天敵6★
ホットケーキを食べ始めると、普段表情の変わらない印象のロゼくんも、嬉しそうに紅茶を口に含み、切り分けたホットケーキにアイスとたっぷりのメープルシロップをかけてパクリ。
可愛くて見つめていると、「美味しい……」と天使のような笑顔で微笑まれた。
おショタでも笑顔の破壊力やばい……。もう少しパワーを抑えてくれてもいいんですよ?
私も紅茶を飲み、残りのホットケーキを食べていく。
『みんないつもたくさん食べるけど足りたのかな?』そんな事を考えて、みんなの様子を見ていると、千鶴さんがポソリと呟いた。
「これはまた……、凄いね」
「僕、ここまで妖力上がった事あったかな……?」
「私も……」
みんなが口にしたのはそんな言葉。
「樹里さんのお料理…の力……」
「え?」
私はみんなの言葉の意図が読み取れなくて、間抜けな声をあげたかもしれない…。
「前に話したかもしれませんが、樹里さんのお料理は…、ここの土地柄もあるのでしょうが、妖力が増えるんです。だから僕の怪我はすぐに治った」
そこまではわかりましたか? と言いたげに、雪くんは私の目を見つめる。コクリと頷く私。
「そして個体差はあると思うのだけど、一人一人に妖力の上限があるんです。成長とともに変化はしますが……、その変わらないはずの上限を爆発的に上げる何かが、先程食べたホットケーキかロイヤルミルクティーのどれかに入っていますね?」
「え? 爆発的にって? 確かに林檎とバニラビーンズを出してもらう時に、雪くんのあやかしの木さんに、妖力あげれる効果つけられるならと、お願いはしてみたけど……」
「そういう事でしたか……。恐らく樹里ちゃんも、あやかしの木の食物を食べているから、もともと霊感といった力はあったと思うのですが、それらの力が上昇してるのかもしれませんね……」
★★★
顎に手を当て考え込む仕草をする千鶴さん。
「へっ?」
なんだろう。今サラリととんでもない事言われなかったかな??
「樹里さんの、今後の事にも絡んでくるから、対策は練らなきゃね。とりあえずこれならもしかしたら雷無効の効果出せるかもしれないね……どのくらい持続するのかも、気にしなきゃいけないけど」
そう言うと、いい笑顔を浮かべる詩紋ちゃん。
「うん…。樹里さんを傷つけた…、お返し出来そう…」
あれれ?
なんか…、みんなのオーラが黒くなっていってるような……。
「樹里さんのお陰で、更なる対抗策が見つかりそうです。ありがとうございます」
そう言って雪くんが、私の横に来て片膝をつく。私の手を取り、手の甲へと口づける。こういうの……、乙女ゲームやなんかの夢シチュエーションですねー! ……って何で私がされてるの! 執事服だから似合ってるのが何だか困る……。
混乱の中、食器を片付けようとすると、「ボクらがやる……。お仕事進めてきて…?」と仕事部屋へ、小首を傾げたあざと可愛いロゼくんに、連れて行かれる私だった。
考えることはたくさんあるのにまとまらないし、皆の言う通り今は仕事しよう。