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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第1章 勇者様の基礎
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第31話 勇者の旅立ち

 宿に帰ってたらガイドさんが仁王立ちして待っていた。それもそのはずで、特訓が終わった後はご飯を食べてルースちゃんと楽しくお話ししてから帰ってきた。夜も更けている。しかし、私は旅へ出る準備を何1つとしてしていない。ご立腹なのも当然なのだ。



「エイン……、何か言うことは?」


「遅くなってすみません」


「……、明日からの準備は?」


「……、してません」


「はぁ……、だと思いました。あなたの分も一応用意してあります。ですが足りないものもあるので、買いに行きましょうか。銭湯ならまだ空いています。あそこの売店でも売っているでしょうし」


「……!ガイドさん!!ありがとう!!」


「……たく、計画はきちんと立てないといけませんよ?」


「うん!ありがとう!!」



 私たちは準備を整える為に銭湯まできた。売店には色々売っていて、準備物は滞りなく揃う。準備物を揃えてから、私たちは風呂に入っていた。



「ふゅ―……気持ちいぃ」


「……、このお風呂もしばらくはお預けになると思うと、少し寂しい気もしてきますね」


「お預け?」


「はい。自然都市グリーナインにもこういった銭湯があるとは限りませんよ」


「あぁ、そっか。まぁ、その辺はなるようになるかな」


「ふふ、そうですね。ところでエイン、明日は空路で行きますか?それとも海路?」


「空路?海路?」


「……、海路で行きましょうか。その方が比較的安全ですし」


「そうなんだ。じゃあそうしよう」


「……、ふぅ……、……」



 ガイドさんが重そうに肩を回した。



「?お疲れですか?」


「?いえ、特には。強いて言えば、エインの計画性の無さにちょっと思うところがあっただけです」



 ガイドさん、これは本気で怒ってる感じだ。



「す、すみません」


「……、まぁ、そういう時の仲間です。頼れる時は頼っていいですけど、全てが他人任せにはならないようにね」


「……はい」



 ガイドさんはわしゃわしゃと私の頭を撫でてきた。少し乾いていた髪の毛がまた少しだけ湿り気を帯びる。



「あ、えっと、ガイドさん。その……、」


「何ですか?」


「その!あの!胸!揉んでいいですよ!5回!」


「嫌です」


「え?!」


「そういうご機嫌取り的なものは情欲をそそりません。そんな見え見えの」


「あ、それじゃなくて……、準備してくれてたお礼にと……あ、でも嫌なら別にこちらはそれでも構わな」


「!!で!でしたら!喜んで!!」



 ガイドさんはすかさず後ろに回って胸に手を当ててきた。今回も前回同様「あはぁ」と言いながら、頭を背中にピタッとつけてくる。自分で言い出したし、特に文句もないけれど、1つ気になるのはご機嫌取りでも結局やってたんじゃないかという事。まぁ、別にいいか。


 ガイドさんは5回の感触を存分に味わいたいが為に長く長く、手を当てていた。つまり、お風呂に長く入っていたのだ。当然の如く、私はのぼせていつものベンチで寝そべっていた。ガイドさんは横に立ちながら待ってくれている。



「今日はちょっと空が綺麗だな」


「自然都市はもっと綺麗ですよ」


「そうなんだ。楽しみ」


「ふふ、そうですね。そろそろ帰りましょうか。必要なものは揃いましたし、いよいよ明日出発ですね」


「……、ここに戻ってくるには何日かかるかな」


「……、早ければ数日、長ければ数年。他の都市も行くかもしれませんしね」


「そっか。帰ってくる時には、もしかしたら全部回ってる可能性もあるのか。……、できればリンダに会いに来たいけど……」


「……、そうですね。偶には里帰りしないと心配しますし、時期を見て会いにいきましょうか」


「うん!!」



 その夜はぐっすりと眠って、翌朝はすっきり目が覚めた。この日から私たちは自然都市に向かって出発する。もしかしたら、しばらくはこの街も見納めになるかもしれない。そう思いながら、大きなカバンを背負い街の様子を見つつギルドまで向かっていた。



「改めて見ると、大きな街ですね。色々なものがたくさんあります!」


「そうですね。次に来た時は、一緒に買い物でもしましょうか」


「はい!」



 ギルドに着くと、ルースちゃんが小さな鞄と剣を持ち受付で待っていた。そしてなぜか、いつか見たハチマキを巻いた人がいる。私とガイドさんが腕相撲をした時に実況をしていた人だ。

 なんでいるんだろ?



「おぉ!勇者!それに謎の女ガイドではないか!待っていたぞ勇者!!おはよう!!」


「エイン、ガイド様、おはようございます」


「おはよう、ルースちゃん」


「おはようございます」


「あの、何か用ですか?」



 私はそう訊いた。「待っていた」とか言っていたので何かあるのかもしれない。



「ははは!!特にない!!!」


「ないのか」


「あぁ!見送りに来ただけだ!!」


「見送り?なんで?」


「ははは!!勇者の凱旋であろう?ならば見送るのが筋というもの!!」


「へぇ」


「ふふ、何やらエインに感ずるものがあったみたいですよ。エインは勇者として相応しいと言っていましたし」


「そうだとも!!エインは勇者に相応しい!!自らが犠牲になり!!他者を助ける精神!!見事であった!!」


「あ、ありがとうございます……」



 な、なんか騒がしい人だな。



「されど問おう!おまえにとって勇者とはなんだ?!」


「勇者様……、私は困っている人を助けたり、誰かを守ったりして、どこか声の聞こえる場所なら誰のことも見捨てない人が勇者様だと思ってるよ」


「ふむ、ルース様は?!」


「え!?あぁ、えっと……、私にとっての勇者様は悪しきに立ち向かえる勇気を持ち、そして人々に勇気を与え導く者であると思っています」


「なるほど。このように!!勇者と言っても人によって想いを馳せる像は異なる。俺の場合!!エイン!おまえと似ているという事だ!!俺はおまえを応援する!!」


「あ、ありがとう!」


「この先、多種多様な価値観に出会い苦悩する事もあるだろう。しかし、隣には友人がいる事だけは忘れてくれるな。では達者でな!」



 ハチマキの人は背を向けて手を挙げた。そしてそのまま1度も振り返る事なく何処かへ消えていく。



「まぁ、ああ見えて良いところもあるのよ」


「仕切りたがりってのは直して欲しいけどな」


「それはそう!!」



 ミドルさんとアレッタさんはそう言いながら笑い合っていた。



「そう言えばエインちゃん、昨日のうちに訊くの忘れちゃってたんだけど、空路でいく?海路で行く?」


「ルースちゃんは希望あったりする?」


「私はどちらでも」


「じゃあ海路で!!」


「OK。ちょっと待っててね」



 アレッタさんは資料をゴソゴソと漁り、資料を2枚引き出して渡してきた。1枚は小さな紙でもう1枚は大きな紙だ。



「こっちの大きいのがギルド紹介状よ。今回はギルド経由で都市移動をするからこういうのがいるの。いつか他の都市に行ったら何処かのギルドに挨拶しなさいとは言ったと思うけど、ギルド経由の場合はこちらから決めさせて貰うわ。今回は『花のギルド』に行って『中央ギルド』からの紹介ですって言ってね」



 アレッタさんは指でなぞりながら、ギルドの名前ややる事を説明してくれる。私はそれを必死に覚える。

 よし、覚えた。



「この小さいのはギルドが貸し出している移動特化魔物キャニマルの貸出証明書よ。花のギルドに移動特化魔物とこれを渡せば後はギルド間でのやり取りに変わるから、ここに返しにくる必要がないの」


「へー、便利」


「そう、便利。私たちの犠牲で。うふ」



 アレッタさんが怖い笑顔で私を見つめてきた。

 怖いよぉ。



「こら脅すな。しゃーないやろ。仕事なんやから」


「面倒なことに変わりないじゃない。誰よこんなシステム作った奴は。でもま、兎に角、その辺は心配しなくて良いからね」



 別の意味で心配だよ。



「……、ルースちゃんは何借りたい?私は分からないから選んでいいよ」


「はい!駕籠亀ブービータートルを所望します!!」



 ガイドさんがそう言いながら割って入ってきた。



「駕籠亀?なんですかそれ?」


「とても大きな亀です。非常にゆったりとした動きで歩む速さはかなり遅いですが、背中に家が建てられる程、安定した歩みをしてくれるんですよ!しかも水陸両用です!!」


「そんなの使ったら自然都市に着く頃にはお祭り終わってるじゃない。バカなの?」


「な!?この私がバカですって?!」


「バカよバカ、バーカ」



 ガイドさんとアレッタさんはやいやいと言い争いを始めた。というよりもアレッタさんが一方的に煽っている。



「しょうのない奴らや。そんで、どれ借りるんや?」


「んー、やはり厳牛ラゲッドブルが良いですかね?3人いるとなると、荷台に乗りながら行った方が楽しいと思いますし。疾走蜥蜴ランナーバジリスクだと速いのですが、扱いが難しくて……」



 なんか色々出てきたけど、何もわからない。とりあえず、牛か蜥蜴の話のようだ。



「そうやな。なら厳牛でええか?海路はまた着いたら決めたらええわ」


「?海路って船じゃないの?」


「船は高いからな。海路も移動特化魔物の貸し出ししてるわ。さっきもらった小さな紙を見せたら、貸してくれるわ。あくまで渡すんは花のギルドやからな。間違えたらあかんで」


「そっか。ルースちゃん、はい」



 私はルースちゃんに小さな紙を渡す。



「え?なんですか?」



 疑問の顔を浮かべながらもルースちゃんは受け取った。



「間違ったら困るから」


「……、分かりました」


「ほな決まったな。よし、2人とも俺に背を向け」


「??こうですか?」



 私とルースちゃんはミドルさんに背中を向けた。私とルースちゃんは顔を見合わせるものの、意図が分からなくて両方とも困惑している顔だ。



「貸し出し用の魔物は外におるからな。俺らはここでお別れや。しばらく会われへんかも知らんから、言うておくことがある。まずエイン!」


「は、はい!」


「思うがままにやったらええ。若人は夢を見ることが仕事や。頑張れ!」


「はい!!」


「次!ルース!」


「は、はい!」


「エインと同様、これからは夢の為だけに頑張ればいい。少し遅めの青春、楽しんでこい!」


「はい!!」


「じゃあ!!楽しんでこい!!!」



 ミドルさんは私とルースちゃんの背中を強く押し出した。振り返ってミドルさんの顔を見ると眩しい笑顔をしていたように思う。



「楽しんできなさーい!!」



 アレッタさんもとびきりの笑顔で手を振ってくれていた。



「「…!いってきます!!!」」



 私とルースちゃんの重なった声が、宙を待って響いた気がした。


お疲れ様です。

洋梨です。


実はとんでもないミスを犯してしまいました。


内容は

ガイドさんの姓はヴァンガードのだが、レインヴァースと密接に関係があり、「ヴァンガードという姓が王族に関係あるという情報だけは漏らしてはいけない」という意識が統一されているほどだ。

それなのにエインが「王族にヴァンガードっていないんだね?」って言って、一悶着がある。


要は口は災いの元をガイドさん関連で体現する


という感じにしようとしていたんですが、思いっきり忘れてグルエルさんが何処かいっちゃった話を書いてました。

まぁ、過ぎ去った事は仕方ないので、その話は後に持ってきます。


次からは自然都市編です。

歌をトリガーというか、導入にしたいので歌詞を考える為に更新伸びるかもしれません。

他の作品も書きたいし。


では、よろしくお願いします。

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