第25話 どんな服がお好みですか
それからまた数日が経った。ルースちゃんからの音沙汰は無い。しかし、ガイドさんはこの数日の間に帰ってきた。お祭りや依頼のことを伝えると、「では、ルースさんを誘ってから行きましょうか」と言われた。
そう言われた翌日に私は王宮に行ってみることにした。しかし、いざ入ろうとすると門前の全身に鎧を纏った衛兵に止められてしまった。
「貴様、何堂々と入ろうとしている。何者だ?」
そっか。まずは自己紹介しないとだよね。
「ルースちゃんの友達のエイン・アリスです!お邪魔します!」
そう言って私はまた中に入ろうとする。
「待て、なぜまた何勝手に入ろうとしているんだ」
「え、ルースちゃんに会おうと思って」
「怪しい奴を入れるわけがないだろう。帰れ」
「んな!いいじゃないですか!ケチ!!」
「ケチでもなんでも結構だが、貴様を入れるわけにはいかん」
しまった。こんなところで止められるなんて考えてもみなかった。そういえばルースちゃんは偉い人だな。そう考えると、こういう仕組みも当然なのか。うーん、どうしたものか。そうだ、いいこと考えた。
「ルースちゃんをここに呼び出してください!」
「出来るわけがないだろう。たわけが」
「ダメかぁ……、どうしよう……」
私が悩んでいる上の方から笑い声が聞こえる。その笑い声の主は私に話しかけてきた。門の上に登って私たちを見下ろしている。結構高い門だけど、顔はよく見えた。
「よおー、ルース様になんの用だ?お嬢さん?」
金色の髪に人相の悪い面。そして嫌味ったらしい笑みを浮かべている。格好は衛兵の人と同じ甲冑を身に纏っているが、衛兵の人みたいに頭までではなく、頭は丸出しだ。着崩すな。ちゃんと装備しろ!
「'ハイゼル'殿!!また貴方はそんなところに登られて!!!早く降りて下さい!!!」
「えー、やだよ。俺はここから『ならず者』を排除する!!」
ハイゼルと呼ばれた人は私に向かって何か飛ばしてきた。私はそれを避ける。地面に刺さった何かを確認したら、矢だった。
え?矢?
「ほらほら!!さっさと死にな!!!」
その後、何本も矢が飛んでくる。私はそれを全て躱した。攻撃が止んだ隙を見て、剣を構える。
この剣はガイドさんのお土産だ。今までの訓練やガイドさんと一緒に行った依頼の時は貸し出し用の剣を使ってたけど、この剣は私専用の剣だ。形としては"エストック"というものらしい。私はよく知らない。ガイドさんから最初にもらった剣と形はあまり変わらないものの、ちょっと小さくなった気もする。が、不思議としっくりきている。流石はガイドさんだ。スケベなだけはある。
「付与・風」
私は剣に風を纏わす。私は風系統の魔法と1番相性がいい。
「衛兵に歯向かうとは……、死罪だぞ?」
「歯向かってませんよ。意味もなく死にたくないだけです」
「あー!!もう!!バイゼル殿!!!無茶はお辞め下さい!!!貴様も剣をしまえ!!!非礼なら私が詫びる!!!頼む!!!」
バイゼルとかいう奴が、また弓を構える。
「'イーフィ'、不審者を片付けるのが、衛兵のお仕事だぜ」
「あの人が矢をこっちに向けてくる限り、私は剣を収められない。悪いのはあっち」
「双方鎮まりなさい!!!!」
私が剣を構えた瞬間に、大きな怒号が聞こえる。その怒号は私の身体を痺れさせて動かなくさせた。何らかの魔力が纏われていたかいなかったかは、ちょっと分からないけど、それでも身体が動けなくなったのは事実だ。それはバイゼルも一緒だった。
「誠に申し訳ありません、エイン様。お噂は予々聴かせて頂いております。身内の粗相をどうぞお許し下さい」
綺麗なお姉さんが片膝をついて、腕を胸に当てながら頭を下げてきた。甲冑はバイゼルと同じように頭だけ外していたが、それは、まぁ、別にいい。そしてこの時には、私の身体も支障なく動くようになっていた。
「嫌です。なんで友達に会いにきただけで殺されかけるんですか」
「すみません。しかしながら、王たちを御守りする。それが我ら衛兵の務めで御座います。その手段に殺しが入ってしまっていても、それは逃れられぬ理故、どうかご理解して頂きたい」
お姉さんはまだ胸を手に当てたまま片膝をついている。
「こちらこそ、すみません。ちょっとカッとなっちゃって……ごめんなさい……」
「立腹される事はご尤もで御座います。すぐに出迎えることの出来なんだ私の落ち度です。全ての責任はこの私にあります。どうか、他の兵についてのことはお許しください」
「あ、あぁ、えぇっと……、その……結局ルースちゃんには会えないんですか?」
色々とややこしい事を言われたような気もするけど、結局1番気になることはそれだ。ルースちゃんに会えないのならここでこうしているのも無意味な時間だ。だから、早くその答えが欲しい。
「ルース様は今、合議の最中故、お話は出来ないかと」
「そうなんだ……、うーん。じゃあルースちゃんに伝言とかは出来ないですか?」
「私達のような者は、余程の事がない限りは王族と声を交わすことすら憚られますので、すみませんがお受け致しかねます」
「だったら参加するか?会議」
「……!!おかえりなさいませ!!ルイン様!!!」
その時ルインさんが私の後ろから現れた。衛兵の人たちは皆んな片膝をつけて敬礼する。バイゼルさえも上から降りてきて敬礼した。そんな偉いルインさんが私の頭にポンと手を置いてきたので、私はそれをパシッと払った。
いきなり女の子の頭を触るなんてこのスケベが。
それはそうと、何でルインさんはここにいるのだろうか?気になる。
「ルインさん、なんでここに?」
「あぁ、ギルドに用があってな。仮面を借りてきたんだ」
「仮面?」
そう言ってルインさんは変な仮面を幾つか見せてくれた。これらの仮面はおそらく、私が買った仮面と同じところに置いていたやつだ。
「これを被ってパーティみたいにするんだ。食事も出るし、出てみるか?」
「逆に聞きますけど、出ていいんですか?大事な会議なのでは?」
「まぁ、実はおまえのことに興味あるやつが多くてな。出ても問題はないだろ。多分」
「えぇ……、テキトーすぎる。本当に王族?」
「おい、口を慎めゴミムシが……」
バイゼルがドスの効いた声で威嚇してきた。人相も元の悪さからさらに悪くなっている。私は怖くなってルインさんの後ろに隠れた。
「いい。バイゼル、こいつには大恩がある。それにこいつの礼儀のなさは気にしてねぇ。いいんだ」
「ルイン様がそうおっしゃるのであれば」
バイゼルが大人しくいう事を聞いている。ルインさんってすごい人なんだ。
「ですがルイン様、仮面で顔を隠せても衣服がパーティ用ではないため、浮いてしまわれるのではないかと」
「その辺はおまえがなんとかしてくれ。余物の服くらいあるだろ?'ミーシェイ'のセンスに任せる」
「御意のままに。では、エイン様ついてきてください」
ミーシェイさんは歩き出した。私はそれについていく。
「本当に参加してもいいんですか?ルインさんってテキトーにしてる感じありませんか?」
「それが彼の良いところです。実は次期王に彼を推しているほど、私は彼の人柄は良いと思っております」
「ふーん、そうなんですね」
「……、エイン様は彼と親しげでいらっしゃいますね。一市民でしかない貴方とも交流出来る。彼ら兄弟妹は素晴らしい方々です」
随分慕われてるんだ。いい人たちなんだな、やっぱり。
「さて、エイン様、どのような衣装がお好みでしょうか?ふわふわのロリータ系でしょうか?それとも黒系のシックな感じでしょうか?それとも両方とも合わせたいわゆるゴスロリ系でしょうか?」
ロリータ?ゴスロリ?よく分からないけど、ミーシェイさんと共に来た部屋には色々な服が飾られている。とても可愛らしいデザインで、目を惹かれる。
「さぁ、お好きなものをお選び下さい」
お疲れ様です。
洋梨です。
更新が日に日に遅くなって、読んでくれている方には申し訳ないです。
展開に悩み中です。
ちなみにロリータ、ゴスロリ系の服はミーシェイの好みです。なぜミーシェイの好みの服があるかというと、ルースに似合う服を用意しろとの命を受けた時に、それらを買ってきたからです。




