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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第2章 自然都市と守護者の宴
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第37話 成りたがる者たち

 私がぐしぐしと撫でられているところに、ガイドさんとシェーラルカさんは戻ってきた。何故かシェーラルカさんはムスッとした表情で、ガイドさんはとても穏やかな表情で戻ってきた。

 まぁ、大体察しはつくけど。



(ツァービ)「なになに?何かあったの?」



 ツァービさんがいたずらっ子のようなニヤニヤとした顔をしながら、シェーラルカさんに近づく。それを「フン!」と言って無視したシェーラルカさんはそのままルースちゃんの目の前まで歩いていく。



(シェーラルカ)「……、……!あの……!いや……!……その!」



 ルースちゃんに向かって何か言いたげだが、言葉が出てこないのか、それとも声を出せないのか、口を開けては閉めてをずっと繰り返している。それも顔を真っ赤にしながら。

 ほほぅ、これはもしや。想像とは違ったかな。



(シェーラルカ)「あの……、お友達になって……ください……」


(ルース)「!!!?!」


(ツァービ)「きゃああ!!芍薬牡丹に百合の花!!!!」


(エイン)「え、何?なにそれ?」 


(ツァービ)「ついにぃ!!この時がぁ!!!!」


(エイン)「また無視?それは良くない。良くないよ!」


(ツァービ)「ひひひひひひ!」


(エイン)「良くないってば!!」


(シェーラルカ)「わ、悪いな……エイン。ツァービは自分の世界に入ると周りのことが分からなくなるやつなんだ」


(エイン)「シェーラルカさん……!大好き!」


(シェーラルカ)「え?おう。ん?まぁ、ありがとう?……というか、どうなんだよ!!桃姫様はよ!!!!?」


(ルース)「そ、それは……その……やぶさかでは無いと言いますか……その……」


(シェーラルカ)「なんだよ!!こっちは勇気出してんだからそっちも『いいよ、友だちになろう』って言ってくれよ!!バカ!!!」


(ルース)「……!そ、その!……い、いいよ……友だちに、なろう……?」



 ルースちゃんはふるふると震えながら右手を差し出した。この震え方は嫌だとか不快だとかそういうのではなく、表情から察するに恥ずかしくてたまらないという感じだと思う。ただそれでもやはり少しは嬉しそうにしている。



(シェーラルカ)「……、よ、よろしく……」



 2人が握手している隙に私はガイドさんの傍まで駆け寄り、小声で聞いてみた。



(エイン)「どうしてこんな展開になったんですか?」


(ガイド)「んー、3サイズをとても言いづらそうにしてまして……代案としてルースさんとお友達になるって言えば、3サイズは言わなくても良いですよと言ったんです。私的には3サイズを選ぶものとばかり思ってましたが……まさかお友達になりたいを選ぶとは……」


(エイン)「ふーん。やっぱりガイドさんってモテないよね」


(ガイド)「な?!人の気にしていることを!!」


(エイン)「え?!気にしてたんですか?!」


(ガイド)「当たり前です!!!アタックしても成功確率1%くらいなんですから!!」


(エイン)「え?意外と高い……」


(ガイド)「え?」



 この時、遠くの方から女性の「キャー!」という大きな叫び声が聞こえた。急いで駆けつけるとそこには身長は3メートル程あり、筋骨隆々の豚鼻の魔族がいた。これはおそらくオークという魔族で、女性冒険者は用心してねって書かれていた。よく分からないけど、ちょっと嫌な感じがする。鎧も着ていて、少し他の魔族とは何か違う気がする。斧も持っていて、何やら強そうだ。



(シェーラルカ)「しゃあ!!!ムシャクシャしてたんだ!!!私がぶっ潰してやるよ!!!オーガ()



 シェーラルカさんが真っ先に飛び出して行って金棒でオークに殴りかかった。その瞬間、シェーラルカさんはルースちゃんを巻き込んでかなり後ろの方まで吹っ飛ばされる。



(エイン)「……?!?なに、が……」



  シェーラルカさんたちが吹っ飛ばされた方を向いた瞬間に悪寒がした。大きな影に包まれ、何もする時間が取れない程の僅かな時間で死を覚悟した。



(ツァービ)「一旦下がる!風流ふうりゅう白風しらかぜ!!」


 

 私を足蹴にしてツァービさんが風を切る音と共に前へと飛び出した。私は足蹴にされた反動でこける。その転んだ私をガイドさんが咄嗟に引っ張り、私はオークの前から引き剥がされた。逆にオークは技が直撃したというのにびくともしていない。



(オーク)「フン!!!舐めるな小娘!!」



 オークは持っていた斧をツァービさん目掛けて振り下ろしたが、ツァービさんはそれを避けた。しかし、斧が地面を叩き割り、地面が揺れ、足元がよろめく。

 それはツァービさんも同様だった。よろめいた一瞬の隙にオークに膝蹴りを鳩尾に入れられた。血を吐き、上半身が前に倒れようとしている。しかし足を踏ん張り、倒れない。



(エイン)「……!ツァービさん!!」


(ツァービ)「……!何してるの?!早く逃げなさい!!」


(オーク)「逃すわけないだろうが!!」



 オークはこちら目掛けて斧を投げてきた。それをガイドさんはさも当然のように受け止め、投げ返す。投げ返した斧はオークを通り過ぎ、何処か遠くへ飛んでいった。



(ガイド)「……、相当強いですね。このオークは」


(エイン)「……!……?」



 かなり澄ました顔でそう言い放ったので、本当にそう思っているから疑問だが、私にとっては確かにそうだ。



(オーク)「……、もしや……」



(ツァービ)「……!風流ふうりゅう転華てんか!!」



 隙の出来たオークに対してツァービさんは技を放った。回転した斬撃で、下から上へと昇っていくように見える。それはオークは兜で弾いたものの頭にかなり強い衝撃が直撃した。それでも、大したダメージがないようだった。



(ツァービ)「……が……はぁ……」



 ツァービさんはオークの拳を再度鳩尾に食らった。そしてオークの前に倒れる。



(エイン)「……!付与エンチャントウィンド!!」



 私は咄嗟に飛び出し斬撃を飛ばした。しかし、斬撃は軽く跳ね飛ばされてしまう。でもそれで十分だと考えた。ツァービさんを連れ戻す時間が稼げる。その時間が稼げればと。だが、それ程甘い相手ではなかった。


 私がツァービさんの側に着く頃にはオークに頭を掴まれていたからだ。



(エイン)「……っ!!」


(オーク)「……今殺すには惜しいな。小娘」


(エイン)「?!」



 私は絶好の機会だと思い脛を蹴った。全種族共通の弱点だ。

だが、びくともしていない。


(オーク)「……やはり惜しい。明らかな格上に対し死の恐怖を覚えながら、まだ戦おうとするその度胸。【魔王の部下】に是非とも欲しいものだ」


(エイン)「魔王……!?」


(オーク)「そうだ。オレはいずれ魔王になる。その為には手段など選ばん。糧になれ」


(シェーラルカ)「ならせるかよ!!!ここでぶっ潰してやらぁあああ!!!!」



 シェーラルカさんが急に飛び出してきて、オークに金棒を腹部へ叩きつけた。しかし、大してダメージが入っていないように見える。鎧がガードしたみたいだ。

 オークは拳を振り下ろしてシェーラルカさんの頭を殴った。倒れこそしなかったものの、動きの止まったシェーラルカさんをオークは蹴った。シェーラルカさんはルースちゃんを巻き込んで何処かに吹き飛んだ。



(オーク)「おまえもああなりたいか?……、話を受けんのなら、ここで殺すぞ」


(エイン)「……!……、死んでも嫌!!」


(オーク)「なら、死ね」



 その言葉をオークが放った瞬間、ガイドさんがオークを蹴り飛ばした。オークはすぐに立ち上がったものの、大きなダメージは入ったようで、蹴られた胸の辺りに手を当てている。



(オーク)「……、やはり……おまえは……」


(ガイド)「……?私の事を何かご存知で?」


(オーク)「この目で見てはいないが……伝説は聞いている……」


(ガイド)「……?何を知っているかは知りませんが……、ここを去りなさい。今回は見逃してあげます」


(エイン)「え?!ガイドさん!!何を言ってるんですか?!」


(ガイド)「……、理由は後で。今はこの場を乗り切ります。その為にはあのオークに去ってもらう事が一番有効なんです」


(エイン)「……!分かり……ました……!」



 ガイドさんは何を考えているかよくわからない人だけど、こういう時に意味のない事は考えない人だと思う。だから、指示に従う事にした。



(オーク)「……、オレとて死にたくはない。だが、そのまま帰っては群れに殺されかねんからな。そいつは頂いていく」



 オークは何処かから輪っかのついた縄を取り出し、ツァービさんを自分のところまで引き寄せ、腕に抱えた。



(エイン)「ツァービさん!!」



 私はオーク目掛けてまた飛び出した。



(ガイド)「一体何を?逃げられるとでも?」


(オーク)「あぁ。逃げられる。丁度頃合いだ」



 突如としてオークの後ろから黒い門が出てきた。それが開き、黒い渦を巻いた空間が現れる。



(ガイド)「エイン!!!ツァービさんの縄を切りなさい!!!!妨害ブロック!!!!」



 ガイドさんが焦ったような声で大声を上げた。その刹那オークの動きが完全に止まったように見えた。その隙にツァービさんの縄を切り、オークの手元から離す。

 


(エイン)「ツァービさん!!」



 私がツァービさんを抱えてその場を離れようとしたら後ろから誰かに引っ張られるような感覚がした。その引っ張られる感覚と自分の前に行こうとする行為が噛み合わずに私はバランスを崩す。そのせいで私がツァービさんを抱える力が緩んだ。

 そしてツァービさんは門から出てきた黒い腕に引っ張られ、黒い渦の中に入ってしまう。



(ガイド)「な?!!!」


(オーク)「残念だが。この術はオレのではない」



 黒い腕がまるで『バイバーイ』とでも言いたげな感じで手を振っていた。



(シェーラルカ)「待てぇえええ!!!!!」


(ガイド)「!!!……妨害!!!!」



 そうガイドさんが叫んだ瞬間黒い腕の動きも止まる。



(ガイド)「エイン!!!!その門から離れなさい!!!!シェーラルカさん!!!!黒い腕をこちらに引き摺り出してくだ」



 その時ガイドさんの頭に何処から飛んできた石がぶつかる。ガイドさんは倒れかけるがなんとか持ち堪えた。が、その後も石が幾つも飛んできていた。咄嗟にルースちゃんがガイドさんの後ろに入り、飛んでくる石を叩き落とした。

 私もルースちゃんに加勢しようと思ったが、その瞬間、止まっていた黒い腕が少しだけ動いたのが見えたから、その黒い腕に剣を刺そうとした。

 周りが全く見えていなかった私はシェーラルカさんとぶつかる。ぶつかった反動でシェーラルカさんも私も動きが一瞬だけ止まった。その刹那に黒い腕は魔法で私たちを吹き飛ばした。そしてまた手を振って黒い渦の中に消えていく。



(ガイド)「……!!!オークだけでも!!!捕らえてください!!!!」


(オーク)「悪いな。そうもいかんらしい」


(シェーラルカ)「逃すかぁあああ!!!!!」


 

 黒い渦の中に沈んでいくオークを追ってシェーラルカさんも黒い渦に入って行こうとする。しかし、それを私は止めた。何故か分からないけど、止めなければいけないと思った。止め方は横から思いっきり体当たりしてシェーラルカさんのバランスを崩した後、腰に腕を回し、ただ全力で踏ん張った。それでもシェーラルカさんの力には遠く及ばないので、シェーラルカさんはズンズンと前に進む。



(シェーラルカ)「離せぇえええ!!!!ツァービィイイイイ!!!」



 シェーラルカさんが黒い渦に飲まれる前に門が閉まり、その門はその場から消えた。その門と同時に飛んできていた石も降りやんだ。



(シェーラルカ)「ツァービ……、ツァービ……、ツァービィィイイ!!!!!」


 

 シェーラルカさんは地面を思いっきり殴った。


 

お疲れ様です。

洋梨です。


急展開。

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