第22話 鬼人vsルース
私はその後、本当に豪華なご馳走を頂き、ルースちゃんの部屋まで戻ってきた。
「それでさ、ガイドさん泣いて帰ってきたの。『今日も振られましたぁ』って」
「あら、意外と恋は難しいのですね」
「そうみたい。でも1回誘い方見たことあるけど、あれで誘われる人いないんじゃないかな?とも思うよ」
「ふふ、それは困りましたね。手ほどきが必要なのでは?」
「いーや、手は貸さない。というか私もその辺はあんまりだし。……、ね、ルースちゃん。ところでなんだけどさ、私が倒れた後、何があったか聞いていい?」
「……、分かりました。私も必死であまりくっきり覚えていませんが、伝えられるように頑張ります!」
「お願いします!」
……………
ルース回想
※ここからは後はルース目線の話です。
エインが左腕を斬られた後、恐怖に飲まれた私を叱りつけ、そして、その場で倒れてしまった。
「エイン!!!エイン!!!?しっかりしてください!!!!女神の治癒知識!!」
血は止まり、傷も癒した。これで死ぬ事はない。でも、私は切れた腕を繋ぐ術は持っていない。私では治してあげられない。悔しい。これほど、回復魔法の限界に悔しさを覚えたことは今までなかった。
「はははははぁ!!!!!傷治してどうすんだよ?!!!今から死ぬってのによぉ!!!!!」
下卑た笑いで私たちを見下している鬼人は、少し遠くにいる。こちらへ歩いてくる素振りは見せない。高笑いをあげてただただ、こちらを見下し、勝ち誇った顔をしている。
「……、死なせない……!」
私はここで立ち上がる。身体の震えは止まらない。しかしそれでも、立ち上がらなければ、エインは救えない。
そうだ、死なせるものか……!
「あ?はははははぁ!!!!オレに歯向かう気か?!!!雑魚のくせによぉ〜!!!!せっかく逃がしてやろうってのに!!!!!そいつは無駄死にだなぁ!!!!!はっはぁ!!!!」
そうだ。私は弱い。ただただ、弱い。鬼人を前にするだけで、こんなにも足がすくむ。身体が震える。ずっと、ずっと恐怖が消えない。鬼人の高笑いが林のどこからでも聞こえる気がするほど、相手の存在がこんなにも大きく感じる。
本当は逃げたい。エインの指示に従いたい。でも、エインの意志を尊重して、私が逃げて、生き延びて……、そうなったら私は……、一体どうやって生きていけば良いのか分からない。
エインを助けるんだ。エインを生きて返すんだ。エインがしてくれたように、私もエインの為に命を賭けるんだ。
私は一度だけ大きく息を吸った後、ゆっくりと吐いた。
エイン、我儘を許してください。私は、私は……、あなたの意志に逆らい、あなたと共に生きてかえります!!!
「鬼人、私に権利を移して下さい……」
「あ?権利?」
「誰を生かすか、それを決める権利を私に下さい……!!」
「あ?……、おぅおぅ、いいぜ。決めな」
「ありがとう……ございます……では……、この、私の下で眠っているエインを生かす、そして、私が命を賭けます……!」
「はははははぁ!!!!どうかしてるぜおまえは!!!!」
鬼人が刀を振り回している。そして大きな構えをとった。
「鷹鎌!!!!!」
鬼人はそう叫んで剣を真横に振り、斬撃を飛ばしてきた。私はそれを、受け止め、剣を滑らせて軌道を変える。斬撃は後ろへ飛んでいき、木々を薙ぎ倒していくが、エインと私には当たらなかった。
「ひゅぅ……!いいぜいいぜぇ……!!!もっと楽しませてくれよ!!!!」
鬼人はこっちに突進してきている。ここで迎え討つとエインにこちらの振動が波及する恐れがある。いくら治癒したからとて、損傷は大きい。これ以上の身体的ダメージは避けなければいけない。そう考え、私は全速力で鬼人に向かい走る。
「鳶玉・柘榴!!!!」
鬼人が互いの間合いに入る直前、空に向かい斬撃を飛ばした。
「王家三閃!!!!」
私は隙があると思い、王家三閃にて両手と首を斬りつけた。今度は斬り飛ばそうとは思わず、そのまま鬼人の後ろまで飛び出した勢いのまま、移動した。
そして、次の技を出す為の構えを取ろうとした時、斬撃が突如として上から降り注いだ。その斬撃を私は全て捌けず、右肩を負傷する。
「はははははぁ!!!!詰めが甘いなぁ!!!!はっはぁ!!!!!」
私の王家三閃では対してダメージを与えられない。それに一から十ある王家閃技の中で、私が今確実に使える最高閃技が王家三閃だ。
それがどうした、ルース。使えないのなら、今使える技で勝とうとしろ……!!エインに教わった事を実践しろ……!諦めないことは!!カッコいいんだって!!!証明しろ!!!!
「付与・火」
「ん〜?はははははぁ!!!いい目になってきたなぁ……!!だが!!!!まだ足りねぇよ!!!!!」
今度は私から鬼人に向かって走り出した。鬼人は私目掛けて斬撃を数多く飛ばしてきたが、私はそれを全て流した。
そして鬼人の前で軽く跳び、剣を全力で振り抜く構えをする。それを見た鬼人は受け止める構えだ。
「燃焼斬!!!!!!」
私は剣に纏っていた炎を一気に燃え上がらせ、剣を振った。それを鬼人は笑いながら受け止め、ただ力尽くで弾き飛ばしてきた。
「くっ!!!!」
「気ぃ抜いてっと痛い目見るぜ!!!!!」
鬼人は私の腹部を殴り、私を吹き飛ばしてきた。私は地面をゴロゴロ転がり、地面に横たわる。すぐに立ちあがろうとしたが、足がよろめき、立ち上がれない。しかし、片膝をついてでも、体勢は前を向いた。
鬼人の一撃は重い。これ以上は受けられない。
「……、さっきとは打って変わっていい目になってきたなぁ……、だが足りねぇ。こうすりゃ良いのか?」
そう言って鬼人はエインに向かって斬撃を飛ばした。直撃こそしなかったものの、エインに斬撃の余波を受け、吹き飛ばされ、ゴロゴロ転がる。
「エイン!!!!!貴様ぁああああ!!!!!」
「はははははぁ!!!そうだ!!!怒れ!!!殺意を持て!!!!オレを殺そうとしろ!!!!!それをオレが叩き潰し!!!!オレは高みへいく!!!!!はっはぁ!!!!」
甘いことを考えていた。こいつは約束を守る魔族なのだと、勝手に解釈してしまっていたようだ。自分で言ったのではないか。
甘いことを考えるな。エインを生かして返すなら、こいつはすぐに倒さないといけないんだ!!!!
「王家五閃!!!!!」
私はその場から最大速度で飛び出し、首、両手首、両足首を斬りつけた。しかし、傷は浅く鬼人は私を捕まえようとして手を伸ばしてくる。そんな鬼人の手に剣を突き刺した。すぐさま抜こうとしたが、刺さった剣は相手の筋肉に止められ抜けない。私はその場から動く前に右肩を刺された。元々、斬撃で負傷していた肩に再度、深傷を負わされる。
それがどうした。
私は剣を持ったまま、全力で鬼人の腹部を蹴る。流石の鬼人も少しは吹っ飛び、剣は鬼人の手から抜け、私は一旦鬼人との距離を空けることが出来た。
「はははははぁ!!!!楽しぃなぁ!!!!はっはぁ!!!!!」
その下卑た笑い顔が凄まじく憎い。怒りで我を忘れたからか、それとも戦い始めて時間が経ったからかは、分からない。でも恐れが低減したおかげで、今はこの技が使えそうだ。
「鬼神傀儡……!!!」
「はははははぁ!!!!!いいぜいいぜぇ!!!!もっと楽しませろぉ!!!!!鳶玉・檸檬!!!!!!」
渦を巻いた斬撃が飛んできた。私はそれを避ける。その避けた先で見たのは私目掛けて刀を横に振ろうとしている鬼人の姿だ。
「鷹鎌!!!!!」
鬼人は大きくて速い斬撃を飛ばしてきた。
「鳶玉・檸檬!!!!!」
私は鬼人の技を真似て、斬撃を飛ばす。こちらの方が威力は上で、鬼人の肌が切れたように見えた。
「王家五閃!!!!!!」
この状態でなら確実に決まると思った。しかし、そう甘くはなかったらしい。鬼人は首のところに剣を構えて、私の技を受け止めた。
「そう何度も同じ技を食らうわけねーだろうが!!!!はははははぁ!!!!!」
私は足を掴まれ、地面に全力で叩き落とされる。しかし、鬼人は足を離さず、何回も何回も私を地面に叩きつけてから、遠くの方へぶん投げた。その遠くの方には木があり、私はそこにぶつかる。そして倒れた。その倒れた、ところに丁度、エインがいた。
「はっはぁ!!!!楽しかったぜぇ……!!!おいぃ……これでお終いにしてやるよぉ……!!」
鬼人がこちらへ歩いてくる。それもゆっくりと。相手も相当な深傷のようだ。あんなに戦いを楽しんでいる鬼人が「お終いにしてやる」と言ったということは、そういう事だろう。おそらく鬼人の真似して放った技が効いたのだと思う。
エイン、すみません……、勝てそうにありません……、共に生きて帰りかったです……、私は……ここで死ぬやもしれませんが……、貴方だけは、必ず帰します。
「王宮防御術……」
私はエインに私が出来る最高の防御魔法をかけた。これで並の魔物であれば兄様たちが駆けつけてくれるまで耐えてくれるだろう。並の魔物であればだ。だから、私は……、この鬼人を倒す必要がある。命を落としてでもだ。
「……、いい目をしてるなぁ……、はっはぁ!!!!」
これ以上の無理は身体が壊れるだろう。だからこそ、全身全霊でやるしかない。王家閃技の中で、最も単純で最も軌道が読みやすく、閃技全ての基礎となる技。この技に全てを賭ける。私はこの技を習ってから、雨が降ろうと熱が出ようと鍛錬を欠かしたことがない。だから、最も身体に染み付いている。成功するにしてもしないにしても、賭けるにはこれしかない。
「エイン、口上をお借りします……足に力を込めて、剣は後ろへ……」
私は全速力で鬼人に向かい飛び出した。
「おまえが狙う場所なんて分かってんだよぉ!!!!」
鬼人は首のところに刀を持ってきて受け止める構えだ。しかし、関係ない。他の閃技の技は同時に斬りつけるという性質上、如何しても一撃の技の威力が減少する。しかし、この閃技は1度しか剣を振らない。だからこそ、最も単純であるが故に最も重く、最も軌道が読まれやすいが故に最も鋭い。当たりさえすれば王家閃技の中で最大の威力を有する技。
「王家一閃!!!!!!!」
私は鬼人の刀を斬り砕き、そしてその勢い止めることなく首びから脇腹にかけて深く斬り込んだ。鬼人から大量の血が溢れ、鬼人はその場に倒れる。私も限界を迎え、その場で膝をついた。魔力ももう、全て使い切ってしまった。この後、ここに何が来ようと、私は抵抗も出来ずに殺されてしまうだろう。しかし、それで良い。
「はははははぁ……、まさかこんな小娘に……負けるとはなぁ……」
「……慢心、嫌な言葉です……」
「はっはぁ……、それは……誰に……向かって……言ってる?オレか…………?それ……とも……おまえか?」
「……、よく……喋りますね……」
鬼人はその後、何も発する事なくその生命の活動を終えた。
私も、もう動けない。何かがやって来ることは分かっている。それが兄様たちでないことも。ただ、それでも動けない。
「エイン!!?ルースさん?!!大丈夫ですか?!!」
そこに現れたのはガイド様だった。
「これは……そんな!!!エイン!!!?エイン!!!?あ、生きてる……、腕はないけど……、死にかけだけど……死にはしないでしょう……良かった……」
ガイド様は私のところまで来た。
「ルースさん、今傷を癒してあげますからね。もう大丈夫、安心してください。あなたのお兄様達ももうすぐ着きますから」
「……うぐ……、ひぐ……、よかったぁぁ……!エインがぁ……、助けてくれてぇ……でもぉ……、私は助けてあげられなくてぇ……、」
「よしよし、よく頑張りました。ありがとう、ルースさん」
ルース回想終了
※ルース目線はここまでです。
この後はエイン目線に戻ります。
……………
「はぁ、そんなことが」
「エイン、私にとってあなたは本物の勇者様です」
「え?なんで?」
「生きる希望をくれました。立ち向かう勇気をくれました。私だけだったなら、立ち向いも出来ず、無惨に殺されていたことでしょう。あなたがいてくれたから、私は今生きている。だから私にとってあなたが勇者様なのです」
そう言ってルースちゃんは私の頬に手を当ててきた。瞳がうるうるしている。
「エイン、本当にありがとう」
ルースちゃんはゆっくりと顔を近づけてくる。
これはもしや!キスする気なのでは?!頬も赤いし!!で、でもまぁ、別に?!悪い気ないし!!少しくらいなら!!あ……
息が口に当たる距離くらいまできた。これ以上の進むと後には引けない。ドキドキ。
「エイン、いいですか?」
「この直前で聞いてくる?いいよ……」
「では」
ドキドキ。
「悪い!急ぎの用なんだが!!」
その時ルインさんが部屋に入ってきた。私たちはまだキスはしていなかったが、顔はかなり近い。そして急に入ってきたからびっくりして顔を振ってしまった。私とルースちゃんは頭をぶつけて、痛みに悶える。
痛いぃ……!!
「……、ルース、すまない。今日の会議で今後の方針が決まったらしい。母上様のことだ」
「母様のこと、分かりました。今行きます。エイン、すみません。残念ですが……今日はここまでです」
「わかった、また明日ね」
「……、はい。また明日」
お疲れ様です。
洋梨です。
突如始まるGL。それを阻止する身内。王道展開です。
私の作品で出てくる技名なんですが、基本はその場のノリで出来ています。




