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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第1章 勇者様の基礎
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第2話 嫌な女は元魔王?

 私が勇者様の剣を受け取ってから、はや1ヶ月月、私はまだ実家にいた。旅には出ていない。

 私も私で真面目なので、勇者様の事を調べてみた。すると、何やら旅に出て、仲間を見つけて、各地の魔物を倒して、魔王幹部を倒して、魔王を倒したらしい。

 なので、旅に出た方がいいかガイドさんに聞いてみたら、まだ早いと言われた。



「とは言え、旅に出ても、私に何が出来るのかって話だよなぁ……」



 私は一介の村の娘だ。特別な能力もなければ、特別身体能力が高くも魔力が多いわけもではない。強いて言うなら、魔力操作が上手いとは父から言われたことはあるけど、あくまで身内贔屓の評価だ。つまり、私に突出した何かはない。突出した何かがあるのは妹、'リンダ'の方だ。


 妹は魔力がものすごく多く、その才は人がごった返す街の中でも屈指だと認められるほどだそうだ。魔力操作は若干私の方が上手いので、今のところ、教えている側なのだが、いつ追い抜かされてもおかしくはない。

 まぁ、身体が弱いので勇者様にはなれないとは思うけど。



「お姉ちゃん、お本読んで?」


「いいよぉ♡おいで♡」



 私がベッドで横に寝転がっているとリンダが絵本を持ってきた。

 その本はリンダの好きな、【桃に呪われたお姫様】の話だ。内容としては、ある桃を食べたら、なんでかは分からないけど、村から追い出されだされて、これも何でかは分からないけど、どこぞの王子様に娶られた話だ。



「リンダはこの本好きだねぇ♡」


「うん、普通に幸せになるのつまらない。紆余曲折あって、最終的に幸せの物語がいい」



なんたるマセガキの発言だろうか。とても11歳の子発言とは思えない。5歳上の私の方が頭メルヘンな気がしてきた。何故なら、未だに王子様と結婚したいなぁとか思ってるから。



「最初から幸せなのはいい事だと思うけどなぁ?」


「それは現実の話!物語にそんなのいらない!」



 うーん……、なんたる子どもらしくない発言なのだろうか。この子の将来が少し不安になる。もしやこの子が魔王に?……なわけないか……なったとしても、この子になら滅ぼされてもいいかもね♡



「勇者様、少しお話を。リンダちゃん、少しパパと遊んでくれる?」



リンダはガイドさんを睨みつけた。ざまあみろ。リンダに嫌われたんだ。バーカバーカ。



「後で私とも遊んで!」


「はい、喜んで」



 リンダはそう言って部屋を出ていった。あれ?嫌われてないのかな?もしや、懐いてるのかな?思い返せば、懐いているような気もする。

 頭が痛い。



「何頭抱えてるんですか?」


「元凶が言うなよぉ……」



ガイドさんは私の横に座る。私はうつ伏せになり頭を抱えていた。



「もうそろそろ、旅に出ましょうか。旅に出ても良いレベルにはなりましたし」


「そういえば、わざわざこっちから出向くんですか?あっちから来て貰えば良いんじゃないですか?」


「それは勇者様が有能で万能な人の話です。あなたみたいに怠惰で才もなければ魔力も乏しい勇者様には経験という力が不可欠です。何も知らなければ太刀打ちできないことも、知っている事で太刀打ちできるようになります。例えば、モノドッグにすら逃げ回っていたあなたが、もはやモノドッグは相手にならないほどレベルが上がったのも、鍛えて多少強くなったこともありますが大きな点は相手の弱点に気づいた事。その弱点をついて、勝てるようになった事を忘れましたか?」


「……はい。その通りです……」



 言いすぎだろこの女!!でも何もかもその通りだから言い返せない!!クッソォ……!!見返してやる!!!



「じゃあ!明日出発します!!父さんやリンダにもそう伝えます!!」


「バカ!!準備は入念にしなさい!!準備を怠る者は何者にも勝てません!!準備を疎かにすることは!!自殺行為と一緒です!!!」



ガイドさんはバカという言葉と同時にビンタしてきた。バチンッて大きな音が鳴る。めちゃくちゃ痛い。死ぬ。



「うぅ……、嫌なことしてるのにぃ……、優しくしてほしいぃ……」


「……はぁ、すみません。私もやりすぎました。ですが、命に関わることですので」


 誰が巻き込んだんだ誰が!!

 私は突如疑問に思う。この女、何で魔王が現生しているとか知ってるんだろ?

 いつか本で読んだことがある。勇者様はある人に導かれて、勇者様になった。その導き手が預言者:'メロハバ'。彼はただの農家であった勇者様に才を見出し、世界を救った勇者様にした。神の伝道者だ。もしや、ガイドさんもそれ?……いや、この女に限ってそれはないな。



「ガイドさんって、神の伝道者ってやつだったりしますか?」



とはいえ、可能性は0じゃない。訊いてみる。



「神の伝道者?あぁ、勇者様の導き手のアレですか。たしか、昔のそれはメロハバといいましたね」


「知ってるってことはやっぱり?」



こんな嫌な女が、神の伝道者なのはちょっと嫌だけど、それなら私のことを知ってても納得がいく。ストーカーじゃない可能性がある。



「いえ、私は違いますよ。今回の神の伝道者は生まれてきません。なので、本物の勇者様は誰にも分からないんです」


「は?生まれていない?え?じゃあ、なぜ魔王が現生してるってわかるんですか?」


「そうそう、それも今日伝えとこうと思いまして。私、【元魔王】です。【桃に呪われたお姫様】ですよ」



……は?魔王?この女が?確かに性格の悪さは魔王らしくはあるけど……



「その昔、村の娘のお風呂を覗いていたら村を追い出されたので、仕方なく街で大人しく酒場で働いていたら、その国の王様に気に入られて、お妃になりました。そこから、私利私欲に溺れ、たくさんの女性と関係を持ち、それから」


「待って!!!聞きたくない!!!聞きたくないよ!!!?何その話!!?やめてやめてやめて!!!話さないで!!!こんなうら若くて、純粋で!!!こんな良い女にそんな悪影響ある話しないで!!!」



 両方とも何を言っているのか分からないという顔をしている。そんなこと自分でも分かっているけど、兎に角話を聞きたくない。



「というか、魔王ならここで倒した方がいい?」



 私は剣を持ち、ガイドさんの首に刃先を向ける。ガイドさんはクスクス笑って、剣を摘んだ。

 動かそうとしてもまるで動かない。ただ、摘んでいる指先から腕の力だけで、私の全力を上回っているという事だ。それも軽々しく。



「出来ますか?今のあなたには無理です。かつての勇者、'インカ'も私を滅する事は出来ませんでした。では何故、勇者様が魔王から世界を救えたのでしょうか?それは勇者様が提案を持ちかけてきたからです。『次の勇者様は私が決めて良い』と。なので、今回の神の伝道者は生まれてきていないのです」


「何ですかそれ?そんな話信じるとでも?」


「信じても信じなくても結構ですが……まぁ、これだけは言っておきます。私は今回、あなたの、勇者様の味方です。元魔王が味方なの、心強いでしょ?」



 元魔王かどうかはともかく、今まででも分かっていたけど、あらためて感じた。この女はもの凄く強い。その女が味方であるならば心強い。それはそうだが、嘘をついていないとは限らない。仮に元魔王なら、その時になって裏切るなんてこともあるはずだ。



「にわかには信じられませんか?」


「そりゃ……ですが魔王云々の話はどうでもいいです……私が気になるのは、ガイドさん。あなたが裏切らないかどうかです。裏切る可能性があるなら、私は刺し違えてでもここであなたを葬る」


「そうですねぇ……証明……は出来ません。魔王といえど、私は元人間ですから。魔物のように契約にはうるさくないし……うーん……」


「じゃあガイドさん、あなたは何故、私の味方をするのですか?」


「それは……この世界の女性が美しいからです♡」


「は?」


「いえ、物心ついた頃からですかね?あぁ、なんて美しい曲線なんだろうって、触ってみたいなぁって……♡男性のしっかりとした線も素敵ですが♡やはりあの曲線の美しさは♡」



 やっぱりこの女普通に嫌なやつだな。死ねばいいのに。



「でも、滅ぼそうしたんですよね?」


「それは語弊です!!かつての勇者様はそういう風にして魔王、つまり私を悪者しましたが、私は!!世界の女性を一人も余す事なく手に入れたかっただけなんです!!!」



 え?めちゃめちゃなやつだな。普通に世界滅ぼそうしているのと何も変わらないし。やっぱり死ねばいいのに。



「あ、今は違いますよ。今は今抱ける人がいればいいので♡」


「それはもういいです。いや……でもやはり腑に落ちません。今抱ける人が欲しいのなら、魔王らしく振る舞い、新たな魔王に取り入ったほうが、抱ける人の数は多いと思いますが」


「……、これはあくまで勘なのですが。今回の魔王は、私と違い世界を滅しようとするはずです。結果として、私が望む世界でも世界が滅びる事があった可能性もありましたけどね。それはあくまで結果論です。私の目的は世界全ての女性を抱く事だった。けれど、今回の魔王はその目的が……世界の崩壊、のような気がします……」


「それは、魔王の勘ですか?」


「いえ、女の勘です」



 ガイドさんは頬を人差し指で叩きながらにへらと笑った。何を意味しているかは分からないけど、何となく、ただ何となくだけど、嘘は言っていないような気がした。……、今回は女の勘を信じてみる事にする。



「……、なら私も女の勘にかけてみます」


「??、何ですか?」


「……私はあなたを信じてみます」


「……!!良かったです!!!!これで旅立ちも捗りますね!!」



ガイドさんは本当に嬉しそうにしている。この笑顔に嘘はないと思いたい。何でかは知らないけど、私を鍛えてくれて、今本気で叱ってくれた人を信じてみる。たとえ、後で裏切られたとしても、私が強くなって、裏切ったのは間違いだって、後悔させてやればいいだけだ。

容姿描写はあまりするつもりはありません。やりにくいので。大体ズボンに長袖Tシャツ着ていると思ってください。


とりあえず、全員かわいいです。気が向いたらこんな感じかなぁってあまり上手くないですが、絵を描きたいと思います。

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