出逢い 雪視点2★
助けてくれた彼女は、僕をしばらく寝かせてから、卵にコーンを擦り潰した重湯のようなものに、卵やコーンを擦り潰し、煮合わせた様なモノを持ってきてくれた。
美味しそうな香りのするそれを、ゆっくりと顔を上げてご相伴に預かる。美味しくて幸せだった僕はピィョ…と無意識に声をあげてしまった。
彼女は相変わらず心配そうな顔で、「ご飯食べれるかな?」とか、「私達は君たちの言葉がわからないから、都合よく解釈しちゃうんだよ?ちょっとまってね……」
そう僕に声をかけて、小さな文鳥姿の僕の口でも食べやすいスプーンに、お粥をすくってよく冷ましてから、口元にご飯を出してくれる。
すごく綺麗で優しいお姉さんから、食べさせてもらうのは、ちょっと気恥ずかしかったけど、ありがたく食べさせて頂くことにした。
はくりと大きな口を開けて、重湯を食べてみると、卵やお米、コーンの自然な甘さや優しい味が、口いっぱいに広がって、なんだか温かい気持ちになった。
★★★
この人にとっては、たまたま死にそうな鳥を見かけただけだ。ここまでする必要はないだろうに。
そんなことを考えながら。何度も何度も口にご飯を運んでくれるのを口にする。さっきより少し妖力の回復が早い気がする。気のせいかな。
「ピィー……」
つい美味しくて嬉しくて、何度もおねだりをしてしまった。本来なら自分で食べれるのに、子供みたいだ。最後に口を拭ってくれたのも、大人しく受け入れる。
なんだか会ったばかりなのに、温かくて彼女のことは大好きだな……。そんなことを思いつつ、僕はまたウトウトと眠りに落ちていく。
「また明日もう少し元気なお顔を見せてね」
そんな言葉を、子守唄代わりに僕は深い眠りに落ちた。
★★★
「あの子は!?」
そんな声が聞こえて、急に僕のいる場所が少し明るくなった。
「元気そうで良かった!」
そんな声も聞こえた気がする。優しいなぁ。僕は、このお姉さんが大好きだなぁ。
そんな風に物思いにふけっていると、また話しかけられた。
「昨日と同じで良ければ、ご飯食べる?」
昨日のってあの美味しいやつ!
思わず「ピヨピヨ」とおねだりをしてしまう僕。
「準備してくるから待ってて?」
そう言って、僕の傷に触れないようになでてくれる彼女。彼女になら、あやかしの種をあげたいなぁ。無意識にそんなことを考えていた。
今日も甲斐甲斐しく、ご飯を僕の口元に運んでくれる。美味しくてがっつくと、「そんなに焦らなくても、また作ってあげるから…」なんて微笑んでくれる。
★★★
あやかしだと知っても、僕と一緒に居てくれないかな。
でも僕たちは絆の『証』である、あやかしの木なしには、簡単に人と喋ったり正体を明かしてはならない事になってる。僕達の掟の様なものだ。
遠くから見守るだけでもだめかな……。
ずっと人間のフリしてもいいから、お友達になってくれたら良いのに。そんな事を考えながら、まん丸い瞳を閉じる。
★★★
僕はまた寝ちゃったのかな。
だけど妖力は有り余るほどある。急激な妖力の増加に、焦るけどそのせいか僕の傷の回復がさらに早くなった。
『なんで!?……まさか!!』
願ってはいたけれど、実現するなんて思ってなかった。今僕が種を生み出して、彼女がこの短時間にあやかしの木を育てきったと言うこと?
夢じゃないの?あの人が僕を拒絶しなければ……、ずっとそばにいてもいいの?本当に夢じゃないのだろうか。
夢みたいな出来事に、僕はかなり浮かれていたみたい。彼女が戻ってきてくれた。あとになって僕は少し後悔することになる。