家族3★
★★★
何やら、すごく癖の強そうな親戚の話を、聞いて驚きながらもバーベキューのお肉を咀嚼していた時…。
「かわいいお嬢さん。うちの親族の子守りをありがとう」
誰かにふわりと肩を抱かれ、耳元に甘い声で囁かれた。
「へ!?」
突然の出来事に驚いて、変な声を上げてしまったかも…。
「千鶴!」
雪くんが鋭い声をあげる。
突然、自身に巻き付いてきた人物から距離をあけ、そちらを振り向くと、腰までありそうな白髪を一本に後ろで束ね、シンプルなデザインの着流しを着用し、すごく身長が高い男性がいた。
綺麗な焦げ茶色の瞳が印象的だ。
★★★
「ロゼが雪に会いたいというから、気配を追って連れてきたら、愛らしい女性がいるなんて!これはもう運命だね!」
…などと言いながら、私ににじり寄ってくる千鶴さん。
綺麗な人だけど、距離感近くてちょっと怖い…?
「詩紋これっ!」
雪くんは、何やら詩紋ちゃんにどこから出したのか謎なロープを渡すと、すかさず歌い出す。
この歌は、詩紋ちゃんを文鳥化させた歌??でもお歌のラストのフレーズが何やら違っていた気がする…。
千鶴と呼ばれた人物は、むっちりとした愛らしい白文鳥の大きなぬいぐるみの様に姿を変える。
あやかしの木までが、何やら木から蔦を生み出し、自らの幹にぬいぐるみのようになった千鶴さんを縛り付ける。うん。可愛いけどシュール……。
流石にあやかしの木までが、加勢すると思ってなかったらしく、千鶴さんに雪くん、詩紋ちゃんにロゼくんまでポカンとしている。私もだけど。
詩紋ちゃんは、必要ないと思ったのか、雪くんから渡されたロープを下に置いた。
★★★
そんな中、一人悪びれない千鶴さん。
「雪、詩紋。呼び捨ては切ないからやめてっていってるじゃないか!それに、私はどうして縛り付けられているんだい?」
ぬいぐるみとしてみると、モフりたい気持ちで一杯の愛らしさを放つ。美しい毛並みの、白文鳥千鶴さん。
雪くんや詩紋ちゃんも綺麗だし、確かに距離感は近い。だけど、子供の姿をしてるからなのかあまり気にならないのだけど……。
流石に成人男性に、気軽に抱きつかれたりは、慣れてないし遠慮してほしいなぁと思う。
「わからないなら、そのままそこにいればいいと思うよ…。バーベキュー焦げちゃう前に食べましょうか…」
さらりと千鶴さんを切り捨てる雪くん。
「う、うん……」
千鶴さんはあのままで良いのかな…、とちらりと横目で見つつ頷く私。
「あれは躾の一環ですから」
「そうそう!ちゃんとすぐ躾けないと、叔父さんは駄目なの!」
親戚の子供達にそこまで言われる千鶴さんとは……?
「そんなにいい香りさせて、食べられないとか辛すぎる…、解いてくれないかな?」
そう言うと、大きなぬいぐるみのような存在が、ポロポロ大粒の涙を流しだした。大の大人の成人男性が泣いた!?い…いや、今は鳥だけど……。
「樹里さんに気安く触らない!セクハラしない!襲わない!守れるなら解放しますよ、どうします?」
そう言い、黒い笑みを浮かべる雪くん。
「出来ないなら、ご飯終わるまでそこで反省してればといいと思うの」
詩紋ちゃんも、再び手に取った、小皿の上のお野菜をタレにつけながら、横目で冷たく言い放つ。ロゼくんは食べるのに夢中で、ただ顔を上下にコクコクと頷いている。
何やらカオスな歓迎会になってきたな……。そんな事を思いつつ、雪くんたちに、その場は任せることにした。