天敵12 (雪 視点)★
★★★
敵の正確な数がわかったので、今日ハクビシン捕縛作戦を決行する事になった。
元気のなかった樹里さんも、少し表彰が明るくなり、僕らも少し安心はしているけれど、長引かせたくはない。
それに日に日に、アイツラの行動は調子に乗って、大胆になってくるはずだ。僕らもそんなのに対して、指をくわえて見ているつもりも無い。
何故かあやかしの木たちまでノリノリだ。余程、樹里さんに危害を加えようとした事が、気に入らなかったらしい。千鶴叔父さんの木に至っては、電気を跳ね返す布を生み出し、それらを自在に操る…、まさに妖怪の木になってきた。呆れながらも、今回の捕獲には有用なので好きにさせている。
ハクビシン達は、餌を食べたいだけ食べて、罠であるこの空間で寛いていく。捕獲するのは簡単なんだ……。
すべてのハクビシンが結界内に入ったとき、千鶴叔父さんの作った結界の穴を塞ぐ。
おじさんが作ったと見せかけた、倉庫はあやかしの木の布から、できた対妖力対策の檻でもある。その入り口を閉じられ、出入りできなくなった事に気がついた、奴らは暴れに暴れた。
けれど、樹里さんの料理で、妖力が上がった僕らに対し、彼らの力の殆どは封じられている。
「チェックメイトだ…。千鶴おじさん、転送準備は?」
「出来ているよ…」
「あなた達、これから大変だと思うけど…、自業自得だから。樹里さんを傷つけた自分を呪ってね!ばいばい~」
嬉しそうにそういう、詩紋の言葉にみんな頷く。
パニックから抜け出す間もなく、この場から檻は跡形もなく消えた。
「樹里さんの力も、目くらまし出来てるし、僕らが下手に目立たなければ…。この地や樹里さんが狙われることはなくなると思う。でも樹里さんはなんで、あんな力があるのかな?」
ふと疑問に思って口にすると、千鶴おじさんが「彼女のおばあさんの影響だと思うよ」という。
「以前、樹里ちゃんのお祖父さんとお祖母さんにあたる夫妻に、私も助けられたことがあってね……。そのお礼にこの結界を昔僕が張ったんだ。彼女の持つ空気も僕たちを癒やすあの力もとても似ていたよ」
「そうか……、だから…、千鶴叔父さんも気になってここにきたのか……。いつになく長居してるから、不思議には思ってたんだけど…」
僕は思ったままを口にする。
「やはりここには縁があって、雪も詩紋もロゼもなにか感じたんだろう?」
にこやかにそういう千鶴叔父さん。
確かに…、樹里さんに対して、恩人というだけではない、温かな気持ちが胸に宿っている。
「ここで彼女を守っていきたいなら、君たちはもっとあらゆる事に注意し、守ってあげなくてはね……」
そう言って千鶴叔父さんは、ふわりと笑う。
こういうところは、いつも敵わないな……と思う。
「私も仕事がない時なら様子を見に来るよ!だけど今は、樹里ちゃんを、安心させてあげようね。私達を、傷つける原因になっているんじゃないかと、とても不安そうだったでしょう?だからこそ、彼女を守っていても、君たちは傷つかないと、樹里ちゃんに信じさせてあげられるよう、強くなりなさい…」
★★★
千鶴叔父さんの言葉を胸に、僕らは頷く。
まずは、樹里さんに報告して美味しいお菓子でも作ってあげたい。
彼女の笑顔を見る為に、まずは何をしようか……、そんなことに思いを馳せつつ僕らは樹里さんの元に向かうのだった。