第32話 自然都市の歌声
それから何の苦もなく自然都市まで着いた。ルースちゃんが軍資金として貰ったお金が途轍もないくらいあったので、海路は結局、船に乗ることにした。乗っていた船は魔物避けが施されており、比較的安全に船が大陸間を渡れるようになっているらしい。だから高いそうだ。そんな船に乗っても余りあるほど渡されているようで、なんか、複雑な気持ちになる。
ちなみに、ルースちゃんは王族としての権利をレインさんに一任するということで、しばらくは政治には関わらないということで王に旅に出る許可を貰ったらしい。つまり、丸投げしたそうだ。そんなのありかとは思うのだが、ありな国らしい。
とはまぁ、色々あるものの、花のギルドの入り口まで着いた。花のギルドの周りは一面お花畑ではしゃぎたくなる。
後で遊んでこよう。
ギルドそのものはそこまで大きくはないけれど、それでも何かの施設ではあるんだろうなと思わせるほどの大きさではある。外見は自然とつく都市らしいもので、何かの植物の蔓が屋根や壁に張り巡らされていた。
(ルース)「エインはなんだか楽しそうですね」
(エイン)「そう?でも、綺麗なお花畑だからテンション上がってるかも!」
(ガイド)「着いて早々に『お花畑だ!!』って言って花畑に飛び込もうとしてくらいですもんね。ちょうど近くにいた管理人さんに怒られてやめてましたけど」
(エイン)「もう!そういうのは!忘れてくれるのが大人なんですよ!!」
(ガイド)「あら、一丁前に恥ずかしがっているんですか?」
(エイン)「ふふ、エインもまだまだお子様なのですね!」
なんだ?2人して子ども扱いしてくるぞ?私はそんなに子どもか?
(ガイド)「それよりエイン、本当にそれをつけていくんですか?」
私がつけていた額に青い宝石がついている仮面をペシペシと叩きながら訊いてきた。怪訝そうな感じとかいうのでもないけど、ケラケラ笑いながら半ばバカにしているような気がするので腹立つ。
(エイン)「エイン一行と呼ばれるのなら、代表の顔は大事なので。私はそりゃあ、かわいくて愛嬌もあって、皆んなからもかわいいかわいい言われるくらいの、まぁ、とても他人が無視できるような可愛さじゃないんですけどね」
(ガイド)「何言ってるんですか?正気?」
(エイン)「とにかく!そんなにかわいい私なんですけど!あんまりパッとしないんですよね!それで私のことを見て『あー、あの子、あの代表の子、あれよあれ、あぁ!エイン一行の子よ!』ってなるの嫌じゃないですか!」
(ルース)「忘れられる様な事もないとは思いますが……」
(ガイド)「まぁ、ふざけているわけではないのなら別に構いません」
(エイン)「さすがガイドさん!」
(ルース)「……、では挨拶に行きましょうか」
(エイン)「うん!」
中に入ると中央ギルドと作りはさほど変わらなかった。が、ここは観葉植物がいっぱい置いてあり、それに屋根に穴が空いていて陽の光がそのまま差し込んでいる場所だった。
それに伴ってか、いっぱい虫が飛んでいる。
(エイン)「うへ!虫いっぱいだぁ……」
(ルース)「そうですね」
ルースちゃんもそう言いながら服についた虫をパンパンと叩いて払っている。
私たちは虫を払いながら、受付まで来た。受付には無愛想な見た目の"ドワーフ"らしき人がいた。ドワーフは小人の1種で、物作りが得意だと勇者様伝記にも書いてある。見た目はおじいさんというくらいには老けていた。
(エイン)「初めまして!!中央ギルドに勧められて、自然都市に来ました!よろしくお願いします!!」
私はそう言ってアレッタさんに貰った書類を渡す。
(ドワーフ)「んー、中央かい……こん時期くるちゅうこちゃ、のんぎょうでもてっちゅうんけ?」
(エイン)「???」
(ルース)「えぇ、中央には仕事があまりありませんので。ここでしばらくの間は厄介になるつもりです」
(ドワーフ)「そっちゃよがよろうけ。中央にゃ、こんえぇまもんもおりゃっしや」
(ルース)「はい、よろしくお願いいたします。それで手続きの方をお願いしたいと思っているのですが、任せてもよろしいですか?」
(ドワーフ)「えんよ、こっちゃでやっちゅうけ。まちんにでいきゃなな。エデン祭もちゅうろやっちゅうけ」
(ルース)「ありがとうございます!」
ルースちゃんと受付の話が終わった後、私たちは道沿いの花畑を歩いていた。川沿いに出来た道で川のせせらぎの音が心地よく聞こえてくる。しばらくはゆっくり歩こうということになって、私たちはそれぞれその辺を自由に過ごしていた。
私は花畑で花の冠を作っている。流石に何もない時に仮面をつけていると不審者なので仮面は鞄にしまっている。
(ルース)「エイン!これを見て下さい!!」
(エイン)「何?」
ルースちゃんに呼ばれたので、川近くにいたルースちゃんに近づく。ルースちゃんは本を持っていた。
(ルース)「これ!本です!それも!あ、なんでもありません……」
(エイン)「……そっか」
多分、エッチな本だろうな。なんでそんなにテンションが上がっているか分からないけど、嬉しそうでなにより。
(ガイド)「ルースさん、意外と好きものですねぇ。私も見たいです」
ガイドさんがルースちゃんに肩を組んでページをペラペラめくっている。
(ルース)「え?!わ、私はそんな!でも少しくらいならこの場でも……」
(エイン)「私、あっちでまた花冠作ってるから」
私がまた花畑の近くまで来ると何やら声が聞こえた。
『今年もまた……この時期に……いつまで私は……』
(エイン)「なんだろ?声?誰かいるの?」
声は確かに聞こえた。でも、近くには誰もいない。少しだけ辺りを見渡すと遠くの方に人影が見えた。私はその人影に近づいてみる。その人影は小さな少女だった。おそらくリンダと同じくらい、つまりは10歳前後だろう。
(エイン)「ねぇ、ちょっといいかな?」
(少女)「なーに?」
小さな少女は花冠を頭に乗せながら、こちらに振り向ける笑顔で言った。
さっきとは違う声だ。この子の声じゃない。
(エイン)「この辺でさ、誰か見なかった?」
(少女)「んーん、だれも見てないよ」
(エイン)「そっか。その花冠上手だね。にひ!」
(少女)「ありがとう!お姉ちゃんも上手!」
(エイン)「ありがとう!」
(少女)「お姉ちゃんにも'クー'のお歌聞かせてあげる!聞いてて!」
(エイン)「わかった!」
クーと言った子は、少し遠くに立ち、軽く周りながら歌い始めた。とても綺麗な歌声で、美しく響く歌声。周りに咲き誇る花が一緒に歌っているようにも感じされるほど、空気を震わせている。その歌は誰かへの愛を歌っている歌で、それでも尚、二度とはその愛を届けられない切なさを歌っていた。
(クー)「おわり!!」
(エイン)「上手だったよ!!すっごく綺麗な歌声!!」
私は拍手した。本当に綺麗な歌声だった。とても小さな子が歌っている様には思えないほど、洗練された歌声のようだった。
(クー)「ありがとう!!」
(エイン)「この歌はクーちゃんが作ったの?」
(クー)「ううん、島の歌だってお父さんが言ってた!」
(エイン)「島の?」
その時、遠くからクーちゃんを呼ぶ声が聞こえた。どうやらお父さんのようで『お姉ちゃんバイバイ!』と言った後に、クーちゃんは走ってお父さんの方へ向かって行った。
(エイン)「そろそろ私も戻らなきゃ」
そう思い、私が一歩踏み出したところで地面が抜けた。私はそのまま下へ落ちてしまった。
お疲れ様です。
洋梨です。
さて、自然都市編を始めます。色々な設定を出していきたいところです。
また、ここから10話くらいはストックありますので、そこまではノンストップでいきたいと思います。更新を忘れていたらごめんなさい。
自然都市は基本的に農業・畜産が発展しています。もっと広く言えば、陸における第一次産業が発展しています。




