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家族4★

「わかったから解放して~!勝手に触ったりないから!」


 千鶴さんが叫ぶ。


「もしまたやったら、次はこの程度じゃすまないからね?」


 (せつ)くんが蔑んだような目で、千鶴さんをみながら言った。


「わかったから!本当にわかったから!凄まないで…!」


(せつ)くんと詩紋(しもん)ちゃんは、ほんとに沸点低いんだから…」


「「はっ!?なんか言った?」」


「ひっ…、何も言ってません……」


 (せつ)くんも、一旦許す気になったのか、あやかしの木が、渋々と解放したのだけど、蔦は警戒の為に残すみたい……。


 どんだけ信用ないの!?千鶴さん!



 ★★★


 人の姿に戻った彼は「驚かせてごめんね?」なんて、さっきのお仕置きもなんのその。近い距離で私に言ってくる千鶴さんに、ちょっとこわごわ距離を置きつつ、お箸と小皿を渡す。


 メンタル強いですね、この方は。さっきまで泣いてましたよね?嘘泣きなの??



 ★★★


 千鶴さんも仲間に入り、取皿にお肉やかぼちゃ、パプリカ、エリンギなど、どんどん積んでいく。いろんなタレにつけつつ、目を細めて幸せそうに味わいながら食べている。


 また牛肉、帆立や海老も再度焼き始めて、食事を再開する。


 昨日(せつ)くんに出逢わなければ、一人の食事をするはずだった。


 今夜も(せつ)くん達と、3人で食べるはずだった食事が、いつの間にか5人になって、すごく賑やかになっている。


 私はちょっと嬉しくなってきてしまい、笑みが溢れてしまう。



 ★★★


 これからこの山奥で、一人暮らしの予定だったのに、思わず同居人が2人増え、その親族も一緒にご飯食べてるとか……。ここに来る前の私は、想像すらもしなかった。

 あぁ、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんの、大切な場所ここを守りたい。ただそう思ってここに来たけど……。


 私もたまにしか来ていなかった、見知らぬこの土地での生活が、少し不安だったのかな。少し淋しかったのかな。彼らと過ごして初めて気がついた。


 そう気づくと、彼らの存在にとても救われている気がした。


「みんなは焼きそば作ったら、食べたい?」


 そう聞くと、全員が元気に頷く。

 千鶴さんまで……!子供ですか!?


 元が文鳥さんだと思えば許せる罪のなさ、我儘さと言うべきなのな…。



 ★★★


 私は、念の為焼きそばの下準備も、していたので材料を取りに戻ろうとする。


「僕も手伝います」


 (せつ)くんはそう言うと、ニコニコとついてくる。


「ありがとう」


 そう伝えると、(せつ)くんは嬉しそうに微笑んでくれた。気がつくと食事に集中していたはずの、ロゼくんまで私のスカートを掴んだままで、無言でついてくる。何なのこの可愛い生き物は……!


「手伝ってくれるの?」


 そう聞くと、コクリと頷いてついてくるロゼくん。詩紋(しもん)ちゃんの方を見ると、千鶴さんの見張り役らしい。


 あやかしの木も警戒はといていない…。『怪しい動きをしたら捕える…』と言わんばかりにウネウネと蔦を動かしている。


 なんでこうなったの!?


 そう思いながらも、今日一日だけでたくさん出逢ったあやかしさん達のおかげで、退屈をする暇はなさそうだな……。


 だけど、何日か分買ったつもりが、食材の減りが早すぎる。みんなに食い尽くされそうね……。もしかしたら、もっとあやかしの木さんに甘えないと、食費もたないかな?


 そんな現実的思考もしつつ、私達は焼きそばの材料を取りに行くのだった。


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