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番外編 初めての節分(雪 視点)

 今日は節分というらしい。

 じゅりさんがウキウキとコンビニというお店で買ってきた大豆の炒った袋片手に、「今日は節分だから、恵方巻きをみんなで作って、豆まきしよう!」

 笑顔でそう言ってきた。


 そうなのか……。

 確か鳩の連中が2月のとある日は、すごくウキウキと見えたのはその豆のおこぼれでも、狙っていたからだろうか……。


 とにかく、樹里(じゅり)さんが嬉しいなら僕も嬉しい! 多分、それは詩紋(しもん)もロゼも千鶴叔父さんも同じだ。


 叔父さんはたまに訪ねてくるつもりだったらしいけど……。


「仕事で忙しい時以外は余ってる部屋があるから一緒に暮らしてはどうか」


 そう、樹里(じゅり)さんが提案したからだ。


「まぁ…、樹里(じゅり)さんにベタベタ言い寄らないならいいよ」


 それは僕たち3人の譲れない一線だ。


 叔父さんは嬉しそうな顔をして僕らを撫でたけど、樹里(じゅり)さんの前で子供扱いされるのは不本意なんだよ! もう!!



 そんなこんなで今日は、千鶴叔父さんも一緒だ。


樹里(じゅり)さん何すればいいですか?」


 僕がそう聞くと、以前僕たち用に買ってきてくれた、小さな包丁でアボガドときゅうりに卵焼き、湯通ししたむき海老を準備してくれる。


 僕たちに切り方を教えてくれて、樹里(じゅり)さんはフライパンで牛肉を炒めている。

 なんだか甘辛くて美味しそうな匂いがする。

 どんなものができるのか今から楽しみ。


 詩紋(しもん)を見ると、ここに来てから樹里(じゅり)さんと料理するのも、食べるのもマンガ読むのも大好きらしく生き生きとしている。


「食べるのが楽しみだね~!」


 材料を切りながら、そんなことを口にする詩紋(しもん)


樹里(じゅり)さんのご飯は……、絶対美味しい……。好き……」


 以前は無口だったロゼだけど…、樹里(じゅり)さんと僕らと食事して笑い、樹里(じゅり)さんの護衛感覚でそばにいた時にはまったゲームの影響もあるのか。少しづつ感情がを出す様になった。


 そんなことを話しながら作業を終えると、樹里(じゅり)さんが、竹でできた巻き簾(まきす)を出してきて、お野菜とごはん巻くのどっちをやってみたいかと聞かれ、詩紋(しもん)とロゼが野菜、残りの3人がご飯で巻くことになった。


 詩紋(しもん)たちの方はサニーレタスを敷き、そこに切った具材を乗せていく。最後に牛肉を甘辛く煮たものを乗せてマヨネーズをかける。



 僕らの方は巻き簾に海苔を敷いて、柚子の爽やかな香りのする酢飯を敷き、詩紋(しもん)達と同じように具材を乗せていく、こっちは牛肉の代わりにサーモンを乗せるらしい。


 詩紋(しもん)たちが作ったのはご飯を使っていないからサラダ感覚で食べられそうだ。

 僕らが作ったのは、逆にしっかりとお腹にたまるもの。


樹里(じゅり)さん? どうしてこの2種類なんですか??」

 ふと疑問に思い聞いてみると。


「え? みんなサラダが大好きだからサラダ感覚のもあれば、喜んでくれそうでしょう? それにみんないっぱい食べるから、変わり種があった方が飽きないかなって思って」


 そうして、また僕らのことを思ってくれる。また胸が温かくなる。樹里(じゅり)さん大好き。


 そうして、作って食べた恵方巻きはすごく美味しかった。


「毎年違う方向向いて食べるとか人間は面白いことするのね?」


験担(げんかつ)ぎみたいものだよ」


 不思議そうに詩紋(しもん)が首をコテリと横に傾げると、千鶴叔父さんがそう言った。


「さてさて、鳩さんには悪いけど豆まきは夜にやるものだから、明日食べてもらいましょうね…。さて、豆まきしましょうか!」

 南の方角の棚に枡に入れた煎った大豆をいれて、お供えをする。うちには神棚がないから、その代わりになるそうだ。



「窓を開けて…鬼は外って外にお豆を撒いて、福は内って室内に撒くの」


「鬼……、必要……!」


 珍しく自分から口を開いたと思ったら、ロゼの小さな指が千鶴叔父さんを指し示す。


「叔父さん……、やって…?」


「ロゼが珍しくお願いしてるのに、聞いてあげないの? 千鶴叔父さん?」


「べ……、別に鬼役は必要ないんじゃないかしら……?」


 この先の展開が見えたのだろう。

 やんわりと樹里(じゅり)さんも止めるけど、詩紋(しもん)も乗ってしまった。


「私達が他のお部屋もやってくるね~!!」

 楽しげに走っていく二人に、力なくついていく千鶴叔父さん。


 千鶴叔父さんも付き合う必要がなくても、毎回付き合ってくれる所は、人がいいなと思う。


「私達はみんなに任せてお豆食べてようか…? ふふ…後で片付けが大変なことになりそうだし……。今はゆっくりしようね…」


 たまに、千鶴叔父さんの悲鳴が聞こえる中、僕は樹里(じゅり)さんとお豆をのんびりいただいて、節分の夜は更けていった。

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