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家族10★

 食後の片付けをしながら、みんなでお茶を飲んでお喋りをしながら過ごす時間。楽しくはあるけど、仕事も進めないとな…と思い、みんなには自由に過ごしてねと声をかけ席を立つ。



 ★★★


「雀達がご飯おねだりきてるけど、あげても平気?」


 詩紋(しもん)ちゃんがそう言うと頷く私。


「粟とかしまってある場所はわかるよね? あとは…、買ってきた餌入れセッティングしてからの方がいいかしら?」


 本当は雨風を凌げる場所に、餌入れをおけるのが一番良いのだけど、そんなに日曜大工は得意では無い。



「うむ…、収納空間展開したら、上手くできるか?」


 などと一人納得する千鶴さんは、お仕置きされた後だろうに、マイペースで元気そうだ。


(せつ)…、こんな餌場を作ってやるのはどうだ?」


「ふむ…。彼ら警戒しないかな? 確認して警戒しないというなら、叔父さんにしか作れないし…、頼んでもいいかな」


 (せつ)くんも顎に手をやり、考えつつ言葉を紡ぐ。意味のわからない事を話してるけど、可愛いなぁ。


「収納空間……?」


 やっぱり耳慣れない言葉に、思わず聞き返してみると、「ここからちょっと先を覗いてみてくれる?」


 千鶴さんにそう言われた。何もないような空間を不思議に思いながらも覗き見る。


 所狭しと並んでいる衣服……。圧巻だ。


「ウォークインクローゼット…? なんか凄い……。衣装の数も…」


「まぁ、私はデザイナーとしても、人間の世界で生きているからね。ここを見せられた人は、君が初めてだけど。力は見せないにこした事はないしね」


 少しさみしそうに笑う千鶴さん。


「デザイナーってすごい……。イラストの服装に困ったら、デッサンさせて欲しい……」


 そういう私に、穏やかに笑みを浮かべる千鶴さん。

 淋しさの気配は消えたみたいだった。



 ★★★


「それじゃあ今日は小鳥のご飯任せていいかな?」


 そうみんなにお願いし、仕事部屋にしてる部屋に一人で戻った。


 なんだかお洒落なイケメンや美幼女、イケショタを見ていたせいか、筆がのる。

 寧ろ、たくさん降ってくるイメージが消える前に、ラフを色々描きたくなるくらい楽しい。


 締め切り前にあげたいし、リテイクもらうかもしれないから、念の為、締め切りギリギリに動くのは私の趣味じゃない。


 使い慣れた液タブを使い、ラフなイラストをメールで送信する。



 ★★★


「ちょっと外の空気を吸いたいな~…」


 外に出て、新鮮な空気をいっぱい吸い込む。山の中なので空気が美味しい。


 お散歩でもしようかと思って、踏み出してすぐ、全身に悪寒が走る。


 こんなこと今までなかったのに…。

 私を取り巻く山の空気がガラリと変わり、身体の震えが止まらなくなった。


『なにこれ、なにこれ……』


 金縛りにあった様に、声も出せずに固まる私の足首に、痛みを感じ目をやると五本指の動物の足跡のようなものが、少しずつ色濃く浮かびあがっていく。


 私を闇の深い山の木々へと引きずり込もうとするように、ズリズリと引き込んでいく…。逃げようと藻掻くのに、身体は言うことをきかない…。


『怖い……!!』


 何が起こったのかわからないまま、金縛りにあったように動かない身体。私はこのあとどうなるのかな……。


 私の心は、どうなるとも知れない漠然とした恐怖に、飲まれてしまった。


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