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ショートショート5月~3回目

思春期の大暴走は誰にも止めることができない

作者: たかさば

 人というのは、時としておかしな行動に走ることがある。


 特定のアイドルに夢中になって、恐ろしい夢小説を仕上げてしまうだとか。

 おかしな妄想に憑りつかれて、自分が能力者であると勘違いしてみたりだとか。

 仕事そっちのけでいかがわしい漫画を描いては、同人誌を自費出版して売りさばいて大儲けするだとか。

 部活にも所属せずに、週末はコスプレイベントでカメコに囲まれて撮影大会してお茶会を開いてみるとか。

 人を言い負かすことに快感を覚えて、人として備えておかねばならない感情をポンポン放り投げたりだとか。


 とりわけ、特に、体と心のバランスが乱れがちな思春期の頃というのは、大人になった今では考えられないような、大暴走をしてしまうことがあるように、思う。


 本日は、私がとある筋から入手した…愉快な事件を、ご紹介したいと思う。



【その1、心霊現象】


 一つ目は、今からかなり前、とあるクソ田舎の片隅の小学校で起きたという事件である。

 エンジェルさんごっこがブームになったとある年。一人の女子が、先生が教室に入ってきたその瞬間に、泣き叫んだ。


「手が……手が、止まらないの!!エンジェルさんが、帰ってくれないぃいいい!!!」


 教室内は、騒然とした。


「ヤバイ、亜由ちゃん、呪われてる!」

「あの子エンゼル様に頼りすぎるから怒らせちゃったんだよ!」

「紙の隅においしそうなパフェ描かなかったから!」


 お昼の長休憩の時間、クラスメイトに囲まれて自慢のエンジェルさん降臨に成功した女子生徒が、えんぴつを握り締めた手を暴走させて大さわぎになった。

 女子生徒は、休み時間になるたびに白い紙に五十音とおかしな文様を書き、霊体との交流を行っていたらしい。呼び出すための呪文をまちがえると呪われる、途中で鉛筆から手を離すと呪われる、自分で鉛筆を動かしたら呪われる、納得して帰ってもらわないと呪われる、勝手に終了させたら呪われる、神の隅においしそうなおやつを描かないと呪われる、非常に制約の多い、謎の儀式をあっさりと我が物顔でモノにしていた女子のまさかの大失態であった。


「落ち着きなさい!!そんなものいないの!!席に着きなさい!」

「無理、無理、手が、手がああアアアアアアア!!!」


 鉛筆を握り締めたまま、ぶんぶんと腕を振り回す女子は、隣のクラスの男性教諭に抱えられて保健室に向かった。翌日から校内エンゼルさん禁止令が出て、一気に事態は収束したのだという。



【その2、生贄】


 今からずいぶん前、とある街中の中学校でおかしな儀式が行われているのが発見されて大騒動になった。誰も足を踏み入れないような体育館裏で、白骨死体が見つかったのである。


「みーーーたーーーーなーーーー!!!」


 校庭の掃除当番だった1-8の生徒六人は、ご丁寧にコンクリートの上にキレイに並べられた骨に見入っていた時に、後ろから怪しげな叫び声を聞き、本気で悲鳴をあげて縮み上がった。


「ぎゃああアアアアああああああああああああああ!!!」

「ひ、人殺し、み、見てませんからアアアアアアア!!!」

「あ…、あ……!!!」


 おかしなチョークの紋様と数字、真っ赤な液体の入った小瓶、大の字になって横たわるてかてかと輝く小さな人骨、どこをどう見ても生贄を使った怪しげな悪魔呼び出しの魔法にしか見えなかった。生徒達は教師の秘密を知ってしまったので、消されることを覚悟した。

 教師の岩沢先生は、理科室に生物の漬物瓶や化石、悪魔みたいな牙の標本に毒としか思えない液体の入った試験管などをたくさん溜め込んでおり、怪しげなうわさがあった。転校して行ったとされる同級生は、実は薬品に融かされてここに干されているのではないか、生徒達は瞬時にそう理解して、震え上がったのである。


「これさあ、ベトナムで買ってきたサルの骨なの!!なんかしけってたから日干しにしてたんだよね!」

「「「「人騒がせな!!!」」」」


 騒ぎを聞きつけて飛んできた教頭先生の怒りはかなりのものだった。以降このお騒がせ教師は海外でおかしな標本を買うことをやめてしまい、校内には平和がもたらされたという。



【その3、怪しげなまじない】


 今からだいぶ前、とある街中の高校でおかしなまじないが流行って大混乱を起こした。

 どこぞのおまじないブックに満点を取るおまじないとやらが載って、勉強嫌いのクソガキどもがその情報を共有し、暴走したのである。


「おい!!このクラスには…藍原勉が何人いるんだ!!!」


 代数幾何のテストの返却の日、温厚な教師の叫び声が教室内に響いた。教室内は、騒然とした。


「すみません、それ、僕です。」

「すみません、名前書きまちがえました。」

「すみません、でも出席番号は自分のです。」


 二年生最後の学年末テストは、大変に難しいものだった。どれだけ勉強しても理解できない、しかし赤点にはなりたくないと追い込まれた生徒が、禁断のまじないに手を出してしまった。

 おまじないブックには、「クラスイチ頭の良い子の名前を氏名欄に書いて、学力アップ!優等生のパワーを分けてもらえるよ!解答欄を埋めた後で、自分の名前に書きなおしてね!」と有った。ワラにもすがるキモチで優等生の名前を書き込んだ生徒達の何人かは、時間いっぱいになってもすべての問題を解ききることができず、そのまま他人の名前で答案用紙を提出してしまったのだ。このまじないの効果があったのかどうかは定かではないが、赤点取得者は一人も出なかった。なぜならば、平均点が脅威の14点だったことに加えて、出題ミスがあったため設問1は全員が正解となり、奇跡的に全問不正解でも10点がもらえることになったからである。


「次からは人の名前を書いたら即0点だ!!良いな!!!」

「「「「すみませんでした」」」」


 机の上に正座をさせられ、頭を垂れた生徒達の姿は、なかなかに見物であったらしい。なお、満点の生徒は本物の藍原勉ただ一人であり、微妙にまじないの効果があったように感じることができたのだそうだ。



 思春期の暴走しがちな思考回路が巻き起こした愉快な事件を、三つ上げさせていただいたが…いかがだっただろうか。


 このところ、ずいぶん落ち着いて穏やかな生活を送っている皆様には、いささか刺激が強すぎる話であったかもしれない。


 ……世の中には、実に面白い話がたくさん存在しているものだ。これから先も、きっと愉快な話はたくさん生まれていくことだろう。


 まだまだ、人には楽しませていただきたいところである。


 期待を胸に、物語を閉じさせていただこうと思う。


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― 新着の感想 ―
[良い点] お、おうふ。なんと恐ろしい。 [気になる点] 今の自分がおそろしい。もっと暴走せねば
[一言] 可愛いwww
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