閑話その1 ガイドの野暮用
閑話を書きます。なので、本編から少し離れた話です。従ってエイン目線ではなく第三者視点で書きたいと思います。
ある日の夜、エインとガイドは2人で風呂屋に来ていた。ほぼ毎日2人で来ており、両方ともが番台の人に顔を覚えられているほどである。
(エイン)「ふんふんふーん」
エインが鼻歌を歌いながら、服を脱ぎ始めた。エイン達のいる場所は、当たり前だが脱衣所である。少し広めの空間に木で作られた少し年季を帯びた棚が部屋の端に置かれていた。棚は縦横共に4分割された計16個の空間に籠が置かれていて、一部の籠の中には誰かの服が入っている。
そんな脱いである服には目もくれず、ガイドはまじまじとエインを見つめる。その視線に少し、気怠さを覚えながらもいつも通りの光景に少しだけ笑みを溢した。
(エイン)「そんなに魅力的ですか?私は?」
(ガイド)「勿論です!!!許してくれるなら今すぐにでもおそ」
(エイン)「許しませんからね」
(ガイド)「……、はい……あ、今日も私ちょっと野暮用が……」
(エイン)「??またですか?じゃあ、先に入ってます!」
(ガイド)「はい。ではまた」
エインはガラガラと横開きの扉を開け、風呂場に入った後、後ろに手を回してまたガラガラと扉を閉めた。辺り一面、湯気に覆われて視界が悪いものの何もかもが見えないと言うわけではなく、大きな石造の風呂の位置、洗い場の位置等は分かる。
エインは最初に掛け湯のある場所まで行き、そこにあった桶にお湯を満杯に汲んでから、肩の上からゆっくりとかけ流す。
(エイン)「ほひゅぅ……きもちいぃ……さ、洗いに行こ」
先に身体を洗ってから、お湯に浸かるエイン。頭の上にタオルを乗せながら気持ちよさそうにしている。そんなエインの横を2人の女性がくすくす笑い、そして話しながら通る。それをエインは盗み聞きする。足音と共に遠くへ行く声もエインは風魔法を駆使して、音のこもった言葉の空気を自分の耳まで運ぶ。
(女1)「またやってたよあの人……にはは」
(女2)「相手のことをよっぽど好きなのかな?」
(女1)「でもあれ事件だよ事件。奉行所に突き出す?笑」
(女2)「いやぁ……、いつも同じ人のやつだし……私ら関係ないからね。それにいつも一緒に来てるし、どうせ恋人でしょ?」
(女1)「そうだっけ、よく見てんね」
(女2)「でもあれねぇ……まじ変態の所業だからなぁ……、パンツ顔に押し当てながら深呼吸してるのは……やっぱり奉行所に突き出す?」
(女1)「にはは、どうしよっか」
(エイン)(とんでもない変態がいるんだな。もしかしてガイドさんだったりして……それはないか。一緒に来てるの私だから、とても恋人には見えないし……)
(女2)「でもなぁ、やられてる本人がOKならいい気も?聞いてみるかな?本人いるし、ほら、あのタオル頭に乗せた金髪の」
そう聞いたエインは勢いよく風呂から上がり、言葉を聞いてから数秒もかからないうちに脱衣所に繋がる扉を開けた。そんなエインの目に入ってきたのは、自分の下着を鼻の所に持ってきながら深呼吸するガイドの姿。エインは堪らず、ワナワナと身体が震える。その怒りをバネに、その場から勢いをつけてガイドの後頭部に蹴りを入れた。
………
時は少し遡り、ガイドが野暮用があるといいエインと分かれたところから。
ガイドは番台のところまで行き、番台さんと話をしていた。番台さんは、長い耳に黒色の髪で糸目の女性だ。若そう見えるが、パイプを吹かしている。
(ガイド)「最近、海洋都市には不思議な噂が流れているそうですね」
(番台さん)「ほうかい。ここは中央やけん、余波が来ることもあろうね」
(ガイド)「……、仮面をつけた謎の集団が勢力的に動いているとか。ここらでもいるらしいですよ。知ってますよね?」
(番台さん)「……、そない早うここにはこんかと思っちょったけどね」
(ガイド)「何者です?彼ら」
(番台さん)「分からん。ただ、今までの小物とはちと違うかもしれんね」
(ガイド)「……、まぁ。まだ様子見ですかね」
(番台さん)「そうね。ところでガイド様、頼んでたもんは?」
(ガイド)「……、これで最後にして下さいよ。こんな事するの良くないんですから……」
そう言って、ガイドが懐から一枚の紙を取り出し、番台さんに渡した。その紙にはエインの寝顔が描かれている。
(番台さん)「何をアバズレが偉そうに。……、これが勇者様の寝顔ね。ほんにかわいい顔しちゅうね」
(ガイド)「何に使うつもりです?呪いをかけたりしたらどうなるか分かってますよね?」
ガイドは瞳孔を開けながら、番台さんをまじまじと見つめる。今まさに獲物を狩ろうとする獣のような目に番台さんは軽く首を横に振った。
(番台さん)「……、『そないな目』、せんでもよかね。ただの観賞用よ。まさか魔王様のお気に入りに手を出すはずもないよ」
(ガイド)「……、どうだか。それよりこれで本当に最後ですからね。最近少しエインも怪しんできていて、私のクンカタイムが減りつつあるんですから」
(番台さん)「……、相変わらずのアバズレね。言うたところで止められんけん、何も言わんけど。勇者様以外にやるのは許さんね」
(ガイド)「……、分かってますよ。これでも常識ある方ですから。では!行ってきます!!」
ガイドはそう言って「ぴゅー」という音が似合うような勢いで番台のところから脱衣所へ戻って行った。
(番台さん)「常識って一体なんね……」
脱衣所へ戻ったガイドは周りの様子を素早く確認しながらエインの使っていたカゴからエインの下着を取り出す。そしてそのニオイを一瞬だけ嗅いだ。
(ガイド)(あぁ、これです……堪りません……本人には手を出せないし……これで我慢するしか……あぁ……もう一度……)
ガイドはまたニオイを嗅ぐ。しかし今度は顔に押し当てながら深呼吸するように嗅いでいる。そしてその状態でぴたりと止まる事10分以上。
………
時を戻し、現在、ガイドがエインに蹴りを入れられたところ。
蹴りを入れられたガイドは棚の出っ張りに額をぶつけ、「うぉお……!!」と悶絶しながら、ゴロゴロとあっちへ行ったりこっちへきたりして転がっている。しかし、何の執念か下着を離そうとはしていない。
(エイン)「何してんじゃああああ!!!!!!!」
しかし、ガイドの様子はお構いなしにエインは怒号を飛ばす。でもそれは至極当然のこと。
(ガイド)「……、エイン!!いきなり蹴るのは良くないですよ!!」
(エイン)「勝手に人のパンツの臭いを嗅ぐことは良いことなんですか?!」
(ガイド)「……!!エ、エインのなら……ギリギリ……!」
(エイン)「いや!!良くないから!!!早くそれ返して下さい!!!」
(ガイド)「嫌です!!!これは私のパンツです!!!」
(エイン)「いや?!私のですけど!?」
そんなエインとガイドのやり取りに囃し立てられ、周りには野次馬がゾロゾロと集まる。口々に「あぁ、とうとう彼女さん怒っちゃった」とか、「痴話喧嘩だ痴話喧嘩」とか、「乳繰り合うなら家でやれ」とか、勝手な声が聞こえてくる。
(エイン)(こ、これは……まずい……!非常にまずい!私まで変態にされちゃう!)
エインがどうしようかあぐねていると、そこに番台さんがパイプを吹かしながらのっそりと歩いてくる。
(番台さん)「騒ぎすぎったい。静かにね」
番台さんの鋭い眼光がエインを捉える。
(エイン)「うっ……!す、すみません!!」
(番台さん)「そない格好しちょると、風邪ひくけん。温まり直して、早く帰んね。明日も特訓やろうに」
そう言い残して番台さんはまたゆっくりと歩きながらその場を後にする。
(ガイド)「……、あまり大騒ぎすると出禁になりかねませんね。用心用心」
(エイン)「……、それはガイドさんが気をつけるべきことでは?」
エインの怒りが収まり、ガイドと普通に話し始めたので周囲の人達はぞろぞろとその場を後にした。ある人はまた風呂に入り、ある人は着替えて出て行ったりと。そのように多様な行動をする人々は、不思議と不快感を持った人がいないようだ。そんな様子を見てエインは少し思うところがあったようで。
(エイン)「……、やっぱりここの人達はちょっとおかしいかも」
お疲れ様です。
洋梨です。
皆様!お久しぶりでございまする!
2ヶ月以上滞っていた理由はただのやる気不足でござる!
まぁ、忙しくて疲れているというのもあります。
更新したということは新章ができたのかと言えば、出来ていません。かと言って、このまま滞るのも個人的に嫌なので、閑話を入れることにしました!
なんとなく、特に意味のない閑話を書けるようにしたいですわ。しかし、重要な事も書きたいからそうならない事もあると思いますわ。
冷静にこの話見返して、ヤバいなと思いました。




