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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第2章 自然都市と守護者の宴
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第34話 大事にされているという価値

 若い男の人の後をついていくと、街の外れまで来た。そこには1つの像がポツンとあった。辺りは草が生茂り、花が咲いている。それでも尚、その像は光り輝いている。こまめに手入れをされている証拠だ。



(エイン)「この人……」



 私はその像の人を見た事がある。そうだ。私が落ちた穴にあった秘密基地みたいな場所で出会ったその人だ。



(若い男)「この姿はネイチャルエデン様そのものだと言われている。誰も見た事ない御伽話の住人だが、それでも慕われてるんだ。街の年寄りやギルドのドワーフたちですらも見た事がないらしいけどな」



『誰も見たことない』、か。あんな簡単に会えたのにな。



(ガイド)「どぉおりゃ!!!!」



 私が感情に浸っていると、ガイドさんが雄叫びを上げながら若い男の人を蹴り飛ばした。壁に激突して意識を失ってしまう。

 うそ……



(ガイド)「エイン!!あなたまた!!」


(エイン)「なにやってるんですかあああ!!!!!??」


 

 私は若い男の人へ駆け寄る。急いで様子を見ると、ただ気を失っているだけで死んでいるわけではなさそうだ。一先ずはよしとしよう。



(ガイド)「え?!何をそんな!」


(エイン)「何をじゃないですよ!!親切にここまで連れてきてくれた人を蹴っ飛ばして!!どういうこと?!!」


(ガイド)「あ、あなたがまた、危ないことしてるのかなと……思いまして……」


(エイン)「……、心配かけてそれはごめんなさい。でも!急に蹴るのは良くないですよ!!この人ただの親切な人だったのに!!」


(ガイド)「で!でも!!エインって弱いじゃないですか!連れ去られている可能性もあって……!」


 

 そ、そんなに私って弱いままなのかな?



(エイン)「私……一応……冒険者なんですけど……そんな簡単には……」


(ガイド)「エイン!自分を過大評価してはいけませんよ!」



 私の心をズタズタにしたいのか?このスケベは?いい加減泣くぞ?



(ルース)「ガイドさーん!!はぁ、はぁ!!や!やっとぉ!!追いつきましたぁ……!!」


(エイン)「ルースちゃん」


(ルース)「あれぇ……?エイン……?なぜここにぃ……?」



 ルースちゃんは中腰になり、膝に手をついて息が荒々しくなっている。顔が火照っていて、少し目がうるうるしている。声も妙に艶やかだ。つまり、ルースちゃんって疲れた時、ちょっとだけエッチになるみたいだ。


(エイン)「この像を見にきたんだ。エデン像だって」


(ルース)「エデン……像?」



 ルースちゃんはゆっくりと姿勢を上げて、エデン像を見つめた。その目はキラキラとしていて何かとても綺麗に見えた。



(エイン)「そんなことより!どうするんですか?!この人!!」


(ガイド)「ど、どうすると言われましても……回復しましょうか?」


(エイン)「……、お願いします」



 ガイドさんはちょっとおかしいよね。なんか、あまり人に対して優しくないというか。まぁ、元魔王ならそれも当然なのかな?でも女の人には優しいしなぁ……



(ガイド)「回復術は少し骨が折れるのですが……」


(エイン)「自業自得です」



 ガイドさんは若い男の人を抱き寄せ魔法をかける。胸枕だ。いいな、私もやりたい。は!違う!!そんなことは思わない!!



(若い男)「っつぅ……、一体なにが……」



 若い男の人はガイドさんを見て言葉を失ったみたいだ。目を見開いて口が開いている。この姿を見れば誰だってわかる。明らかな一目惚れだ。ガイドさんは無駄に見た目がいいから、そうなるのも無理はないのだと思う。黒髪で長髪、目も真っ黒というよりは灰色寄りだ。それでいて、微笑んだ顔が優しさで包み込んでくるような母性を感じさせる大人のお姉さんだから。……やっぱり今のなし。



(ガイド)「すみません、少し強く蹴り過ぎてしまいました……」


(若い男)「いえいえ!そんな!!……?え?蹴られた?」


(ガイド)「すみません」


(若い男)「いえそんな!!むしろ光栄です!!」



 何が光栄なの?



(ルース)「……は!エイン!!もしやこれは!一目惚れではないでしょうか?!」



 ルースちゃんはコソコソと私に話しかけてきた。かなりドキドキしているのか、目は丸くなっている。



(エイン)「……そうだね。そうだと思う」


(ルース)「初めてお目にかかれました!光栄です!」

 

(エイン)「……、光栄だね」



 その後、若い男の人は全快しその場を立ち去った。そしてなぜかお礼にとお酒を少しだけ置いていく。そのお酒をガイドさんは嬉しそうに抱きかかえているところだ。

 ガイドさんってお酒好きなんだ。意外だな。そう言えば飲み比べ大会してたっけ。



(ガイド)「さて、祭りに戻りましょうか?」


(ルース)「そうですね。エインの好きそうな物が売っている出店も見つけましたよ!」


(エイン)「ありがとう。……ねぇ、ガイドさん、ルースちゃん、ちょっといい?」


(ガイド)「どうしました?」


(エイン)「この像さ、ネイチャルエデンの像って言ってたよね?」


(ガイド)「そうですね」


(エイン)「私の見た双槍の人も、この見た目なんだ」


(ルース)「……!では!エインはネイチャルエデン様とお会いしたという事ですか?!」


(ガイド)「可能性はありますが……、ただネイチャルエデンを模倣している人間だけの可能性もあります。あまり深く考えすぎないようにしましょうか。エデンの話は今回私たちには、関係のない事なので」


(エイン)「……?それってどういう」


(ガイド)「……、ネイチャルエデンの話には少し酷な話もありますからね」


(ルース)「??、ですがガイド様……、エデン祭に参加するのであれば、いずれ知る事になるのでは?ならば、ここで話してしまった方が良いのではないかと……」


(エイン)「何の話をしてるの?ルースちゃんとガイドさんは知ってるって事?」


(ガイド)「……、仕方ありませんね。心して聞くように……、自然都市グリーナイン古代都市カミノコには、未だ尚、他の都市は異なる風習が根付いています。それが生人の貢ぎ、早い話が、【人間を生贄とする風習】です」


(エイン)「生け贄……」



 生け贄は嫌な文化だ。少なくとも私はそう思っている。だからと言って、理由がある風習を目の敵にして蔑ろにするほど、私は頭が固くないつもりでもいる。



(エイン)「……」


(ルース)「……?エイン?」


(エイン)「……、理由があると思いますよ。理由があれば……、意味だって……」


(ルース)「……?エイン?どうされました?」


(エイン)「なんでもない……」



 私が生け贄を好きじゃないことには理由がある。私の村でも昔は生け贄という風習があったからだ。その生け贄に選ばれてしまったのは大好きだった私の親友。私たちはいつも一緒に遊んだり、悪ふざけしたりしていた。親友が選ばれてしまった時は、私は何も出来ずに、ただただ見送る事しか出来なかった。

 そしてその後、その生け贄は何の意味もないことが分かってしまった。生け贄に捧げた親友の亡骸を操り、村を襲ってきた魔物がいたからだ。村を守るための生け贄を嘲笑い、冷酷に利用した魔物がいた。あれは今思えば、魔族と呼ばれる種なんだろう。

 だから、私は魔物に対して慈愛の精神なんて持ち出せていない。あれがおそらく魔族の仕業であっただろうと理解できる今でも、その範囲が魔族まで広がっただけだ。魔族と魔物、この2つに遠慮なんかいるはずがないんだ。



(ルース)「エ、エイン?」


(ガイド)「……ルースさん。その辺は……それよりエイン、エインの好きそうな出店がありましたよ」


(エイン)「ごめんなさい……気分、乗らないや……」


(ガイド)「……、そうですね。今日は宿にもう行きましょうか。結構いい所借りられたんですよ!」


(エイン)「……分かった。行く」


お疲れ様です。

洋梨です。


英雄都市ではエインの村を最後に生け贄の風習はなくなったとされています。エインの村はだいぶ田舎の方なので。

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