Hello World!
「いってきまーす!」
今日から宿屋で文字の練習が始まる。コパンに食べさせる干し肉とスルメを持ち、獣人村を出発した。昨日悪態をついていたヴェラートは朝の集まりにいなかった。どうやら先に行ったらしい。
今日もイェンスが俺の横につきながら道を走り、息を切らしながらブロックドロフ村の門をくぐる。村長さんに鐘を鳴らしてもらうと村人がわらわらと集まってきて、昨日と同じように俺とカーリンが魚と野菜の交換をした。昨日より緊張していないカーリンの計算はまだ拙いが、時代が違えば1000年に1人の愛らしさを持つアイドルにでもなれたんじゃないかと思うくらいの愛嬌でミスをカバーし、村人から間違いを修正されながら無事に今日も交換が完了した。
俺もカーリンほどではないが愛想よく対応し、もちろん間違えずに野菜と魚を交換できた。
「今日もイェンスが村の護衛についているが、帰りは2人で帰ってくるんだぞ。しっかり周りを見てな」
「ワン!」
「あぁ、そうだな。コパンも入れたら2人と1匹だな。コパンも必ず大きくしておくこと!」
ブロックドロフ村に着き、シュティローおじさんから昨日と同じ注意事項を聞かされる。一応素直に返事をしておこう。
「はい! しっかり周りを見て、コパンも大きくしてまっすぐ帰ります!」
カーリンも元気に返事をし、シュティローおじさんは満足そうに頷くと、次はイェンスと何やら話し始めた。多分仕事の話だろう。俺はカーリンに今日の予定を聞いてみる。
「カーリンは今日も村の中を歩くの?」
「うん! 歩いて色んな人とお話してくる! あとは鍛冶屋さんも見てみようかな」
「わかった。じゃあ、お昼にまた会おう」
「はーい! またあとでね!」
カーリンを見送ると、シュティローおじさんも出発したようだった。イェンスも持ち場へ移動し始めた。
「コパン、今日もツァールトさんのところで休もうね」
小さくなったコパンに手溜めた水を飲ませた後、宿屋に入り「おはようございます」と挨拶をする。返事を返してくれた店番の人がカウンターを開け、ツァールトの執務室をノックすると、中から「どうぞ」と声が聞こえた。
「ツァールトさん、おはようございます。今日から文字の練習、お願いします」
「おはよう、オリバー。そんなに緊張しなくて大丈夫だよ」
俺の敬語を緊張してると受け取ったのか、ツァールトが軽く笑う。
……もう少し砕けた方が良いのか。
今日も寝癖みたいな癖毛の金髪を手櫛で直しながら、木枠の付いた黒い板を2つと白くて一部尖った石を丸いテーブルの上に置いた。
俺はマントを頭から外し、コパンに干し肉をあげると椅子に座る。昨日と違い、椅子にはクッションが置いてあった。テーブルが高くてご飯を食べにくそうにしていたのを見て高さを調整してくれたようだ。ありがたい。
「じゃあ、今日は名前を書く練習をしてみようか。これが手習い板と、石筆だよ。書いた字を消すときは、この布を使ってね」
石筆の持ち方を教わり、ツァールトは俺から見て奥の方にある手習い板に俺の名前を書いてくれた。
「これがオリバーの名前。まずは自分の名前を書けるようになろうね。石筆の持ち方はこうだ」
……おぉ! これが俺の名前か! やっと字を書ける!
俺は右手に石筆を持たされ、握り方を指導される。石がいびつで持ちにくいが、ペンの持ち方とそう大差なかった。
「持てた! 書きます!」
「俺、カウンターにいるからわかんないことあったら聞いてね。ちゃんとマント付けて出るんだよ」
そう言い残すと、いつまでも直らない癖毛を撫でながら忙しそうに扉から出ていった。意外と放任な先生である。
……書いてある字を同じようになぞるだけなら確かに張り付く必要はないもんね、そんなことより字だよ、字!
「やったやったー! これが俺の名前かー!」
俺は喜んで何度も自分の名前を書く。何回か練習をしたらすぐ書けるようになり、日本語で『オリバー』と『小野上大和』を書いてみる。
……懐かしいな、日本語。母さんと陽菜、元気にしてるかな。
俺がもう会えないであろう二人のことを考えぼーっとしていると、コパンはツァールトがいないことを悟り、色んなところの匂いを嗅いでいた。家の中で粗相はしないので自由にさせてあげよう。
ぶんぶんと頭を振り、母さんと陽菜のことは考えず、再度この世界の言葉で『オリバー』の文字列を書き直す。
……これが今の俺の名前だ。オリバーとして生きるんだ。
気を取り直した俺は、他の人の名前の書き方も教えてもらいにカウンターに繋がる扉を開けた。
「ツァールトさん、名前書けるようになったよ。他の人の名前も教えてくれない?」
マントを抑え、カウンターに立っているツァールトに声をかけると、少し驚いていた。
「シュティローさんが言ってたとおり、頭が良いんだな……どれどれ。自分の名前を書いて見せて?」
俺が手習い板に自分の名前を書くと、それをじーっと見て合格を出す。
「……いいだろう。じゃあ、次は家族の名前ね」
そう言うと、シュティロー、ディータ、エイミー、カーリンの名前を書き出してくれた。渡された手習い板にはコパンの名前がない。
「あの、コパンも書いてください。コパンも家族だから」
「従魔も家族なのか?」
コパンは従魔という呼ばれ方をしているが、俺の中では立派な家族だ。何やら不思議そうな顔をしているツァールトに俺は「そうです」と答える。
「……そうなんだね。わかったよ」
カツカツと手習い板にコパンの名前を書いている音が響き、俺は首を傾げる。
「従魔は家族じゃないの?」
ツァールトは視線を宙に這わせて考える素振りを見せると、苦笑いを見せた。
「ここに泊まりに来る冒険者にも従魔を連れてる人はいるけど、従魔を家族のように扱う人はいないかな。基本外に出してるし、逃げないように紐で結んでたりするからね。物扱いする人もいれば、それなりに大切にしてる人もいたけど、家族扱いではなかったな」
なんと従魔を家の中に入れて家族のように大切に扱っているのは珍しいことらしい。「まさか家に入れてほしいと言われるとは思ってなかったよ」と言われてしまった。
「魔物は、従魔契約してなければ隙を見て逃げ出すらしいよ。コパンがオリバーとカーリンちゃんに懐いてるのにびっくりしたんだけど、きっと大切に育ててるからだね。家族と言い切る人を見るのは初めてだったから、驚いたんだ」
「そうだったんだ……コパンは賢くて強くて、俺の最高の相棒なんです!」
俺が胸を張ってそう言うと、ツァールトはぽかんとしていた。
「あんなに小さいのに強い? これから大きくなるんじゃないのか?」
「コパンはテレピコトゥルフって魔物で、魔力量によって体を大きくしたり小さくしたりできるんです。今は魔力量を少なくしてるので小さいけど、大きくすることもできるんです……シュティローおじさんから聞いてない?」
「そんな魔物だったのかい?! 何も聞いてなかったよ。ま、小さければ悪さをしても被害はそんなに大きくないし……あの大きさなら今まで通り部屋に入れていいよ。あ、お客さんだ。また書いたら持っておいで」
苦笑気味のツァールトはコパンの名前も書き足した手習い板を俺に手渡し、店番に戻った。
家族の名前を書いてもらうだけのはずが、思いもよらずよそでの従魔の扱いを初めて知った俺は、干し肉を美味しそうに食べているコパンを撫でる。
従魔契約しないと魔物は逃げると言っていたが、コパンが逃げる気配もないのは小さいうちから育てているからだろうか。
……ツァールトさんの言う通り、俺に懐いているからだったら嬉しいんだけど。
大和時代にお隣さんがシェパードを溺愛し家の中で飼っていたので、犬は家の中で飼うものだと思っていた。それにコパンは俺を乗せて走ってくれるし、狩りでは俺が矢を当てやすいように魔物や動物を追い立ててくれる最高の相棒だ。物扱いなんてできるはずがない。
また一つこの世界の常識が俺の常識とズレていることを再確認し小さくため息を吐いた俺は、家族の名前を書く練習に戻った。
「ふぃー、やっと事務仕事に戻れるー」
「お疲れ様です。今が一番忙しい時間なの?」
すぐ書けてしまった名前の練習に飽き、コパンの絵を書いていると店番を交代したツァールトが執務室に戻ってきた。
「来るお客さんは少ないんだけど、お客さんを見送って、部屋の掃除をしないといけないからね。俺が店番して、1人でも多く掃除に回ってもらう感じだな。一番の忙しさじゃないけど、地味に仕事が多いかな」
……なるほど、今がチェックアウトの時間なのか。ほどほどに忙しそうだな。
ほうほうと話を聞いてると、俺の髪を見てツァールトは溜息を吐いた。
「昨日も思ったけど、オリバーもカーリンちゃんも髪に艶とまとまりがあっていいなあ。昨日のシュティローさんもそうだったし……何か使ってるの?」
「シャンプーっていう、髪をツヤツヤにする液です」
「なにそれ?! もしかして獣人特有の道具?! いや、でもそしたらイェンスの髪もツヤツヤなはずだよな……オリバー、それ今持ってる?」
ぎょっとしたような顔になったり、目線が宙に浮いたり、くるくる表情を変えるツァールトが興味津々の顔でずずいっと俺を見つめるが、毎日シャンプーは持ち歩くものではないのでもちろん持っていない。俺は両手を挙げて持っていないアピールをする。
「シャンプーは持ち歩くものじゃないから今は持ってないです。……よければ明日、持ってきましょうか?」
……癖毛で悩んでるのかな? シャンプーで解決できるかわからないけど、言ってみるか。それに、反応が良ければ交換してほしい物があるんだよな……
「本当かい?! ぜひも……」
「ただし、条件があります」
……反応はよし! 俺が欲しい物、それは……コパンのご飯!!
俺がビシッと手を挙げ、話を遮ると、目を丸くしているツァールトに条件をつきつける。
「干し肉かなにか、コパンのご飯がほしいんだ。 だから、シャンプーと交換でくれない?」
「ほほう、交換条件とはおもしろいね。でも、干し肉なんかでいいのかい?」
驚き顔から徐々に口角は上がり顎をゆっくりと撫で、おもしろがっている顔になっている。
解体を覚えないといけないのは理解しているのだが、心のどこかでやりたくないと言っている自分もいるのだ。干し肉をシャンプーと交換で入手できたら俺が楽になるのだ。精神的に。
それにツァールトの奥さんのミルテが料理人なら、余った肉などで干し肉を作ってるだろう。干し肉『なんか』と言っているから、やはりたくさんあるんだと思う。
「俺が一生懸命作ったシャンプーだから。タダであげるほどうちに余裕はないんだ」
……一生懸命作ったのは石けんだけどね。でもコパンのご飯がゲットできるならシャンプーを作るのも頑張るよ!
俺が胸を張って貧乏を宣言すると、ツァールトはニヤリと笑い、俺に手を伸ばす。
「まあいいだろう。明日、楽しみにしてるよ!」
ツァールトと握手を交わした俺はコパンのご飯を確保するべく、今夜新たにシャンプーを作ることを決意した。
「あ、それと家族の名前も書けたから他の文字も教えて?」
「え、もう? 本当に覚えるのが速いな。じゃあ、昼食が終わったら基本の表記文字を覚えていこう」
「はい!」
ツァールトは事務仕事に取り掛かり、俺は再度家族の名前の書き取りを行っていたらミルテさんが料理を運んできてくれた。
「はーい、お待たせー。オリバーくん、こんにちは」
「こんにちは、ミルテさん。今日のお昼も美味しそうですね」
「あ、やっぱり美味しい匂いはここからだー! こんにちは、ツァールトさん! ミルテさん!」
匂いにつられたカーリンも集合し、昼ご飯をいただいた。ミルテは店に立つらしく、今日は昼食は一緒じゃなかった。昨日だけ顔合わせでお昼を一緒にとり、今日からはミルテ不在の昼食になるようだ。
昼食後は再度勉強が始まる。今度はまるでマンツーマンスタイルの家庭教師のようにツァールトが前の椅子に座り、手習い板を俺に見せながら文字を書き込んでいく。
「さて、文字を覚えていこうか。今日はこの5文字ね」
計26文字を書いた手習い板の、一番上の5文字を発音とともに教えられる。
俺もツァールト先生の後に続いて一文字ずつ発音しながら書いていく。さっきまで書いていた色んな人の名前にも使われた文字も出てきたので、すぐ覚えられた。
「覚えられました。次の5文字は?」
「……早すぎない?」
このオリバーの基本スペックが高いのか、簡単に文字を覚えられるのだ。できれば早く数字も書けるようになって石けん作りの配合量を字に起こしたいが、カーリンがいない今、数字を覚えたいとは言い出しにくい。今日はひたすら表記文字を覚えることに注力しよう。
「覚えるだけなんで、まだいけるよ。次、お願い!」
引きつった笑顔のツァールトは、続きの5文字を声に出して読み始めた。結局、全文字を読み上げてもらい、俺はそれを手習い板に書いて全部覚えた。「あ」と言ったら脳内でこの世界の文字で変換される。もう表記文字は完璧だ。
「……驚いた。思った以上に進んだよ。明日は数字を覚えるかい? それとも単語を覚えたい?」
「お昼までは数字で、昼以降は単語でもいい? カーリンも計算を覚えたいって言ってたから、お昼まで一緒に勉強して、昼以降は村を探索っていう風にするのはどうかなって思ったんだけど……」
多分、カーリンは勉強に飽きてしまうと思う。小さい頃の俺が漢字ドリルにすぐ飽きていたからわかる。単調な作業は飽きが早く来るのだ。体感時間ではあるけど、午前の勉強時間はだいたい1時間半くらいだと思う。少し休憩を挟んで一緒に勉強すればカーリンも続けられるんじゃないだろうか。
「カーリンちゃんが計算? どうして?」
「朝、村の人と魚と野菜を交換するんだけど、その計算が難しいみたいで。だから俺が計算を一緒に勉強しようって誘ったんだ」
俺はカーリンが、一気に魚と野菜を交換できないことを話すとツァールトは納得顔で頷いていた。
「そっかー、足し算がまだ難しいんだね。わかったよ、じゃあ午前中はカーリンちゃんも一緒に数字と計算の勉強をしよう」
「うん。それでお願いします。俺はカーリンが帰ってきたら、今日は帰るね。それまでこの表記文字を書いて覚えるよ」
「おう、じゃあ俺は仕事に戻るわー。明日、シャンプー……だっけ? 楽しみにしてるぞ!」
俺は表記文字の書き取りを再開し、カーリンが扉から顔を出したので寝ているコパンを起こし帰路につく。まだそんなに日が沈んでいるわけではないが、シャンプー作りもあるので早めに帰ることにしたのだ。
帰りの道中、走れるだけ走った後はコパンに乗せてもらい、余裕で走るカーリンと話しながら帰る。
「今日はどうだったの? 鍛冶屋さんおもしろかった?」
「鍛冶屋さんの中を見せてもらったんだけど、すごい熱い鉄を叩いててビックリしたー! 包丁ってこうやってできてるんだって知れて、おもしろかったよ。それで、欲しい物作ってあげるよって言われたんだけど、何も思いつかなくて。明日またおいでって言われたの」
なんと、鍛冶屋さんから貢物をもらえるくらい今日一日で仲良くなったらしい。あまりのコミュ力の高さに心の中でカーリンに拍手を送る。
「そ、そうなんだ……うーん、包丁ばっかり増えても仕方ないもんね。 ……あ! 石けんタネをかき回す棒は? 今の棒、もうそろそろ使えなくなるよね?」
「それいいね! 木じゃなくなれば、棒を作らなくてよくなるし……うん、それにする!」
今石けんタネをかき回す木の棒は、石けんタネを混ぜていると徐々に溶けていくので、混ぜにくくなるたびに俺たちがテキトーに木を削り作っている状況だ。カーリンが混ぜる担当で苦労しているのに、忘れてしまっていたようだ。
……泡立て器は流石に無理かな?
昨日鍛冶屋を見たとき、並んでいるのは農具や生活用品が多かった。細い金属製品は置いてなかったから、曲がった細い棒をたくさん使う泡立て器は難しそうだなと、思い至る。
「カーリンが混ぜやすいと思うものがあったらそれでもいいと思うけど、持ち手が長いフォークを2本作ってもらって、それを背中合わせにすれば今より混ぜやすくなるかもしれないよ」
とりあえず泡立て器に替わる案を言ってみたが、どうするかはカーリン次第だ。だが、確実に何の変哲もない棒よりはかき混ぜやすくなると思う。
カーリンが納得した返事をしたのを聞き、我らが獣人村まで楽しく話しながら帰った。
鰹に似たボニートという魚を使った晩ご飯をカーリンと作り終えた。俺はシャンプーを作って、それをツァールトにあげることになったと、カーリンに説明する。
「コパンの昼ご飯がかかってるんだ。ディータおばさんとエイミーが帰ってきたら教えに来てくれない? あっちの家でシャンプー作ってるからさ」
「うん、いいよ。……10割のやつを使うの?」
「いや、半々のかな。その方が泡切れも良かったし」
俺がそう言うと、カーリンもうんうんと頷く。
この半々とか、10割と言うのはアワフキ貝の粉末を使う割合のことだ。
考えるのを放棄して石けんを使った翌日にカーリンが作った石けんができあがり、それもシャンプーにしたところ、どうにも泡立ちが悪いことに気付いたのが発端だった。カーリンのシャンプーは大和時代に使っていた手作りシャンプーと同じくらい泡立ちが悪かった。石けんの違いを探ったところ、どうやらアワフキ貝の貝殻の粉末を使ったかどうかが大きな違いだった。
俺が作った石けんはアワフキ貝の粉末を使用し、カーリンの石けんはシュティローの家にあった色んな貝の詰め合わせ粉末を使用していたのだ。石けんとしての泡立ちも、シャンプーとしての泡立ちにも明らかに差が出た。
この違いを発見してから、アワフキ貝とそれ以外の貝の粉末を混ぜて使用し泡立ちを調整することにしたのだ。
俺はアワフキ貝10割のシャンプーが大和時代に使っていたものに似ているので好きだが、デメリットは何度も流さないと泡が残ることだ。そこで貝の粉末を半々に混ぜたものを作ったら、今の生活環境で使いやすいシャンプーが完成した。髪の長いディータおばさんからは特に好評だった。
「もうオーランの実、なくなったよね? リモーネの実で作ったら?」
「うん、そうしたい……持ってっていいかな?」
ボニートの叩きを作ってから、うちにストックされるようになったレモンに似たリモーネの実。一つくらいもらっても構わないだろうか。
「実はあっちの家にこっそり1つ持ってったから、使ってもいいよ。その代わり、わたしの分も作ってくれる?」
家に誰もいないのになぜかヒソヒソ話の声量で話すのがおもしろい。俺もわざと声量を抑えて返事をした。
「わかった。カーリンの分も作るね。材料的にギリギリだからエイミーたちには内緒だよ」
こくこくと真剣な顔で頷くカーリンを家に残し、俺はオリバーの家で石けんを作り始めた。火を起こすのが面倒で、水に手をつっこみ魔力を使って水温を挙げていく。削った石けんに出来上がったお湯をかけ、トロトロに溶けたらパルメの実の油を入れたらカーリンが隠していたリモーネの実を4分の1だけもらい、香り付けもしておく。
……まずはお試し分の量でいいか。ツァールトさんと、ミルテさんの分。リモーネの香りが好きかどうかもわからないし。
ほのかにレモンに似た香りがするシャンプーを小瓶に詰め、カーリンの分を別の瓶に取り分けたら完成だ。
……よし、明日は頑張って干し肉をゲットするぞ!!
オリバーが勉強中、コパンは部屋で寝ていますがまだ体力が余っています。
オリバーとともに走り込みをしていたのでオリバーを乗せてブロックドロフ村と獣人村を往復するくらいなら余裕です。




