第23話 ドキドキ本
一旦宿に戻ってから、お風呂屋さんに行き、そしてまたすぐに宿へ戻ってきた。今日は昼間も何もしていないし、少し日程をずらして休養の日としたのだ。
「よし、今日は読めるぞ」
ルースちゃんのお勧め本。ドキドキビーチサバイバルと書いてある。察するにエッチな本だが、私はその手の本は読んだことがないので、楽しみだ。
どこで読もうかな。そうだ、ベッドで寝転びながら読もう。
「ドキドキビーチサバイバル、おぉ、絵本とは思えないほど細かに場面が分けられてる」
初めのページでまず圧倒される。今まで絵本か伝記とかそういうものしか読んでいなかったが、世の中にはこんな本があるのかと思うほどに、分かりやすい場面が事細かに描かれている。それも絵でだ。
『この日を最後にしよう』
『いや。私はあなたとまだいたいの……』
『分かるだろ。ボクは……、もう君を愛したくないし、愛されたくないんだ……』
『私は……愛したいし、愛されたい。あなたがこの戦いで命を落としたとしても……、私たちは愛し合っていったって……、そう思って生きていきたいの……』
『……これ以上辛い思いはさせたくない。これ以上愛してしまったら、これ以上愛されてしまったら……、君の人生に重荷を残してしまう……』
『でも、あなたの生きる理由になる。……絶対帰ってきて欲しいもの』
『リルシェ』
『サリーナ』
キスした。このサリーナとリルシェという人はキスした。キスしたのはいいよ。いいんだけど。え、思ってたのと違うんだけど。ビーチサバイバルだから、なんか岩陰かなんかでスケベするのかなと思ってたけど。そんな雰囲気の話じゃないや。背景に描かれている森がなんか、燃え盛っているし。次のページ見てみよ。
『遡ること1年前』
遡っちゃった。
その後読んでみたこの作品を少しまとめてみる。
サリーナは機械人間でリルシェは普通の人間だ。そして、彼女たちは禁止されていた機械人間とただの人間の恋に堕ちてしまう。それを隠し生きてきたが、ある日何故かバレた。彼女たちはその罪を問われたが、あることを条件に特別に認められることになる。それはサリーナの戦争への参加だ。サリーナは機械人間の中でもかなり高度な技術を使われている戦闘用アンドロイドだった。それからというもの、様々な戦争に赴いては、傷つきながら帰って来る鋼の戦士という扱いだった。そして、ボロボロになる頃には修理してくれる人はいなくなっていた。新技術が開発され、サリーナは旧型のポンコツだからだ。サリーナはそれも致し方ないと諦め、受け入れていた。そしてある日、ある島での戦いに身を投じることに決まる。それがリルシェの出身である島だった。そこの島民は、国が行う提案に反対し続け、国の軍門に降ろうとはしなかった。そして、説得が無意味だと悟った国はその島民を根絶やしにすることにした。リルシェは既に国の方へ身分を移し、殺されるようなことはない身分だったが、運が悪い事に帰省をしていた。国の作戦は島民を残らず始末する事。いちいち確認する事なく、島にいる人間を皆殺しにする作戦だった。サリーナとリルシェは、そんな島でとある晩に話をし、別れ話を切り出した。それは何故か、サリーナが命を賭け、この作戦に投じられている国の軍を滅ぼそうと考えていたからだ。殲滅するだけの作戦だった為、サリーナよりも以前に使用されていた余物の機械兵での作戦だった。それ故に自分で判断などせず、人間は見つけ次第殺すだろう。つまり、リルシェもその凶弾に撃たれることになる。サリーナはそれを阻止するために、機械兵を命を賭して叩き潰すつもりだった。その決意を告白した後の場面が、冒頭のキスの場面だ。
重すぎるよぉ……もっと気楽に読みたかった……でもまだ続きはあるよね。後5分の1くらいしかないけど。
私は続きを読み始めた。
『初めてだね。こうやってキスするのは、嬉しい』
『私もだよ、リルシェ。私は戦闘用アンドロイドだ。家庭用とも企業用とも異なる。こんな機能はなかったはずなのにね。こんなことになるなら、こんなに悲しいなら……こんな機能、欲しくなかったよ……、胸が苦しいよ……リルシェ』
『それが、人でしょう。人間でも機械人間でも一緒よ。人という生物は皆、心があるの……、サリーナ、もう一度顔を良く見せて』
『……、……、んはぁ、リルシェ、まだボクは君といたいよ』
『私も』
『……、この続きをしたい……、ボクは……君と愛し合いたい』
『えぇ、私もよ』
おぉ!!!!!!いよいよ次のページから!!!待ちに待った!!!!!ドキドキ!!!!!!
「ただいま〜」
「あびゃあああああ!!!!!!!」
「え?なに?どうしたんですか?」
「ガ、ガイドさん?!え?!なんで?!しばらくは戻らないって!!?」
ガイドさんが突如、ドアを開けて入ってきた。私は咄嗟に起き上がり、そして本を自分の後ろに隠す。
「あぁ、それで驚いたんですね。忘れ物がありまして。それを持ったらまた出掛けてきます」
「へ、へぇ」
大丈夫、バレてない。
「ところで今、なにを隠したんですか?」
!!バレてる?!
「な、何も、隠して、ませんよ?」
「ん?隠してますね。見せなさい」
「嫌です!!!」
「見せなさい」
「いーやーでーすー!!!」
ガイドさんと私の攻防は、一瞬で勝負がついた。はい、お察しの通り、私の負けです。クソォ……ドスケベがぁ……
ガイドさんは私から奪った本をパラパラとめくって読んでいる。
「これは……、艶本ですね。何処でこのような本を……、はい」
ガイドさんは私に向かって本を差し出す。
「え、返してくれるんですか?」
それを私は瞬間的に受け取った。受け取るというよりかは奪い取ると言ったほうが良いほど、勢いは凄まじかったと自分でも思う。ガイドさんもそれに対して、思うところがあったのかデコピンしてきた。痛い。
「まぁ、私が持っていても意味ありませんし。それにしても、こういうのにも興味あったんですね」
デコピンされておそらく赤くなっているであろうところをガイドさんは優しく撫でている。
「……悪いですか?」
「いえ、良いことです。様々なものに興味を持つことは。ただまぁ、性癖まで明るみに出る危険性は考慮しないといけませんね!あはは!!」
「……!!!違います!!これ私の趣味というわけじゃあ!!」
「照れない照れない。とても良い本でした。好きなのも分かりますよ」
ガイドさんでもいい本って思うんだ。
「いいですね、純愛。素晴らしいです」
ガイドさんも純愛っていいと思うんだ。
「なんですかその目は?」
「え?!あ、いや。そういえば、何を取りに来たんですか?そんなに大事なもの?」
「あぁ、えっと……、確かこの辺にあったはずですが……」
ガイドさんは自分のベッドの近くを探し始める。ベッドの近くには机が置かれているが、物が乱雑に置かれていた。村にいた時の几帳面さはまるで機能していない。
「あったあった、ありました。これです。魔法の円盤です!」
「魔法の円盤?」
ガイドさんは大きな黒くて丸い板を出して来る。しかし、そうは言っても直径が30センチメートルくらいしかない。
「そうです!この円盤には特殊な能力がありまして!なんと!持っていると空が飛べるようになります!」
「え!!すごい!!!どうやって飛ぶんですか?!」
「では少しだけ見せてあげます」
そう言って、ガイドさんは円盤を真上に持ち上げた。ガイドさんはそのまま宙に浮く。飛んでいるというより、円盤にぶら下がっただけのように見える。
「どうですか?」
「え、それが飛ぶ方法ですか?」
「はい、ちなみに5メートルは飛べます」
高いのか高くないのか微妙なところだ。
「それって上に乗っちゃダメなんですか?」
最もな疑問のはずだ。そのやり方はどう考えても腕が痛くなって来る。すぐに限界が来る。それでは空を飛ぶ意味がない。
「実はスイッチがありまして。足で押すには些か難しいんです」
そう言った後、ガイドさんはゆっくりと床に降りた。円盤も浮くことをやめる。
「まぁ、使い所は限られますが便利ですよ」
「ふーん、あ、それも魔道具ってやつですか?」
「はい。魔道具に興味がお有りで?何かお土産に買って帰りましょうか?」
「いや、いいです。あ、ねぇ、今日ルースちゃんのお見舞いに行きました。そしたら、ルースちゃんが起きたので、もう心配はあまりないかなって。だから、私も行こうと思えばガイドさんに同行できますけど……、ついて行った方がいいですか?」
「いえ、今回は大丈夫です。しばらくルースさんの傍にいてあげてください。お友達なんですから。では、いってきます」
「はーい。いってらっしゃい」
お疲れ様です。
洋梨です。
エロ本を読む系主人公です。
よろしくお願いします。




