「はい?」



 ネイチャルエデンは私に近づいてきて私の目の前で止まった。ちょっと怖い。



(ネイチャルエデン)「くれぐれも私の事は内密に」



 そう言って私の鼻を人差し指で軽く叩いた後、ネイチャルエデンは街の中へまた入っていった。



(エイン)「……は!戻らなきゃ!!!」


お疲れ様です。

洋梨です。


ほとんど明確に場所を言ってるだろ

と思うかもしれませんが、大丈夫です。

私も思っています。

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