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獣人村で目覚めたら  作者: ニガヒジキ
第1章 獣人村のオリバー
20/62

仲直り

 

 アワフキ貝の心臓らしき部分には短剣が突き刺さっていた。もう死んでいるらしい。貝の中央にあった貝柱は、俺が両手で抱えられそうな大きさで、思わず二度見した。


 ニクラスは神経毒でまだ動けないようで、貝に挟まれていた右腕は火傷したように赤くただれている。とても痛そうだ。


「オリバー! お前強いんだな! あとあの青い火かっこいいな! なあ、もう一回やってくれよ」


 ケバルトにバシバシと背中を叩かれ、いまにも倒れそうになってる俺を見かねたエイミーが、「辞めなさい!」とチョップして止めてくれた。ケバルトは噂通り、力加減がわからないようだ。

 俺は背中を擦りながら頭を押さえたケバルトに話しかけた。


「ニクラスは大丈夫?」


「あぁ、神経毒はおとなしくしてたらそのうち抜ける。でも右腕はしばらく使いものにならねえな。まあ、あのままだったら溶けるところだったから腕がついてるだけでも良かったよ」


……溶ける前に助け出せて本当に良かった! 腕が溶けるの見たくない!


 ケバルトは俺に身体ごと向くと、真剣な表情で「本当にありがとう」と言ってくれた。

 ライナーもニクラスの側で、泣きながら「ありがとう、ありがとう」と言って、カーリンに慰められていた。カーリンマジ天使。


「オリバーだけじゃなく、みんなが来てくれて助かった。多分、俺らだけじゃ助けられなかったから。」


「いや、いいんだ。この後、ライナーに貝殻を砕くの手伝ってもらうから。だから、このアワフキ貝の貝殻、俺にくれる?」


 俺があっけらかんと現金なことを言うと、ケバルトは不思議そうな顔をした。


「貝殻? オリバーがほしいなら別にいいけど……そんなんでいいのか? おい、ライナー。家にニクラスを連れてって休ませてくれ。俺が解体する」


「でも、俺がした約束だから……」


「俺が解体した方が早いだろ? 送ったら帰ってきてくれ。俺も手伝っていいだろ、オリバー?」


「うん、もちろんいいよ。むしろ助かる」


「よし、じゃああの森のところまでアワフキ貝を運ぶぞ。ここだと風に煽られて貝殻が飛んでっちまう」


 ライナーはニクラスを家に送りに行き、ケバルト、カーリン、エイミーはアワフキ貝を森に運んでくれた。ヘロヘロの俺はコパンとゆっくりついていく。ケバルトはテキパキとアワフキ貝を解体し、どうせだったら持ってけと、海水で洗った大きい貝柱と青色の魔石もくれた。魔石はあの大きな図体に似合わず小ぶりだった。


……ケバルト、めっちゃいいやつー! 最初がイメージ悪かったからグングン株が上がってるよ!


 俺がケバルトの男気に感動していると、横で「もうお腹すいたから、ここでちょっと貝柱食べない?」とカーリンが言い出した。俺は全力でうなずいた。魔力を使い果たしてお腹がペコペコなのだ。この後の貝殻砕きの作業を考えると、今食べておきたい。


「火で焼けば貝殻を砕きやすくなるからな。俺も賛成だ」


 全員意見が一致したのでカーリンとコパンは木切れを拾いに行き、エイミーは石を積み上げ窯を作り始めた。動けない俺は枝を竹串のように先端を削り、小さく切った貝柱を何個も刺していっている。


 エイミーが手早く木を組んで火を付けると、俺は窯の開けたところに貝柱串を刺していく。窯の上には、小さく割ったアワフキ貝の欠片が乗せられた。さっき俺の全身火だるま攻撃で焼いた部分を砕いて割り、四つの欠片にしたうちの一つだ。大きすぎて全部は乗っからなかった。


 いい具合に焼けた貝柱串をみんなで食べていると、ケバルトが不思議そうに話しかけてきた。


「なあ、さっきのあの全身から火を出すやつ、どうやったんだ?」


 ケバルトが言ってるのは多分、貝殻を早く燃やすために、俺が全身火だるまになったあれのことだろう。


……ただ全身から火属性を出しただけだよな? 特に変わったことはしていない気が……


「身体強化をして、そのあと全身から火を出すイメージをしたんだ。俺ができたんだから、みんなできるんじゃないの?」


「いや、そんなことできないぞ? できるか?」


 エイミーとカーリンにそう問いかけると、二人とも首を横に振る。


「あたしもあれは初めて見た。手から火を出すか、身体強化をするか、どっちかしかできないわよ」


 カーリンはそれを聞き、同意していた。


「獣人じゃない、人間にはそういうことができるのかもしれないけど、少なくとも獣人はできないわ。属性を自由自在に形作るのも難しいのに、全身でコントロールなんてなおのこと無理よ」


「混血児ってすごいんだな! 俺、青い火も驚いたけど全身から火を出すなんてもっと驚いた!」


「わたしも見てたけど、すんごく綺麗だったよ! オリバーの周りに火がゆらゆらしてて、青い太陽みたいだった!」


 大きな火をイメージして全身火だるまになったせいか、あの攻撃は結構魔力消費が大きかった。

 だけど、他の獣人に比べてまだ身体強化も使いこなせていない俺にとっては攻撃だけじゃなく、防御にも使える技だと思う。

 しかも、火属性以外にも他の属性で応用ができるだろう。


……火だるま攻撃ってダサいし『属性鎧(ぞくせいよろい)』でいいか。鎧ならカッコイイだろう。


「あれ、属性鎧って言うんだ。カッコイイでしょ?」


 俺が得意げにそう言うと三人共哀れみと衝撃を足して二で割ったような表情をしていた。解せぬ。


「オリバーがそれでいいならいいと思うけど……ねえ?」

「オリバーしか使えないだろうし、好きなように呼べばいいと思うけどダサいわね……」

「そうだな、ちょっとダサいな」


 カーリン、エイミー、ケバルトが文句を言ってるが俺はもう決めた。異論は認めない。


「わかりやすいからいいんだ! 属性鎧! これで決定!」


 わいわい盛り上がっていると、ニクラスを家に置いたライナーが木のハンマーを盥に入れて帰ってきた。

 後で家に道具を取りに行こうと思ってたから助かった、案外気が利くな、と思ったらライナーは自分の分しかハンマーを持ってきてなかった。

 マイナス1万点だ。俺の気分を一回上げさせるな。貝柱串を二個あげようと思ったが一個しかやらん。



 俺の体力が回復し、いよいよ貝殻砕きの作業開始。

 俺、ケバルト、ライナーは貝殻砕き、エイミー、カーリン、コパンは本来の目的である潮干狩りに戻った。

 貝をカッスカスになるまで焼きながら近くにあった石で砕いたが、あんまり細かく砕きすぎると風で飛んでいったり、地面に混じったりしてもったいなかった。ある程度の大きさに貝殻を砕いたら、持って帰って粉々にすることにした。


 夕方にはあの大きいアワフキ貝の砕き作業が終わり、なんと盥に山盛りになるくらい砕いた貝殻が溜まった。頬が勝手に上がっていく。


……倒すのが大変だったけど貝殻が一気に集まって嬉しいな。


 そしてこのまま、一旦みんなで俺の家まで帰ることにした。浜で割った貝殻を、ライナーと半分にするのだ。シュティロー家の盥は使っているので、オリバー家の盥に入れてもらった。


「ちゃんと粉々にして渡すから。二人とも、本当に悪かった。あと、ニクラスを助けてくれてありがとう」


 ライナーは真面目な顔で玄関前に立つ俺たち三人にそう言うと、カーリンが思い出したように「わたし、まだ何もお願いしてなかったや」と言い出した。

 ライナーの「何でもする」発言は、確かにカーリンにも向けられていた。蹴られた本人なんだから当たり前だろう。


 ライナーの顔には、どんな仕返しをされるのだろうという恐れが見て取れた。

 少し身構えているようにし、ゴクリと喉を鳴らしてカーリンを見つめている。

 視線の先のカーリンは、真剣な表情でこう言い放った。


「わたしと仲直りして」


「え?」


 さっきまでの戦々恐々とした顔から一転、耳をピンと立たせたライナーは驚きの表情に変わっていた。カーリンの表情は変わらず真剣だ。


「いいの? 俺と仲直りって……」


 ライナーが俺をちらっと見るが、知らんぷりだ。俺は仲直りするつもりはない。

 すると、カーリンは進み出て、ライナーの顔を窺うように上目遣いで見た。


「いいの! わたし、仲悪いの嫌なんだもん。ライナーは、いや?」


……カーリン! 上目遣いで「いや?」はやばいって! ライナーの顔がふにゃふにゃになってるぞ!


 つぶらな瞳で見つめるカーリンにハートを射抜かれたらしいライナーは、顔を真っ赤にし、腑抜けた顔で何度も「いやじゃない!」と答える。後ろからエイミーが吹き出すのが聞こえた。多分、エイミーからもライナーのデレデレな顔が見えたんだろう。


 俺は許す気なんかないぞ、とデレデレしたライナーに視線を向けると、今度はカーリンが俺に攻撃を仕掛けてきた。

 俺の方が頭一つ分くらい小さいから、上目遣いはできないだろう。


……俺はあんな腑抜けた表情は絶対に見せない!!


 と思っていたらなんとカーリンは俺の隣にピタッとくっつき、お辞儀をするように横から俺の顔を覗き込んできた。


「オリバーも、仲直りでいい?」


……カーリン、君は魔性の女だよ! どこで覚えたのそれ?! 獣人の耳も相まって可愛さSSR!! くそー、俺は仲直りするつもりなんてないのに……


「ね、いいよね?」


潤んだ瞳で見つめられ、俺の口は勝手に開いた。


「仲直りでいいです」


 身内とは言え、お世辞抜きに可愛いカーリンの畳み掛けるような攻撃に俺は負けた。歯を食いしばり、頑張って表情筋を保ちながらカーリンにそう返答したが、ケバルトは口を押さえて笑いを堪えている。多分、顔がにやけたと思う。


……くそぉ!! ケバルトのやつ笑いやがってええええ!!!


「やったあ! じゃあこれで仲直りだね! ライナー、今度ニクラスも連れてきてね」


 カーリンしか見えていないライナーはうんうんとうなずくと、「じゃあ、俺達帰るわ」と未だに笑いを堪えているケバルトに引きずられるようにして帰っていた。


 後日、右腕にボロ布を巻き付けたニクラスとライナーが、俺の家に貝の粉末と魚を届けに来た。なんとニクラスも貝砕きを手伝ってくれたらしい。

 そして、ニクラスはカーリンにしっかり謝り、しっかり上目遣いで仲直りをご所望され、惚けた顔で俺達と仲直りをした。


……許す気なんてなかったけど、全身身体強化できるようになったのはライナー達のおかげでもあるから、まあいっか。二人とも、カーリンの可愛さに感謝しろよ!!



オリバー以外は食料(貝の食べられる部分)の方が貝殻より価値のあるものだと思っています。なので、ケバルトもライナーも貝殻を欲しがるオリバーの気持ちがよくわかりません。

カーリンとエイミーは、あんまり貢献できなかったので口出しすることはせず、オリバーの好きにさせています。

貝柱を独り占めしないオリバーに好感を持ったケバルトは、今後オリバーに絡んでいきます。

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