出逢い10★
★★★
「それじゃ暗くなる前に、買い物行こうか」
やっと満足して2人は人形に戻ってくれたけど、ウットリして抜け殻状態の雪くんと詩紋ちゃん。
「疲れちゃったなら仕方ないかな。車で1人で買い出し行ってくるから、お留守番頼めるかな?」
「「ついていく!」」
まずは大物の買い物を済ませたいかな。2人の文鳥時のおうちとか。ツボ巣もあった方がいいのかな??
「出来れば、開けたらスロープみたいになる、扉の方がいいかしら。開け放っしていられるケージがいいよね。いつも狭い思いはさせたくないし。人が来たとき以外は、出ていて問題ないからね……」
なんてことを話ながら、お財布とエコバッグ何種かを車に積み込み、後部座席においてるぬいぐるみをどけて、2人に後部座席に乗ってもらう。
『あれ?でもそういうのってういうのって、足引っ掛けたりして、怪我する事があるとか聞いたような?』
商品見ながら話せばいいか~と考え直し、カーナビでペットショップ併設のホームセンターを設定。
「シートベルトつけた??」
「「はーい」」
2人から元気に返事が来たので車を出す。
なんとなく2人は仲良しだけど、助手席の取り合いってなったら喧嘩しそうよね。なんとなく。多分これが正解。
★★★
大好きな癒やし系なアーティストの歌を流しながら、運転していると無意識にぴよぴよ歌ってる雪くん。やっぱり男の子のほうがお歌好きなのかな?
微妙に、節を合わせて歌ってるのが可愛らしくて癒やされる。
道中そんな事がありながら、ホームセンターに到着し、早速彼等の住まいの1つとなるケージを見る。
「気に入ったお家あったら教えてね。あ、こういうお家はどうかなって思ってたんだけど、どうかな?扉を開閉出来るタイプのケージ。怪我しちゃったりはしない??」
「素敵~~。素敵なパステルカラーのおうち!」
嬉しそうに少し大きめなケージを見つめ破顔する詩紋ちゃん。
「バードバスもつけたいね……って。あ、お風呂はいるなら必要ないかな……」
「うぐ……。水浴びは大好きなのでいつでも入れるなら入りたいですけど……。僕ら甘えすぎてます……」
「助けてほしい時にはちゃんと、手を差し伸べてくれるでしょう?2人が出来ることで、お互いに助けあえたらいいんじゃないかな?」
「樹里さん~~!」
感極まった様に2人が抱きついてきた。なんとなくだけど、この子達は今までそんなに人と、良好な関係を築けなかったのかな。この子達はすごく人の事も好きだと感じるのに、拒絶されたりがあったのかもしれない。
話は終わりとばかりに、頭をポンポンと軽く撫でて他の必要なものを買い物かごに入れていく。
★★★
「あ、ツボ巣は??」
そう聞くと2人は一瞬だけ嬉しそうな顔をしたのだけれど、表情を曇らせた。
「パパ達に姿勢悪くなるから使うなって言われてて……ダメなの……」
毎日の事じゃないからと思いつつも、お家の教育方針で駄目なのを使わせるのは、なにか違うし可哀想なのかなと諦めた。
「お家の都合って、色々あるんだなぁ~。あとは食材いくつか買い足してお家帰ろうか?それとも何かお店みたい??」
「お家帰る…。今日詩紋は、樹里さんと会ったばかりなのに、帰る場所になってくれるのが不思議で、心がすごくポカポカするよ。ねぇ、雪……」
「僕も昨日からお世話になってて、傷だらけで体は辛かったけど、温かくてすごく居心地よくて、このままお別れは淋しいなって思ってました。だから僕もすごく嬉しいです!」
少し瞳をうるませて、2人がそんなことを言うから、少し胸が詰まった。
★★★
「私も2人とこのまま、お別れにならなくて済んで幸せだよ?帰ったら2人の歓迎会しようか!買い出し済んだら私達のお家に帰ろうね」
何が食べたいか、何が飲みたいか。そんなことを話しながら、食材を買い足し3人でようやく帰路につく私達。