出逢い 雪視点9★
★★★
「それじゃ暗くなる前に、買い物行こうか」
満足して人間の姿をとった僕と詩紋。
樹里さんの撫でテクにうっとりして抜け殻だった。
「疲れちゃったなら、一人で買い出し行ってくるからお留守番頼めるかな?」
そんな事を言われて焦る僕達。
「「ついていく!」」
「出来れば開けたらスロープみたいになる、扉のほうがいいかしら。開け放ってられるケージがいいよね。いつも狭い思いはさせたくないし。人が来たとき以外は、出ていて問題ないから……」
そんな会話をしつつ、手荷物などを準備して車に乗り込む。
彼女は、何やらしばらく考え込んでから、カーナビとやらに行く先を設定しているらしい。
★★★
「シートベルトつけた??」
「「はーい」」
僕達が返事をすると、車がゆっくり走り出す。
僕は、樹里さんのお隣が良かったなと思ったけど、席の取り合いで詩紋と揉めそうなので、今日のところは大人しく我慢する。
清らかで優しげな歌声が車に響いていたから、僕達は楽しくなって歌ってたみたい。
ふと気がつくと、バックミラーから、僕らの様子を微笑ましげに見てる。そんな樹里さんと、バッチリと目線が合う。
無意識だったからちょっと恥ずかしかった…。
★★★
ホームセンターに到着し、真っ先に僕らの住み家なるらしいケージを見る。
「気に入ったお家あったら教えてね。あ、こういうお家はどうかなって思ってたんだけど、どうかな?扉を開閉出来るタイプのケージ。怪我しちゃったりはしない??」
「素敵~~。素敵なパステルカラーのおうち!」
嬉しそうに少し大きめなケージを見つめる詩紋。
樹里さんに、あんまり負担かけたら駄目だよ……。そう思って苦々しく見てた僕。叔父さんがいたら買ってもらうのに。
「バードバスもつけたいね……って。あ、お風呂はいるなら必要ないかな……」
樹里さんから、バードバスもつける?って聞かれて少し驚いた。大きなケージって高いんじゃないのかな?その上、バードバス?
「うぐ……。水浴びは大好きなので、いつでも入れるなら入りたいですけど……。僕ら甘えすぎてます……」
「助けてほしい時にはちゃんと、手を差し伸べてくれるでしょう?2人が出来ることで、お互いに助けあえたらいいのじゃないかな?」
「樹里さん~~!」
思わず樹里さんに抱きつく僕ら。
話は終わりとばかりに、僕達の頭をポンポンと軽く撫でて他に必要なものもかごに入れていく。
★★★
「あ、ツボ巣は??」
憧れのツボ巣!!でもバレたら煩いよな……、なんて思ってると詩紋と眼が合い、同じ事を考えてるみたいだった。
「パパ達に姿勢悪くなるから使うなって言われてて……ダメなの……」
樹里さんに、迷惑かけたくないから、これからは僕達自力で手に入れような?なんて気持ちを込めつつ目配せすると、詩紋も首を縦に振った。
「色々あるんだなぁ~。あとは食材をいくつか買い足してお家帰ろうか?それとも何かお店みたい??」
しばらく近くにある商店街で色々もらったり、必要な食材を購入したり、楽しくお話をしたりして過ごした。
「お家帰る。今日詩紋も樹里さんと会ったばかりなのに、帰る場所になってくれるのが不思議で。心がすごくポカポカするね、雪……」
「僕も昨日からお世話になってて、体は辛かったけど、温かくてすごく居心地よくて、このままお別れは淋しいなって思ってました。だからすごく嬉しいです!」
素直に思ったままを伝える。
そしたら樹里さんが、優しく微笑んでくれた。
★★★
「私も二人とこのままお別れにならなくて済んで幸せだよ?帰ったらふたりの歓迎会しようか!買い出し済んだらお家に帰ろうね」
何が食べたいかなんて質問を受けつつ、足りない食材を買い足してから三人で帰路についた。