第20話 お見舞いが頼み事
私は身体が元のように動かせるようになるまで、1ヶ月くらいかかった。その間にルースちゃんの面会に行きたかったが、面会謝絶で断られてしまった。
身体が元のように動かせるからといっても、暇なので、芋葡萄畑のおじぃさんのところに行って話をしたり、基礎鍛錬をするという日課を永遠と繰り返している。ルースちゃんがいないので、基本的にはガイドさんが付き合ってくれているが、用事があるとの事で1人でやる事もある。
そんな1人で鍛錬をやっていたある日の夜、私はいつも通りに街中を走っていた。何かの気配を感じ、その場で止まって上を見上げると、建物の屋根の上にいつか見た十字に線の入った仮面をつけた人間が突っ立っていた。
「やあやあ、お久しぶりでございますね。エイン・アリス様」
「何か用?」
「あっはっは!相変わらず当たりが強くて大変素晴らしい。では、早速本題に移りますが、誠に勝手ながらあなたの事を調べさせてもらいました」
「調べた?」
「えぇ、興味ございまして」
「それで?何かあるの?」
「いえ、これといっては。ただただ、平々凡々な小娘ということしか」
「……、嫌味を言いにきたの?」
「あっはっは!まさにその通りでございます」
「なんなの?!帰って!!!」
「あっはっは!!!」
なんなんだこいつぅ!!!!
「それはさておき、1つあなたを観察していて思ったことがあります」
「何?」
「勇者の素質、あるいは勇者の才能とでも言いましょうか。この世に蔓延る冒険者の中でも、我々の脅威となり得るその資質を感じ取れたのは事実です。あなたのような平々凡々な小娘に、ね?」
「???」
何が言いたいのか分からない。勇者の素質?それがあるのなら嬉しいけど。
「つまり今ここで、弱いあなたを潰すなんて事も考えていたりしています。……が、私とてアレを相手にするほど馬鹿ではありません」
仮面の人は少し遠くの方を見ている。そこから禍々しい圧力を感じる。そこにいたのはガイドさんだった。明らかに関わるとヤバいというオーラだ。
「アレは間違いなく魔王の器になりうる逸材。それがこんな小娘と一緒にいる理由を知りたいところではありますね?」
「そんなのあっちに聞いてください。私は巻き込まれたんです」
「ですが、今は自分の意志でしょう?」
「それはまぁ……」
「とはいえ、ここであなたと長話をしている時間はありません。アレと対峙するには、今の私だと力の不足が過ぎる。また元気で会えるようお互い、強くありましょう」
仮面の人はそれを言った後にまた蝶々になってその場から消えた。
なんなんだろう、この技。やってみたい。
「エイン、無事ですか?」
ガイドさんが小走りでツカツカと、私の傍までやってくる。
「大丈夫です!特に何もありません!」
「なら良かったです。何やら嫌な気配を感じたもので」
「あぁ、でもなんか変な仮面をつけた人が話しかけてきましたよ。すぐに帰りましたけど」
「変な仮面?……、あ、それよりエイン。明日からしばらく私は少し遠くに行きます。あなたはここで修行でもしていてください。どうせ連れて行こうとしても、ルースさんと面会するまで動く気ないでしょう?」
「了解です!!」
やったぁ!!!久々に羽伸ばせる!!!とは言っても、いつも通り鍛錬するだけだし、変わり映えはしないかな。でもルースちゃんのお勧めと言ってたドキドキウンタラカンタラを見てみよう。ガイドさんの前では見れないし、いい機会だ。
「嬉しそうですね?」
「え?そんな事ないです。あー、寂しいなぁ」
「……、兎に角、無茶はしない事。依頼を受けに行っても良いですが、危険なのは避けて下さい。分かりましたか?」
「はーい」
……………
翌朝、私は鍛錬するために訓練場に来ていた。依頼を受ける気分ではないから、鍛錬に励む事にした。今日は中級魔法の本を借りてきたので、ちょっとだけ試してみようと思う。初級の本は返したけど、ドキドキビーチサバイバルは今日の夜に読む為に返していない。
さて、中級の本には何が書いてあるかな。
「うわぁ、なんかすごい複雑」
私は本をパタンと閉じた。何も見ていない。そうだ私は何も見なかった。そういう事にする。
数秒経ってから、また本を開いた。複雑すぎる魔法の仕組みが色々書かれている。魔法は組み合わせにより様々変化するから、一気に難易度は上がると父に聞いたことがあるけど、あまりに上がりすぎている。
これ本当に中級?上級の間違いじゃない?
「わぁ、中級だ。表題にデカデカと書いてる。なんかちっちゃく上級並みだよ、とか書いてないかな?」
「書いてあるわけねーだろ、アホ」
急に誰かが話しかけてきた。髪が赤くて、瞳も赤い。背はそんなに高くないけど吊り目だ。そうだ。この人、ルースちゃんと初めて会った時に、ルースちゃんと一緒にいた人だ。
ということは、ルースちゃんのお兄ちゃんだ。下の兄かな?それとも上かな?どっちだろ?まぁ、それはいいや。
「アホってなんですか?私は頭良いですけど?」
「……、いや、その発言がもうアホだろ……」
「というか!なんですか!?そんなにバカにするなら!お話ししてあげませんよ!」
「ごめん、悪かった。実はちょっと、頼みがあってな」
「頼み?私にですか?王族なら頼む人なんて幾らでもいそうなのに」
「え?おまえ、王族って分かってたのにそんな態度なのか?てっきり俺のことは変なやつと認識して、話してると思ってたぜ」
「変なやつは変なやつだと思いますけど……」
なんかこの人の話し方、俗物みたいだな。本当に王族なのかな?
「……、いやまぁ、それは良い。特に気にすることはねぇ。俺ら兄弟妹にはな。他の王族には気をつけたほうがいいがな。待て待て、そんな話をしにきたわけじゃねぇ。さっきも言ったが頼み事がある」
「なんですか?」
「一向にルースが目覚める気配がない。頼む、友達なんだろ?傍に居てやってくれ」
ルースちゃんのお兄ちゃんと思われる人は私に対して頭を下げた。しかも、額を土につけてだ。周りの人がざわざわとし始める。
「俺たちじゃあ、ルースの傷は癒せねぇのは分かったんだ……でも友達のおまえなら出来る可能性がある!!だからどうか頼む!!」
「え、えっと、顔!顔上げてください!要はルースちゃんのお見舞いにいけるんですね?!それなら逆に嬉しいです!!こちらこそお願いします!!!」
「……、良かった。よろしく頼む」
「はい!!」
お疲れ様です。
洋梨です。
話が出来ていないと思っていて、更新してませんでしたが、すでにこの話は出来ていたのをさっき思い出しました。すみません。
それはさておき、俗物お兄さんはとある理由で話し方が俗物です。よろしくお願いします。




