第15話 初めての依頼
私はルースちゃんを売店で待っている。変な仮面をつけながら。私は年相応の背の高さと言えば良いのか、そこまで高くない。それのせいなのか、「なにあれー、かわいい笑」だの、「今日は仮装大会ないよ笑」だの、好き勝手言われている。が、まぁ、特に気にすることでもない。それはそうと、ルースちゃんはかれこれ1時間は帰ってきていない。
何してるんだろ?
「エイン!お待たせしました!」
「おぉ、よく分かったね」
仮面をつけているからもしや気が付かないのではないかと思ったが、そうではないようだ。
「ふふ。簡単には誤魔化せませんよ。友達ですから。さて、行きましょうか」
「うん」
私たちはスタスタ歩いてギルドから出ようとする。しかし、ギルドから出る一歩で私は痺れを切らした。
「ツッコンでよ!!!!」
「え?何にですか?」
「仮面つけてるよ!!!?これで行くの?!って!!」
「あぁ、偶におられますよ。仮面つけたまま依頼に行く方も。別におかしくはないのでは?」
「うそ、これつけて依頼こなすの?途中で逆に捕まったりしない?」
渾身のボケのつもりだったんだけど、通常運転なのか。世界は広いな。
「……、怪しいは怪しいですね。私はカッコいいと思うのですが……、これつけて依頼に行く方は総じて変わり者なので」
そうなんだ。変な人なんだ。つまり、それをそのままにしたという事は、ルースちゃんは私を変な人だと思っている可能性がある。
「私って変な人に見える?」
「え?いやぁ、まぁ。この平和な時分に勇者様を目指そうなんて人は、稀有な存在ですね」
「じゃあ、ルースちゃんも変わり者なんだ?」
「その定義によるとそうなりますかね?私は一応王族ですから、庶民とは一線を画してしまうのもまた事実なので。その辺は特に気にしていませんが」
「ふーん。じゃあお互い変な人だ!お揃いだね!にひ!」
「ふふ、そのお揃いは嬉しいですか?」
「あはは、どうなんだろう。とりあえず、仮面はつけたままにしとくよ。他の人がどういう反応するかも見てみたいし」
「じゃあ、依頼を受けに行きましょうか」
……………
依頼はアレッタさん達の受付で受け覆っているらしく、私たちはアレッタさんのところまで来た。アレッタさんは相も変わらず書類を整理している。それはミドルさんも一緒だ。
「ごめんなさい……、依頼を受けたいのですが……、よろしいでしょうか……?」
私は渾身の怖い声でアレッタさんに声をかけた。得体の知れない人物ぽい感じがして、強そうに見えるはずだ。ルースちゃんはポカンとしているが、問題はない。
「エインちゃん?何してるの?」
一瞬で気づかれてしまった。
「依頼を受けに来ました!何か紹介してください!」
「あ、あぁ、依頼ね。あなたは初心者だから……、この【芋葡萄の採取】がいいかしらね?」
「芋葡萄?」
「あれ?知らない?」
「はい」
「芋葡萄は、地面の中に実る葡萄のことですよ。普通の葡萄とは異なり、凸凹していてクリーミーなんです」
「そう言えば、ルースは芋葡萄が好きなんだっけ。美味しいもんね」
「?ルースちゃんも食べたことあるの?」
「はい。この前、18歳の誕生日を迎えた時に。庶民のケーキを所望したら、そこに入っていました」
「庶民のケーキといっても、額はこんな感じよ」
アレッタさんは私にその時のケーキを見せてきた。100,000インカと書いてある。
改めて考えるとインカって勇者様のことだよね。この人通貨にまでなったんだ。すごい人なんだな。それは置いておいて、100,000?庶民?いやまぁ、庶民の価格……、じゃないよね?100,000?
「どうしました?」
「この額が庶民かどうか悩んでるのよ」
「庶民じゃありませんよ」
「よね?」
「え?!でも!!」
「庶民でもかなーり贅沢をすれば買える値段ね」
「買えないと思いますけど。まぁ、良いです。その芋葡萄を取れば良いんですね?」
話の腰を折った。これ以上は不毛だ。だって、私はスーパー庶民だから。
「取るというかお手伝いね。芋葡萄畑に行って、芋掘りを手伝って来て欲しいの」
「葡萄掘りですよ」
「どっちでも良いじゃないの!」
「ふふ、まぁまぁ、では行きましょうか。2人で受注をお願いしますね。アレッタ」
「あれ?ルースもいくの?じゃあこれもお願い!」
アレッタさんは何故か私に新しい書類を渡してきた。一応読んでみる。その内容は【ゴブリンの群れ討伐】だ。ゴブリンは、上半身裸の小人で、なんか緑っぽい色をしているらしい。そして女の子が大好きだと勇者様伝記に書いてあった。『しかし、女の子は俺も大好き』という余計な文を載せて。
「ゴブリンの群れの討伐、ルースちゃん1人で大丈夫なの?」
「どうでしょうか。今までは兄様達がいてくれましたので、苦も無く討伐は出来ていましたが、私1人となると……」
「ダメ?このレベルの依頼は最低でもルースクラスはないと難しくてさ、ルースなら出来ると思うし」
常々ルースちゃんはすごいと思っていたけど、そんなにすごいんだ。
「ルースちゃんってどのくらい強いんですか?」
でも、疑問に思ったので訊いてみる。
「どのくらいねぇ。例えば、あの辺で駄弁っている冒険者の連中が束になっても勝てないくらいよ」
アレッタさんはそういって、ギルド内の椅子に座ってお話をしていた人たちを指さした。しかし、私はその人たちを知らないので、いまいちピンとこない。
「ガイドさんとどっちが強いんだろ?」
ガイドさんも私の中ではやたら強い部類の人に入る。私は指だけで剣を止められたし、ルースちゃんも腕相撲は瞬殺されたくらいだ。どう低く見積もっても腕力だけならガイドさんは強すぎる。
「……、ガイドねぇ……、あれと比べたらねぇ……ちょっとかわいそうかな……」
アレッタさんはちょっと苦笑いする。
「ガイドさんってそんなに強いんですか?というか知っているんですか?」
「ガイドは……、ちょっと昔の知り合い。あいつが王妃をやってた頃にちょっとね」
「王妃?私はガイドさんを王宮内では見たことがありませんよ。何かの間違いでは?」
「え?でもガイドさんが王妃だったのは数百年前だって言ってたから、ルースちゃんが知らなくてもおかしくはないんじゃないかな?」
「?あの人、人間ですよね?人間はそれほど長く生きられませんよ?」
「あぁ、あいつは不老の魔法使えるから」
「不老の魔法?なんかすごそう」
「すごそうじゃなくてすごいのよ。不老の魔法はあいつ以外使えないし」
「え?なんでですか?」
「んー、あいつは執念深いというか、負けず嫌いというか、何というか、まぁ、最終的には魔法研究の副産物らしいの。詳しい話はあいつから聞きなさいね」
「はーい。あ、じゃなくて、ルースちゃんは結局大丈夫なくらい強いんですか?」
「まぁ、大丈夫よ。ゴブリンの討伐くらい。'レイン'様や'ルイン'様には伝えておくから。後で様子を見に行ってくれるでしょうし。でも!危ないことには首を突っ込まないこと!特にエインちゃん!あなたは芋掘りに集中しておきなさいね」
「葡萄掘りです」
「いいから!ほら、いってらっしゃい!」
「はい!行って来ます!」
「行って来ます」
お疲れ様です。
洋梨です。
最近は忙しくて、書く気力が湧きませんでした。すみません。
ガイドさんは大昔に王様に魅入られて王妃になったというのは確定ですが、ルースと血のつながりはありません




