第24話 ハッピーエンドは素晴らしい
ガイドさんが再び出て行った日の翌朝、私はすっきり目覚めることができた。その理由は、他でもない。あの本だ。
「よかった……、ハッピーエンドっていいな。2回目も読みたくなって早起きしちゃった……」
そう、ドキドキビーチサバイバルはハッピーエンドを迎えたのだ。スケベシーンは期待よりも薄かったし、5,6ページくらいしかなかったけど、それでも良い作品だ。ルースちゃんが勧める理由もわかる。話し合いたい。
話し合えると思い、ルンルンな気持ちで訓練場に行くとルースちゃんはいなかった。仕方がないので、1人で訓練をする。結果、昼までにルースちゃんが来ることはなく、私は今お昼を食べている。アレッタさん達の前で。
「もうそろそろ依頼もこなせるかと思うんです!」
私は依頼をせがんでいるのだ。何故なら、ここ1ヶ月はガイドさんとの同行でしか、依頼受注を認めてくれてない。それは今日も同じだ。
「とは言ってもね。1ヶ月前に死にかけた人にほいほい新しい依頼を渡すのはちょっとねぇ……」
「ええんやないか?死にかけた言うても、相手は鬼人らしいし、生きて帰ってきた時点で優秀やろ?」
「さすがミドルさん!!話が分かる!!」
「でも、こんなちんちくりんの小娘がまた死にかけたりしたら、この子の安否の他にも、評判とか信頼とかの心配事が出てくるのよ?」
「驚くほど自然に出て来る罵倒」
「ちんちくりんいうたかて、齢16なんやし、大人の部類やろ?」
「そしてそれを否定してくれないお兄さん、なんだ?ここは魔境か?」
「齢16なんて赤ちゃんじゃない。何が大人なの?」
「それは俺らエルフの年齢やろ?人間では大人扱いされてもおかしないで?」
ダメだ。完全に無視されてる。
「ダメです。そもそもエインちゃんは子どもだろうが大人だろうが、弱いのでダメ」
「弱い言うけど、ルースの話やと並の冒険者より少し弱いくらいやったやろ?」
「バカ!並の冒険家より弱かったら尚のことでしょ!!」
「……、それもそうか。悪い、エイン。あかんわ」
「そんなぁ!危険じゃないやつでいいんです!ほら!葡萄掘りみたいな!」
「この時期はそんなにその手のは……、やっぱりないかな」
「もうすぐ冬になるからなぁ。この辺ではないわ。逆に魔物討伐系が多なってくるんや」
「それで簡単なのは?!」
「ないな。魔物討伐なんて全て命懸けや。簡単なもんなんてない」
「う、ごめんなさい……」
ミドルさんの目が怖い。私は少し身体をのけぞらせてしまう。だって怖いんだもん。
「まぁまぁ、それじゃあさ。他の都市に行ってみる?他の都市ならその手の仕事あるかもだしね」
「他の都市?古代都市や自然都市って事ですか?」
「そ。まぁ、ここ英雄都市でも他のギルドに行けば、芋掘りみたいな仕事もあるだろうけど、折角なら他のとこも見ておいた方が後々にはいいかな」
「でも、ガイドさんが帰ってこないことには……ガイドさんと旅してるわけですし……」
「あぁ、そうよね。今あいつどこにいるんだっけ?」
「古代都市やろ?確か鬼の社に用があるとかなんとか」
「あぁ〜……!鬼の社か!!」
「?鬼の社ってなんですか?」
「んー、一言で言うと封印の祠ね」
「封印の祠!伝説のなんとかが出てくる感じですか?!」
流石浪漫の都市だ!ワクワクする!
「あー、やー、うーん……、あれはちょっとねぇ……」
「?何かあるんですか?」
「うーん……、何かあるといえばある。でも、あれは人が関わっていいものじゃない。ちょっとした情報は勇者伝記にも書いてあったはず」
確かに勇者様伝記には【関わる事に注意を要するもの】がいくつか出てくる。その中でもとりわけ【関わることを禁ずる】とまで書かれている物はたった2つだけだ。もし関わった場合の命は保証しないとも。
1つ目は自然都市に古くから称え敬われている、守護者・'ネイチャルエデン'。自然都市のどこかにある迷宮に存在するらしいけど、詳しくは書かれてなかった。
2つ目は、今話に出てきた今の古代都市、昔は魔の濃い大地・"マーカーザード"と呼ばれていた地に眠る、破滅の王・'ドラドロイ'だ。勇者様はドラドロイをマーカーザードの深くに封印したと書かれている。
「……、その鬼の社はドラドロイが封印されているんですか?」
「まぁ、そういうことになるかなぁ……」
「ということは!!ガイドさんはドラドロイを見に行ってるって事ですか?!」
ガイドさんはその伝説のなんとかに会っているって事なのかな?!!?話聞きたいな!!
「そ、そうなんだけど?あのね、エインちゃん、話聞いてた?関わっていいものじゃないのよ?」
「わかってます!!」
「全然分かってる目じゃない……!本当にダメなんだってば!!エインちゃん!?」
「まぁまぁ、勇者を目指すんならそのうち関わることもあるやろうけどな。今はその時やないな。我慢や、エイン。今の時期なら自然都市でお祭りが始まる頃やし、そういった各地の雰囲気を味わってからでも遅ないんちゃうか?」
「お祭り!!楽しそう!!そっちも行きたいなぁ……!」
「も、じゃない!も、じゃ!!……、じゃあとりあえず自然都市の資料でも渡しておくから、行く前に見ておきなさいね。ガイドも、まぁ、1週間もすれば帰ってくるでしょ」
アレッタさんは後ろに積み立てられている紙の資料の中から、数枚だけ「これかな?」と言いながら引っ張り出した。それを私にくれる。
「あ、でもそれだと待ってる間にお祭りって終わりませんか?」
「大丈夫やろ。お祭りは1ヶ月はやってるし、ここから自然都市までもそこまで遠くないからな。貸し出しの乗り物もあるし、それ乗っていけば一瞬や!」
「乗り物?そんなのあるんだ。でも貸し出しならお金取るんですか?」
「お、鋭いな。当たりや。金は取る」
「えぇ……、お友達料金にはならないですか?」
「あはは、お友達料金って。そんなことにはなりません。ギリギリの運営してるからね。これ以上安くしちゃうとその運営部署が無くなっちゃうかもだし」
「そうなんだ。大変ですね」
「そう、大変。ま、とりあえずさ。自然都市はすぐに行けるから、行ってみても良いとは私も思うな。せっかくのお祭りだし、ルースも誘えばいいんじゃない?」
「!そうですね!誘ってみます!」
その時、鞄が揺れる大きな音を鳴らしながらルースちゃんが走ってきた。だいぶ、急いでいる様子だ。
「エイ―ン!!!よかった!ここにいたんですね!」
「どうしたの?そんなに慌てて。でもちょうどよかった、今話ししててね」
「すみませんエイン、私はすぐに戻らなければならなくて。その話はまた後日で良いですか?」
「え、あぁ、うん。分かった」
「ありがとうございます!すみません、今日はこれを返しにきただけなんです。昨日は会う約束していましたし、かと言ってエインと鍛錬する時間も取れないほど忙しくて……」
ルースちゃんは、結構無理やりな感じで鞄の中から仮面を取り出し、渡してきた。いつか、ルースちゃんに預けていた青色の楕円形の石をおでこに嵌めた仮面だ。
私はそれを受け取る。
「わざわざ?……ありがとう!!にひ!」
「……、此方こそ。では、また後日に!!さようなら」
ルースちゃんはそう言ってどこかに行ってしまった。
「此方こそってどういう意味だろ?」
「……、あんなに忙しそうにするルースは初めて見るかな」
「せやなぁ。なんかあったんか?」
「昨日、お母様の件が急に決まったとかなんとか。それじゃないですか?」
「王妃様の?……、あなたそれ誰かに言った?」
「?いえ、言ってないです」
「それ絶対他の人に言っちゃダメよ。絶対、言ったらボコボコにするから」
「野蛮か。でもまぁ、それくらい内緒にしなさいと言うことや。友達のしがらみを他人に教えるのは良くないからな」
「……そうですね。じゃあ、また鍛錬してきます!」
「はーい、いってらっしゃい」
お疲れ様です。
洋梨です。
最近、最終的な構想(要は結末)を考えているときに、これハピエンにならんやろと思ってましたが、ハピエン考えつきました。
ちなみに道中のことは何も考えてません。よろしくお願いします。
各都市の設定、特に街の感じ?は図示した方が良い、というか私の技量では説明を確実には出来ませんので、Xの方に上陸した都市の事を図示して、アップしようと考えています。
よろしくお願いします。




