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獣人村で目覚めたら  作者: ニガヒジキ
第1章 獣人村のオリバー
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コパンの魔力コントロール

 

 夕食後に帰ってきたシュティローに作った靴を見せたところ、やっぱり靴底に注目していた。厚い靴底が珍しいようだ。

 そのあと靴下の話をしたらシュティローにも「夏なのに?」と言われた。


「雨の中水たまりに突っ込んだことがあるが、濡れても特に臭くなったことはないなあ。自分の魔力で覆われてるし、自分に不具合のあることは起こらないぞ? オリバーは面白い発想をするな」


「シュティローおじさんたちは獣人だからそうなのかもしれないけど、俺は混血だからちゃんと機能しないかも知れないでしょ? 俺だけ足臭かったらやだもん!」


「お、おう、そうか。そんなに臭いのが嫌だったんだな。俺はオリバーを応援するよ」


 わしわしと撫でられていると、コパンがちょこちょこ歩いてきた。


「ワンワン!」


「コパン、トイレかな? 外出ようね」


 コパンをご飯のあとに外に出してたらトイレを覚えたらしく、トイレをしたいときは外に出して!と吠えるようになった。顔を見たり、吠える時間帯でなんとなくわかるのだ。

 コパンはトイレを数回で覚え、お手も伏せもお座りもすぐできるようになった。無駄吠えもしないし、聞いていたとおり大変賢い魔物だと思う。


「もう怪我は大丈夫そうか?」


 部屋に戻るとシュティローがコパンの後ろ足を見た。


「うん、毎日癒やしをかけてるから治りが良かったみたい。ちょっと痩せてるけど、もう元気になったと思う」


 俺は決意した通り、コパンのために毎日癒やしをかけていた。靴作りで魔力を流すのに慣れたからか、癒やしをかけるのは結構上達したと思う。昨日は縫合してもあんまり痛くなさそうにしていた。


「そうか、じゃあそろそろ魔力コントロールを教えても良いかもな」


「身体の大きさを変えられるやつ?」


「あぁ、そうだ。今ちょっとやってみるか」


 そう言うと、シュティローは寝室に入り元俺の荷物籠だったコパンの寝床へと向かった。赤い魔石をひょいっと取り出されたのを見て、コパンは宝物を取られると思っているのか、シュティローの近くでソワソワしている。


……お尻可愛いなあ。


 コパンは気が気じゃないと思うが、シュティローが悪いことをするはずがない。俺も後を追い、安心してお尻……ではなく、やり取りを見てたら、シュティローがおもむろにコパンの額の魔石に、赤い魔石をくっつけた。


「コパン、この魔石に入ってる魔力を使えばお前はもっと強くなれるぞ。まずはお前の親の魔力で少しずつ慣れような。オリバー、こんな風に、額に魔石をつけると魔力がコパンに入っていくから」


 すると、コパンの大きさが少しずつ変わっていった。小型犬ほどの大きさだった身体が、徐々に大きくなっている。


……え? どこまで大きくなるの?


 まだまだ大きくなるコパンはあるときを境に、「うぅ……」と辛そうな声を出し始めた。


「最初はこのくらいにしておくか……。コパン、頑張ったな! 偉いぞー」


 小型犬から中型犬くらいの大きさになったコパンは、ちょっと苦しそうに目を瞑り床に伏せながらシュティローに撫でられている。


「コパンは大丈夫なの? なんか苦しんでない?」


「魔力を与えて、身体が大きくなっただろう? 食べすぎの状態に似て、最初はちょっと苦しくなるんだ。だから、すぐ大きくしたいからって一気にたくさん魔力をやるなよ。ちょっとずつ魔力を与えて、慣らしていってやるんだ。そうすればオリバーが倒したエーバーよりも大きくなるぞ」


「あのエーバーより大きくなるんだ……もちろんちょっとずつ大きくしていくよ! コパンはもう大切な家族だから」


「そうかそうか……。 優しいな、オリバーは。俺は嬉しいぞ!」


 ニッと広角が上がり優しい表情のシュティローを見て、俺はこの人が父親代わりで本当に良かったと思った。


「そうだ。この魔石に、ちょっとずつオリバーの魔力も注いでおくんだ。この魔石に入ってる魔力がこのくらいになったら、オリバーの魔力をこの辺りまで入れるのが目安だな。わかるか?」


 さっきまで真っ赤だった魔石の二割くらいが透明になっていた。赤い液体が波打っていて、おそらくそれが魔力の液体だろうと想像がついた。

 シュティローはコパンから手を離すと、魔石の半分あたりを指で指し、俺が注ぐべき魔力量を親指と人差指で幅を作り表した。


……魔石の中の魔力が半分になったら、五分の一を目安に俺の魔力を入れていくのね。オーケーオーケー。


「わかったよ。でも、俺の魔力をいきなりあげちゃだめなの?」


「コパンがオリバーの魔力を受け付けないんだ。魔力が入りにくくて無駄になるし、コパンが苦しいだけだからな。まずは親の魔力で慣らしてやって、徐々にオリバーの魔力混ぜていけば、コパンに魔力を与えられるようになるんだ」


「逆にコパンの魔力を減らしたいときはどうするの?」


「そのときは、空の魔石が別で必要になる。今はまだこの赤い魔石を使ってればいいが、もっと小さくしたいときはこないだ倒したエーバーの魔石を使えばいいさ」


 シュティローはそう言いながら物置の方を指差した。どうやらエーバーの魔石は物置に入っているらしい。解体中に寝てたからわからなかったけど。


……コパンにも、自分の装備にも俺の魔力が必要なのか……


 冒険者になりたいとは言ったけど、俺の魔力の負担がすごいな、とちょっと思ったりしてると、コパンがゆっくりと起き上がりおすわりポーズをした。小型犬サイズのときは顔も幼かったが、中型犬サイズになると少しだけ顔がキリッとしたように見える。

 もう苦しそうではない様子に俺は胸を撫で下ろし、コパンの顎を撫でてやると気持ち良さそうな表情になった。


「次の風の日まで毎日今くらいの大きさになるように魔力をやるんだ。できるか?」


「……シュティローおじさん、風の日って何?」


「えぇ?! 何って言われても……風の日は風の日だろ?水の日の次に来る日だぞ?」


……初耳なんだけど? 曜日だと思えばよろしいですか?


 記憶の中に曜日の情報はなく、オリバーは曜日の感覚を気にせず生きていたんだろうな、と軽くため息を吐いた。


「俺、今まで何の日か意識して生きてなかったからわかんなかった。教えてくれる?」


 シュティローおじさんは苦笑いしながら教えてくれた。


「光の日、闇の日、火の日、水の日、風の日、土の日、命の日と繰り返してるんだ。命の日が安息日で、一般的には働かなくていい日だ。ディータがその日は一日家にいるだろう?」


 いるだろう?と言われても、カレンダーどころかそもそも文字も見かけないし、今日が何の日かなんて聞かなかったからわからない。


「あー……そうだったかなあ? うん、そんな気がするかも」


 こっちの世界に来てから、まだ二週間も経ってない。ディータおばさんが定期的に休んでるなんてわからなかった。


「ま、とにかく今日が風の日だから次の風の日まで、コパンに魔力を与えて今くらいの大きさにする練習をするんだ。そしたら次の風の日まで、もう少し大きくなるよう魔力を与えて、繰り返していくんだぞ。朝魔力を与えて、夜寝る前に戻してやればここで寝れるしな」


 そう言いながらシュティローは赤い魔石をコパンの額につけ、魔力を引き出し始めた。すると、するすると小さくなり、いつもの見慣れた小さくて黒くて可愛いコパンに戻った。


「頑張れよ、ご主人様!」


「はい!」


「それと明日は身体強化の訓練をするようにエイミーに言っておいたから」


「……は、はい?」


……俺の魔力量足りるかな?めっちゃお腹すくんじゃない?


 さらっと訓練があることを告げられたが、耐えられるだろうか。


「冒険者になりたいんだろ? 街に行くまではコパンに乗るとして、オリバーが戦う力を付けないといけないからな」


「そ、そうだね……死なないように頑張ります」


 今日も念のためコパンの後ろ足に癒やしをかけてから、俺は布団に入る。


……明日はコパンの魔力コントロールをやって、靴下を作って、蒸れないか試してみて、エイミーと身体強化の特訓をして……


 明日のスケジュールを考えていると、オリバーはすぐ眠りについた。家に引きこもっていたが、魔力を使い疲れていたようだ。


 翌日からコパンの魔力コントロールが始まり、身体強化の特訓も始まるのだった。


「魔力コントロール頑張るぞ!」

「ワウ!」

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