第26話 パーティーとは
私はゴスロリというジャンルにあたる衣装を貸してもらった。黒を基調としたワンピースで、肩の部分がふわっとしている感じだ。このぽこっとした肩の部分の袖をランタンスリーブというらしい。鎖骨の部分まできちんとボタンが閉められている上に、首にはチョーカーという首輪が巻かれて若干苦しい気がする。スカートの部分は何層にも束ねられているのかよく分からないけど、波打っている。しかし、動きやすい。しかも、かわいい。靴下は長くて膝くらいまである。靴も長くて脛を隠すほどある。しかも、これもかわいい。これじゃあ私の魅力が増し増しになってしまう。悩殺待ったなしだ。
「大変お似合いです。エイン様」
「!やっぱりそう思いますか?!私はかわいいから何でも似合うし!この服もかわいいし!!皆んな悩殺待ったなしですよね!!」
「……、……、やはりゴスロリこそ至高……!!、エイン様はロリィタ系もお似合いでしょうけれど、ゴスロリの淫靡な魅力に抗えぬはこの世の道理でしかない……!!」
今にも昇天しそうな笑顔かつ鼻血を垂らしながら、ミーシェイさんはそう言った。よくわからないけど、嬉しそうでなにより。
「……、失礼しました。では会場に参りましょうか」
「はい!!!」
私はミーシェイさんについていき、相も変わらず広い廊下を歩いている。絶対にこんな広くなくていい。
「そういえば、パーティなんですね。会議じゃなくて」
「会議兼パーティ―です。食事等をしながら、重大な話をされる場です。今回は何やら発表があると伺いました」
「どんな発表なんですか?」
「それは発表されるまでは分かりません。その内容を知っているのは王族の方々のみ。我ら衛兵や大臣等には発表されるまで情報は降りてきません。民間人へはさらに後に降りることになるので、ここにいる人たちの情報への熱意は相当なものになります。安易に口を開きませぬよう、ご注意くださいませ」
「わ、わかりました」
大変なんだ。王族の人も、その取り巻きの人たちも。この街は歪な空気がする気がしてたけど、こういうのがあるからなのかな。注意しないと。
ミーシェイさんに後を追う事、数分。私はパーティ会場と思われるところに着いた。豪華な食事が並んでいて、皆仮面をつけて和気藹々と談笑しているように見える。
なるほど、私が参加しても問題はなさそうだ。
ミーシェイさんは私の方を向き、片膝をついて右手を自身の胸に当てた。
「エイン様、私はここまでです。それと1つ注意点を。先程申し上げた通り、ここは情報が錯綜する場所。口は災いの元になりかねません。努努、お忘れなきようにお願いいたします。それではどうぞ、パーティーをお楽しみください」
そんなこと言われて楽しめるメンタルを私は持っていない。
怖いよぉ……、でもまぁ、喋らなければいい感じみたいだし、ご飯食べてたら問題ないよね。
そう思って、私は近くにあった積み重なっている皿を取って、料理をとりに行った。周りを見てると、皆んな同じ皿を持っているし、立って食べているみたいだから、多分、立食パーティというやつなんだろう。本で見たことがある。
料理は葉っぱを何かに浸した物や芋を焼いた物とか色々ある。見た目はかなり美味しそうだ。
「どれにしようかな……、あ!これ美味しそう!!これなんていうやつなんだろ?」
私は三角に切られたチーズにチョコが砕かれて振り掛けられた料理を皿に乗せた。そして、ちょっと端に行ってそれを食べる。
おいしい!!!!少しとろけるチョコとチーズが合わさってあまじょっぱい味になってる!!後味は濃厚なのに!!味の深さが身体に染み渡るようにあっさりとしていて!!くどくない!!
もう1個取りに行こ!
同じ料理を取ろうと思ったら、先客がいた。仮面で顔は見えないけど、髪の色が桃色だし、背の高さも私よりずっと高めだ。間違いない、ルースちゃんだ。
しかし、間違いだったら困るので、私はその人の後ろに周り肩を指でトントンと叩く。不思議に思ったその人がこちらに振り返り、お辞儀をしてきた。
「ご機嫌よう。すみません。すぐに立ち去りますので……」
やっぱり、声も同じだ。
「ルースちゃん、私私、にひ!!」
私は仮面をとって、笑ってみせる。
「エイン!なぜここに?!」
ルースちゃんは驚いてはいるものの、小声で話しかけてきた。ルースちゃんでも気を使うほど、会話は慎重にしなければいけないのか。でもなるようになるか。しかし、会話を聞かれても困るので小声で話すことにする。
「ルインさんに入れてもらった。今日はお話があるんだ。ね、お祭り行かない?」
「お祭り?」
「うん!自然都市でやるみたい!」
「あぁ、『エデン祭』ですね。明後日から行われると聞いています」
「ふーん、そんな名前の祭りなんだ。どういうお祭りなの?」
「……、農作物などに感謝し、守護者・ネイチャルエデンに祈りを捧げるお祭りだそうです。自然都市ならではのお祭りですね」
「そうなんだ。あ、でもごめんね、お祭りはついでなんだ。ここら辺じゃ魔物討伐のお仕事しかなくてさ。危ないからってアレッタさんが依頼を渡してくれないんだ。だから、自然都市の危険性の少ないお仕事探しにいくついでに、どうせならルースちゃんともお祭りいきたいなと思って」
「どんな理由であれ、一緒に行きたいと思ってくれるだけで嬉しいです!……、ですがすみません。他の都市に行くとなると、『パーティーの編成』をしなくてはならないので、どうするかは少し……、考えさせてもらわないければ……」
「?、パーティーの編成って何?」
「あら?ガイド様とパーティーを組んでいるのではないのですか?」
「ガイドさんは冒険者じゃないよ。面倒くさいからギルドには登録してないって。だから、私もガイドさんもパーティーのルールってあんまり知らないんだ」
「でも腕相撲の時に……、勇者様のパーティーだと皆に伝えたという話を聞いた気がしますが……」
「あれ、冒険者のパーティーに入りたくない理由としてついた嘘だと思うよ」
「そうでしたか。なるほど。では手短に説明しますね」
「お願いします!!」
「ふふ、パーティーを組むと、その組んでいる人達とは一心同体の『仲間』という扱いになります。なので、依頼の受注はそのパーティー単位で受けることが主になりますね。それによって他にも色々変わることがありますが、1番大きく変わることは報酬の受け取り方です」
「受け取り方?」
「はい。そういえば、芋葡萄の報酬は受け取りましたか?」
「うん。葡萄のケーキとお金半分もらった」
「え、ケーキもあったんですね」
「うん。また一緒に食べにおいでっておじぃさんが言ってたよ。また行こうね」
「はい。あ、報酬の受け取り方ですが、今半分もらったとおっしゃいましたよね?」
「うん」
「それはパーティーを組んでいない者が一緒に依頼を受注して場合、『必ず報酬は頭割りになる』からです」
「ふーん」
「ところが、パーティーで依頼を受注するとパーティーに報酬が支払われます。報酬の分配はパーティーで各自決めることが出来るという事です」
「それって何か違うの?」
「全然違います。例えば、エインと私が受注した依頼はエインの方が功績が大きいですよね。バージ・ボアを倒したり、依頼主と楽しくお話ししたりと。しかしながら、報酬は必ず頭割りになるというルールのせいで、今回の場合は折半なりました」
「うん」
「……、この場合は少し分かりにくいかと思いますが、分かりやすい例を出すと、仮に私が急用が出来たと言って依頼をエインに全て押しつけたとしても、既に2人で受注してしまっているので、この場合も報酬は折半です」
「え!!?せこい!!!」
「はい。不公平感がありますよね」
「じゃ、じゃあさ!えっと、魔物をさ!10体討伐してください依頼を2人で受けたとしてさ!かたや1体、かたや9体でも報酬は同じってことだよね?!」
「その通りです。しかし、パーティーになればその分配は自由なので、1体分の報酬、9体分の報酬と分けることが可能になります」
「はぁ、色々あるんだね」
「まぁ、色々あります。話を前に戻しますね。それに伴い個人が登録できるパーティーは1つのみです。1体分でも支払われれば、多数のパーティーに所属して荒稼ぎするなんて事も出来はなくはないからですね」
「?それはパーティーじゃなくて、パーティー組まずに色んな人と受ける方が荒稼ぎ出来るんじゃないの?」
「そんなことしたら、他の冒険者から恨みを買って、最悪殺されるので誰もやりません」
「わぁ、物騒だ」
「そして、私がパーティーを編成しなければならない理由がもう1つあります」
「うん」
「『パーティーでない人たち同士』が他の都市に行って、依頼を同時に受注するという行為が禁止されているからです。理由は至って簡単で、その昔、他の都市に依頼を受けに移動した冒険者が一緒に依頼を受けに移動した他の冒険者を殺害したからです。特に大したメリットもないにも関わらず、そのような事をしましたが、その当時はそれに気がつきませんでした。なぜか分かりますか?」
「え、なんでだろ?報酬目的?死んだら全部貰えるとか?」
「はい、貰えます。ですが、理由はそれではありません。その者はただの殺人鬼だったという事です。依頼の事故に見せかけて人殺しを楽しんでいた。その為、その人が活動拠点にしている都市から依頼を受けに外に出るときは、1人、あるいは2人以上ならパーティーを組むことが義務というルールがあります」
「ふーん、でもそういう人ってパーティーに入っても一緒じゃないの?」
「パーティーの仲間殺しは大罪でほとんどの場合、極刑、つまり死刑なんです。例えそれが故意に行なったものではないとしても。それにパーティーを組む時は申請を出さなければならないので、ギルドの受付と顔を合わせることになります。受付は人を見る目がありますので、危険人物にはパーティーを組む権限を与える事はありません。100%ではありませんが、大幅に減少することは間違いないはずです」
「……、よくわからないけど、とりあえず、身を守る為の措置なんだね?」
「ふふ、その通りです」
「そっか。でもまぁ、ルースちゃんも色々大変そうだから、パーティー編成はいいや。またあとで合流しよ。遊びに行くには問題ないんだよね?」
「はい。それなら問題はないかと。ではまた後日、合流ということで」
「うん!」
お疲れ様です。
洋梨です。
関わる事を禁ずると書かれているネイチャルエデンを讃えるお祭りとは。
それはそうと、食レポで字数を稼ぐ荒技を用いました。
最近思うのは、テレビの食レポを見ていたら大体「おいしい〜!」で終わっているという事です。どういう風に美味しいのか言った方が良いのではないかと近頃思います。人の好みは同じではないので。
パーティーの件についてですが、例えば日を変えて別々に他の都市は行った冒険者達が、他の都市で合流して依頼を受ける事は可能ではないのかと思いますが、まぁ、可能です。はい。しかしこういうのは、「そんな事をしたら大罪ですよ」と知らしめる事に意味があります。
最後に一つ、ゴスロリこそ至高!
よろしくお願いします。




