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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第1章 勇者様の基礎
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第1話 嫌な女と勇者様

「なんでこんなことにぃーーー!!!!」


 私は剣を振り回しながら、魔物と呼ばれる生き物から逃げ回っていた。


 魔物とは、魔力を持った生き物で私たち人間もその生物に該当するといえば、該当する。けれど、一般的に人間以外のことを魔物と呼ぶ。


 そもそも、魔力とは生命体から湧き出る謎のエネルギーらしく、実際のところ、誰も詳細は知らないらしい。そんな謎のエネルギーを私たち人間も魔物も糧にして生きている。


 そして、繰り返すが、私はその魔物に襲われている。形は犬型で、"モノドッグ"という魔物だ。


「助けてーーー!!!!」


「さっさと倒さないとご飯抜きですよー」


 遠くから、椅子に座っている忌々しい女が私に声をかけてきた。ことの始まりは3日前だ。


……………

 3日前


 ある女が私の前に現れて、こう言った。



「あなたは勇者様です。さあ、受け取りなさい」



 突如現れた変な女が、これまた変な剣を渡そうとしてくる。



「え、ごめんなさい……」



 私は薪を山から家まで運んでいる途中だった。はっきり言って疲れていたし、変な女の相手をする暇はない。

 なので、お断りした。

 そして、お辞儀をしてから横を素通りする。



 しかし、その変な女は私を離さなかった。後ろから服を掴み、ひざまづいている。



「なんでですかぁ!!!受け取ってくださいよぉ!!!!」

「えぇ!??ちょっ!!!?何??!!」



 変な女は泣いていた。変な女が私の服を持ちながら泣いているのだ。

 だから、逃げようとした。

 しかし、逃げられない。



「服!!服離して!!破れる!!破れるって!!」

「剣を受け取らないなら!!服破ります!!全裸で帰れ!!!」



 変な女は私の服を何の躊躇いもなくビリビリ破り始めた。



「待って!!分かった!!お話だけするから!!!!破らないで!!!」



 そして、私はその女を家に入れた。思えばこれが間違いだった気もする。


 家は大きくも小さくもなく、一軒家だ。いわゆるリビングには丸いテーブルがあり、椅子も四つ置いてある。私たちは元々四人家族なのだが、母は私が7歳の時に他界した。なので、今は妹と父と私、その三人で生活している。その妹や父はと言うと、街の大きな病院まで行っていた。妹の身体が弱く、定期的に健康診断に行っているのだ。なので、この日は私一人だった。


 何か出さないのも、ちょっと心地が悪いのでとりあえず紅茶だけ出した。つまむものはあげない。



「あなたは勇者様です」



 紅茶を一口飲んだ後、変な女はそう言った。しかし、それはさっきも聞いた。



「あの、その勇者様ってなんですか?」


「知らないのですか?!あの!!勇者様を?!」


「え、いや。勇者様という言葉は知ってますよ。何百年前かに魔王?ってのを倒した人ですよね?」


「えぇ。その通りです」



 魔王とは魔物の王らしいが、形は人と同じらしく、正体は闇堕ちした人間だという噂もあるが、そんな何百年も昔の話を今はもうする人も稀だ。それこそ、歴史に興味のある人が話していることを聞いたことがあるくらい。だから、魔王も勇者も正直、ピンとくるようなものではないのだ。ただ、魔王は世界を滅ぼうとし、勇者様はそれを止めたと言う話は誰でも知っている。



「何やら要領を得ない様子……」


「え?あぁ、まぁ……」



 あれだけの問答で要領を得る方が難しいとは思うが、何となく、この女が言いたいことは分かる。



「勇者様になりませんか?」


「なんで勇者様になる必要があるんですか?」



 最もな疑問のはずだ。この平和な世界で、勇者様が必要になる理由など、ないに等しい。それが勇者様になれという話を聞けば、少し察知はつく。


「また魔王となりうる生物が現生しています。今はまだ少し遠い未来ですが、彼女もいずれ魔王になるでしょう。来るいつかの日の為に、あなたも今から鍛錬を励んでほしいのです」


「今はまだ違うんですか?」


「はい」


「なら、今倒しに行けばいいのでは?」


「そうもいきません。その人は今強大な力に守られています」


「えぇ……」



 とりあえず、内容はよく分からないが、魔王というやつが今後現れるらしい。その現れた魔王を私が討ち取れという話である事は分かった。

 ただ、一つ疑問がある。



「なぜ、私が勇者様に?」


「……、名前がカッコいいからです」


「は?」



 少し言いにくそうに女は言った。名前がカッコいいからと。そんな理由あるか?確かに私の名前は'エイン・アリス'と言って、カッコいい部類には入るのだろう。だけど、もう一度言う。そんな理由あるか?



「……、何かこう、もっとないですか?」


「何がです?」


「私にしか出来ない特別な何かとか?」


「ありません。強いて言うなら、カッコいい名前の方が後世に伝わりやすいと言ったらところでしょうか。'チュンチュン・チョベリバ'という名前より、エイン・アリスという名前の方が多分、後に伝わります」



 それはそうかもしれないけど、釈然としない。それにチュンチュン・チョベリバの方が伝わりそうな気がする。ていうか、なんで名前を知っているのかも分からない。多分、ストーカーだ。もうこれ以上話したくない。しかし、それで話が進まないので、答えを出すことにした。



「やっぱり、お断りします」



 どう考えても魔王と戦うなんて普通に嫌だ。私でなくていいなら、別の人に頼んでほしい。



「なんでですか!??こんなに名誉ある仕事ないですよ!!?」



「いやです。魔王倒すって……いや、魔王が何かもあまり知りませんけどね?今の生活はほのぼのしてるし、なんか勝手に倒してほしいです。その辺の村人を所望します!」



「いけません!!」


「うぉ!!ビックリした……」



 いきなり変な女が机を両手で叩いたからビックリした。人の家の机を叩くなバカ。



「いけませんよ、そんな怠惰な人間でいいんですか!?」



 嫌なこと言うな。この人。はっきり言ってもう嫌いになりそう。



「いいです。と言うか!名前も何も知らない人に!そんなこと言われても!信じないし!何も思いません!バーカ!!」



 嫌いになりそうじゃない。もう嫌いだった。だって、この人に対して口悪くなるから。



「そういえばそうでした。では今更ながら自己紹介を。私の名は、'ガイド・ヴァンガード'、よろしくお願いします」


「え?よろしくしませんよ?」



 ガイドさんは握手しようと手を出してきたけど、私はそれを取らない。取ったら勇者様になりますと言っているようなもんだから。



「あ!!」


「ん?」



 突然ガイドさんは部屋の隅を突如指差す。私はそれに釣られてその方向見た。その隙にガイドさんは私の手を握った。



「はい!これでもう!あなたは勇者様ですよ!」


「は?何故ですか?」


「私は呪術師です!!つまり呪いをかけました!!」


「は?!呪い?なんで呪い?!!!嫌です!!!!解いてください!!」


「いやです!!否が応でも勇者様になってもらいます!!」


「この変な女がぁ……!!許さないぃ……!!早く解いてよ!!!死にたくないぃぃ……」



 私は涙を流してしまう。死にたくない。そんな当たり前の感情が私の涙腺を崩壊させた。



「いや、別に死にませんよ?」


「え?死なない?」


「はい、これは特別な呪いなので!」


「特別な呪い?」


「はい」


 うざい。心底うざい。どういった呪いですか、待ちの顔してる。この人真っ先に魔王に狙われないかな?



「どういった呪いですか?」



 待ってましたと言わんばかりのドヤ顔。悔しい。とはいえ、気になるのは気になる。呪いなんて人を殺してなんぼのもんだと、同じ呪術師の父が言ってた。

 呪術師と言っても、魔法を使って様々なことを出来る人のことを引っくるめてそう言っているだけで、『呪い』そのものを扱う人はそうそういるものじゃない。大抵は回復魔法や治癒魔法を使って、人の為にする事をしている立派な人たちだ。

 でも、ガイドさんはちゃんと『呪い』と言った。つまり、回復魔法の類ではないはずだ。



「……、人前で裸になる魔法です」


「……、ん?」



 ガイドさんはそっぽむいて、そうポツリと呟いた。そっぽ向くのはいいとして、問題は発した言葉だ。


 人前で裸になると言ったか?なんだそれは?



「ガイドさん……?つまり?」


「つまり……、勇者様にならなければ……、人前で裸になります」



 ほうほう、復唱しましたか。しかし、私が聞きたいのはそこじゃない。



「なんで、そんな呪いをかけたんですか?こう見えて私は【村一番の気が利くかわいいお嫁にしたい女】、ナンバーワンですよ?」


「だからですよ。そんな女性が……人前で裸になるなんて……、これほど惨めで情欲をそそられることもない!たとえ、どれだけ人が良くても……露出狂の変態に……人権などない……んですから!!」



ふふふ、ニタニタ、あーっはっはっ、と笑った感じでガイドさんは言った。何笑ってんだこの性悪女が。勇者様になったら最初にぶっ倒してやろうかな?



「とはいえ、私にも人の心は少しあります。理解している程度ですがね?なので、条件をつけました」


「条件?」


「はい。言った通り、勇者様になれば、この呪いは発動しません。逆を言えば、勇者様にならなければ全裸です。どうです?なりますか?」


「……!わかりました……!なればいいんですよね!?なれば!!なります!!なります!!ならさせていただきます!!!」


 ガイドさんは、嬉しそうに剣を私にくれた。宝石みたいなものの装飾が施されていて高価そうな物を私にくれたんだ。よほど私に期待しているのだろう。けど、乙女の純情を弄んだこの女は絶対許さん。いつか隙見て切ってやる。


……………


 そして現在、


 私は魔物に追い回されているわけだ。あの女絶対許さん。


「居候が適当言うなー!!!ご飯事情は私が決めるー!!!」


「あれだけ元気なら大丈夫そうですね」


そんなこんなで、私の勇者様生活は始まりを迎えた。

よろしくお願いします。

洋梨です。

別に異世界もの書いてたのですが、別の異世界もの書きたいなと思い、書き始めました。

書き始めはいいですね、ノリノリです。このノリノリも3日で終わりそうですが。

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