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天敵5★

 キッチンに向かって歩いていると、延びていた幹が、シュルシュルと裏庭へと帰っていく。ご丁寧にドアまで締めてくれたみたいだ。


 なんか木なのに気遣いがすごいな。さすが(せつ)くんの木というべきかな。



 ★★★


 気分も少しだけ落ち着いてきたし、さっきもらった林檎でスイーツを作ろう。


 りんごをスライスし、軽くレモン汁につける。酸化での変色を防ぐため。塩水につけるとかが一般的なんだろうけど、なんとなく水っぽくなりそうで、私はレモン汁につける。

 バニラビーンズも一本袋から取り出し、スプーンを使いビーンズだけを取り除く。


 まずは薄力粉、グラニュー糖を分量通りに測っていき、ベーキングパウダーを泡立て器でよく混ぜる。


 卵に牛乳を少しずつ足していき、粉っぽさが取れるまでゆっくり混ぜ合わせていく。


「手伝います!」


 そういう(せつ)くんに、生地をお願いして、私はフライパンにバターを落とし、スライスしておいた林檎に少量のグラニュー糖とシナモンパウダーを振り入れ少し味を見る。

 甘酸っぱさの中に、ほのかなシナモンの香りが爽やかに口の中いっぱいに広がる。


「美味しい……」


 準備していたホットプレートをテーブルに置き、人数分のホットケーキを焼くのだ。



 ★★★


 ロゼくんはこのくらいのお皿持ってきてくれる? 手でサイズを伝えると、コクリと頷きロゼくんは食器を取りに行ってくれる。


 詩紋(しもん)ちゃんにも、「ホットケーキがプツプツと気泡が出て、ある程度火が通ったら裏返して貰えるかな?」とお願いしたら、すごく嬉しそうに微笑んで頷いてくれた。


 (せつ)くんも「何かありますか?」と何かやりたそうだったので、お言葉に甘えて冷蔵庫に入れてあるいちごのヘタを取って、半分に切ってもらうように頼んだ。


 千鶴さんは、トラップの餌場作りの担当とのことで、今は外に出ている。


 あとは、水と多めの牛乳を足したミルクパンに、バニラビーンズと種を入れ、火にかける。完全に沸騰する前に、今日はウバの茶葉をミルクパンの中にティースプーンでいれ、フタをし少し蒸らす。このひと工程が、なかなか馬鹿にならない。茶葉の旨味がきちんと出てるかどうかの決め手となるから。


「そろそろホットケーキも焼き上がる?」


 詩紋(しもん)ちゃんのそばに行くと、『綺麗に裏返したよ! 褒めて!』態度から言葉にしなくても十分伝わってくる。


「ありがとう! 詩紋(しもん)ちゃん、うまく焼けたね! ロゼくんもお手伝いありがとう」


 そう感謝を伝えると、二人共何やら嬉しそう。


「そろそろ盛りつけようか? 誰か千鶴さんを呼びに行かなくて平気?」


 なんて言いかけてたら、「下見は終わりましたよ」と千鶴さんも戻ってきている。


 隠しカメラでも設置してる?? ってくらいのタイミングだけど、一番美味しい食べ時があるから、やはり帰ってきてもらえたのは有難い。


 (せつ)くんに頼んでミルクパンで蒸しておいた、ウバのミルクティーを濾しながら、ティーカップに注いでもらう。


 私は作っておいた焼きりんごを少し温め直し、詩紋(しもん)ちゃんがお皿に乗せてくれたホットケーキの上にいちご、焼きりんご、冷凍庫から出したばかりのバニラアイスを盛り付ける。

 好みでつけてもらうための、ブルーベリージャムとメープルシロップをテーブルに置く。


 静かにしていたロゼくんは、早く食べたかったのか、食器棚の引き出しからカトラリーを引っ張り出してきていた。


 ロゼくんもよく見てるな……。そう思い感心しつつ、ホットケーキも温かいうちに頂こう!


「いただきます」


 そう言い思い、それぞれ思い思いにつけたい付け合せとホットケーキをパクリと食べる。


詩紋(しもん)ちゃんが頑張ってくれたから、ホットケーキふわふわだね!」


 私がそう言うと「樹里(じゅり)さんの作ってくれたタネを焼いただけだし……」と照れくさそうに頬を染める。


 私はモクモクと咀嚼しながら、ホットプレートでも焼き加減難しいと思うのにな~なんて、暢気に考え事をしていた。

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