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獣人村で目覚めたら  作者: ニガヒジキ
第1章 獣人村のオリバー
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石けんを使ってみよう!

 

「おお! 見てよカーリン! ほら、泡立った!」


「本当だー! しかも全然臭くないよ! すごーい!」


「ピリピリもしないしこれ、完成だよ。 固形石けん出来上がり!」


 石けんを乾燥させてから日は経ち、ついに乾燥完了の日。森から帰った俺とカーリンはオリバーの家に来て、石けんの出来を確認しているところだ。小型犬サイズのコパンは骨に夢中でかぶりついている。


 バシャバシャと手を洗いながら、俺は感動に打ち震えていた。


 ……長かった。こんなにかかると思ってなかった! でも、やっとできたぞ!


 初めて出来上がった石けんは華やかな香りもなければ、強烈な動物臭さもない。何の香りもついていない、ただの石けんだ。

 でも、それで十分。俺はこの何の変哲もない石けんを待ち望んでいたのだ。

 何度も失敗し、苦労した日々を思い出した俺は、この間のようにまた涙ぐんでしまう。


「あはは、また泣いてるの? ……でも、やったね、オリバー」

「うぅ……仕方ないだろ! やっと出来上がったんだから! 手伝ってくれてありがとうね、カーリン」


 カーリンはにこーっと笑いかけてくれたが、徐々に唇を尖らせ物置の方に顔を向ける。


「わたしの石けんも、早く出来ないかなあ……」


 カーリンが作ったオーランの実の香りの石けんは、明日乾燥が終わる予定だ。


……一日くらい早くても大丈夫かなあ?


「使ってみる? ピリピリするかもだけど……」


 カーリンは随分と悩んだ末、首をぶんぶんと横に振った。


「ううん、ちゃんと待つ! 石けんがちゃんとできるってわかったし、あと一日くらいちゃんと待つ!」


 そう宣言すると、カーリンは物置の方へ歩いていった。また石けんを見に行くようだ。今日だけで何回見ているんだろうか。


「カーリンが一生懸命混ぜてできた石けんだし、もしよかったら、俺が作ったやつを今日の夜使ってみようよ!」


 ここ最近、ほぼ毎日水浴びをしている俺は、今日から石鹸を使って身体を洗いたいのだ。一緒に作ってくれたカーリンが石けんを使えず、俺一人だけが使うのはさすがに気が引ける。ここでうんと言ってもらえた方が俺は気兼ねなく石けんを使えるのだ。ぜひイエスと言ってほしい。


「んー、それよりも髪をツヤツヤにする液を使ってみたいかも。石けんが出来上がれば作れるんでしょ? オーランの香りの液を使ってみたいんだー」


「あ、忘れてた」


……カーリンとエイミーにシャンプーを作る約束をしてたんだった!! あぶねー!!


 ふくれっ面になるだけで済ませてくれるカーリンに指摘されてよかったと心の底から安堵した俺は、シャンプー作りの準備に取り掛かった。


……実は、石けんからシャンプーを作ったことはあるんだよなー。石けん作りに比べれば楽勝、楽勝!


 作り方はとても簡単で、石けんをすりおろし、お湯で温めクリーム状になるまで溶かし、植物油を入れる。あとは好みの香りをつければ、完成だ。

 大和時代、夜中に風呂に入ろうとしたらシャンプーが切れていることに気付いて、動画投稿サイトで調べながら自力で作ったのだ。泡立ちは既製品のシャンプーには劣るが、結構簡単にできたのでその後も何度か作った。


……あれは俺よりも母さんが気に入って使ってたなあ。


「オリバー、早く作ってよ! 髪がツヤツヤになる液!」


 母さんのことを思い出してぼーっとしてしまっていた。カーリンに急かされ現実に戻った俺は、大和時代のときの母さんの思い出をぐぐっと奥にしまい込み、手早くシャンプー作りの作業に入った。



「よし! 髪をツヤツヤにする液……その名も【シャンプー】のできあがり!! カーリンの好きなオーランの実を絞って入れたよ。いい匂いがするはず! でもエイミーに渡す前に、一応使ってみたいな。出来が悪かったら作り直したいし……」


「今水浴びしちゃえば良くない? もう森にも行かないんだし」


「あ、そっか。夜まで待つ必要ないもんね。よし、水汲みに行こう!」


 嬉しそうなカーリンと居ても立ってもいられない俺は、桶に水を入れ、石けん、シャンプー、布、洗ったばかりの服を急いで用意する。

 今日はカーリンにお願いして、俺の背中を洗ってもらうことにした。

 髪の洗い方と石けんの使い方を教えるため俺は盥の中ですっぽんぽんだが、カーリンには服を着たまま見ててもらう。


……もう何だっていいや。綺麗になるなら我が息子を見られてもかまわない! 五歳だし許されるっしょ!


 あんなに裸を見られることに抵抗があったのに、今は石けんができた嬉しさが勝り羞恥心はどこかに吹き飛んでいた。それにカーリンは妹のようなものだ。大和時代に妹と風呂に入っていたことを思い出せば、見られるのはそんなに恥ずかしくなかった。


……では、まずは頭から! やっふー!


 桶の水で髪を濡らして、とろりとしたシャンプーを手に伸ばすと、髪に塗りつけるようにして指を動かす。


「おおー! ちゃんと洗える!」


……はあぁぁぁあっん!!! 念願のシャンプー!! 気持ち良い!!


 感動にうち震えながらリズミカルにわしわしと頭皮を洗っていると、俺はあることに気付いた。


……うーん……なんでこんなに泡立ちいいの? 市販レベルじゃね?


 俺が大和時代に作ったお手製シャンプーは、こんなに泡立ちは良くなかった。まるでリンスで洗っているかのような感覚に陥るシャンプーだったのに、今さっき作ったシャンプーはとにかく泡立ちの手応えがすごい。


「オリバー、頭に泡がもこもこしてる! この液すごいね!」


……まあいっか! 異世界だし日本と同じとは限らないから! あー髪洗うの楽しー!


 テンションが上がって知能が下がった今、俺はあまり深く考えない。いや、考えられない。頭を洗うのが気持ちいいから。しかもこのとき、カーリンに説明することすらも忘れてたことに後から気づいた。


 俺はシャンプーが頭皮に残らないよう、何度もじゃばじゃば桶の水で流し、髪をかきあげる。とても頭皮がさっぱりし、頭が軽くなったように感じる。

 今回作ったシャンプーは少し植物油が多かったようだ。余った髪を手ぐしで上に上げたとき、わずかにしっとりしているように感じた。


……使い心地も良かったし、これはイイ感じじゃん?


 今まで動くと頭皮の脂臭さがふわっと臭ってきていたのに、今はそれがない。

 オレンジの香りに似た柑橘系のさっぱりとした香りがほんのりと髪から漂ってきて、嬉しい気持ちになった。シャンプーは大成功だ。


「髪の毛がサラサラになってる! すごいよオリバー! なんか髪の色が変わった? 綺麗な紺色になってるよ!」


 カーリンが盥の周りをぐるぐる回り、俺をあらゆる方向から褒めてくれてさらに嬉しい気持ちが込み上がり、「うへへ」と気持ち悪い声が出てしまった。

 テンションがぐぐんと上がる。


……さあ、お次は身体だ! 石けんの出番!


「これでどうやって身体洗うの? 固くて洗いにくいよ?」


「違うよ、泡立てて洗うんだよ。こうやって……」


 石けんで腕を洗うジェスチャーをしたカーリンに、俺は布で泡立て自分の腕を洗いながら使い方を説明する。


……石けんも日本で使ってたのと謙遜ないくらい泡立つなあ。 ……まあいっか! 良いことには変わりないし! 考えない考えない!


「こうやって泡立てたら、この布で身体を洗うんだ。で、水でゆすぐと……」


 左腕を石けんで洗い水をかけると、俺は声が出せなくなった。最近日焼けして黒くなったなあと思っていたが、水を見ると真っ白な石鹸の泡に汚れが混じっていたのだ。

 そして実際褐色の肌ではあったが、左右の腕でくすみ具合が違う。ワントーン上がったような感じだったのだ。動画投稿サイトにビフォーアフターをアップすれば、きっと百万回再生も夢じゃなかっただろう。


「こんなに汚れてたんだ……オリバー、毎日水浴びしてたのに……」


「な? 石けんってすごいだろ? さ、これで俺の背中を洗ってくれない?」


 手の届かないところをカーリンに洗ってもらい、とてもさっぱりした気分で「ありがとう」とカーリンに声をかけようと振り返ると、俺は目玉が飛び出そうになってしまった。


 俺の目に映ったのは、カーリンのすっぽんぽん。

 まだ発達していない幼子の裸が目の前に現れた。




「ふぉおおぉぉあああぁぁああーーーーーー!!!!!!」

……お前も脱ぐんかあぁぁぁあーーーーーーいぃ!!!!!




「そんな叫んでどうしたの? びちゃびちゃになっちゃったから、わたしもこのまま入る! わたしの頭と背中も洗ってー!」


 大和時代に彼女いない歴=年齢。クソ暑い家。石けんができて上がるテンション。

 カーリンがいくら幼子で妹のような存在の家族とは言え、女の子の裸に耐性のない俺にとってそれは刺激が強かったようだ。

 色々な要因が重なり、衝撃的な光景を目の当たりにした俺は体が爆発した気がした。主に顔と下半身が。


「え?! オリバー、鼻血出てるよ! 大丈夫?!」


「へぁ?! だ、だだだだ、だいじょうぶぶぶです!!」


 動揺で上手く口が回っていない俺は、カーリンに対してなぜか敬語で喋ってしまった。慌てて適当な布で鼻を押さえ、身をかがめながら手早く身体の泡を流していく。


「どうしたんだろうね? 鼻から血なんて……本当に大丈夫?」


……裸のまま覗き込まないで!! 原因はカーリンだから!!


「ほ、ほんとに大丈夫! お、おれおれ俺すぐあがるから、あっちのタオル、もも、も持ってきてくれる?」


「いいけど……なんか変だよ? オリバー」


「あはは、鼻血出て焦っちゃったのかなー、あははは……」


 俺は身体を拭き終えると、木靴を履いて急いで服を着る。石けんの洗い心地は最高だった。裸の衝撃が強すぎてあんまり実感はないけど。


「オリバー、髪の洗い方ってこれでいいの?」

 俺が着替えいている間に自分の水浴びの準備をしていたカーリンは、早速頭を洗い始めた。すごい。全く動揺していない。マイペースだ。

 俺は鼻に布を詰め、なるべく平静を装いながら洗い方をレクチャーしていく。


……カーリンは家族! カーリンは家族!! カーリンは家族!!! 背中と頭を洗うだけだ!!!!


 俺は今まで唱えたこともない念仏を頭の中で唱え爆発を鎮めると、カーリンの頭と背中を無事に洗いきった。



カーリンの水浴びのあと、コパンのこともシャンプーで洗ってあげます。

カーリンが泡を流してあげ、徐々に盥に溜まっていく水を怖がるコパンは、オリバーの腕にしがみついていました。


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