餓鬼
百物語二十三話になります
一一二九の怪談百物語↓
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近所のスーパーでアルバイトをしていた時の話だ。
当時の僕は大学生。昼は大学、夕方はスーパーでレジ打ちのアルバイトをしていた。
事件が起きたのは、夜の9時30分だったかな。客もいないし、そろそろ閉店作業に取り掛かろうとしていた時だった。
「あぁ、いらっしゃいませぇ」
店の中に4人の客が入ってきた。中年の男女に、俺と同い年くらいの男女。4人は店に入ると、何も言わずに惣菜コーナーへ向かった。
「…セール品を買いにきたのかな?」
俺は惣菜コーナーの方を気にしながら、4人がレジに来るのを待っていた。しばらくすると…
「た、大変だ!○○君も来てくれ!」
店の奥から店長と警備員さんが血相を変えて飛び出してきた。俺はレジを飛び出すと、店長たちの後を追って惣菜コーナーへ向かった。
「うわ!?な、なんだぁ…?」
惣菜コーナーはめちゃくちゃに荒らされており、床にはパックから出された惣菜が散乱していた。
「店長…これって…」
店長に聞いてみると、事務室の監視カメラに惣菜コーナーの惣菜を勝手に貪り食う4人が映し出されていたそうだ。慌てて店内に入ってみると、食い荒らされた惣菜だけが残されており、あの4人の姿はなかった。
しばらくすると、店長が呼んだ警察官たちがやってきたので、一緒に監視カメラへ記録された映像を見ることにした。監視カメラの映像には、あの4人の異常な行動が鮮明に映し出されていた。
4人の男女が片っ端から置いてある惣菜や弁当を貪り食っている。箸もスプーンも使わず、素手で食べ物を掴んでは、自分の口の中へ放り込んでいく。
「汚い食べ方だなぁ…」
異常が起きたのはここからだ。惣菜を貪り食っている4人の身体が、少しずつ透明になってきた。数秒後、4人の姿はすっかり見えなくなってしまった。さらに数秒後、現場に駆けつけた俺たちの姿が映し出される。
このような事件が、なんと3日も続いたのだ。
警備員を置いたり、スタッフの巡回を増やしたりもしたが、あの4人はなぜかすり抜けてしまう。客が少ない時間に一瞬で現れたと思ったら、すぐに惣菜や弁当を食べて消えてしまう…
スーパーの閉店後、全員で対策を考えていると、スーパーの前にある大きな家へ大勢の警察と報道陣が集まっていることに気がついた。
スタッフの1人が近くの警察に確認したところ、中で家族4人の死体が見つかったそうだ。
家族は家に入ってきた強盗に襲われたらしく、暴行を受けてから家の地下室に閉じ込められていたらしい。最悪なことに、家族は次の日から2週間の海外旅行へ出かけることになっていた。
地下室へ閉じ込められた家族は、全身を縄で縛られており、暴行を受けてまともに声すら出せない状況だった。その後、家族は全員「餓死」してしまったらしい…
「なぁ、知ってるか?飢え死にした人間は『餓鬼』になるって話があるそうだ。どれだけ食べても満足することができない亡者なんだと…」
店長は店で余った弁当や総菜を店の裏に置くと、静かに手を合わせた。
「これが1番の供養になるんだって」
翌日、4人がスーパーへ現れることは2度となかった。裏に置かれた弁当と惣菜は、すべて消えていた。
どうも 作者の一一二九です。
年末は仕事がかなり忙しく、投稿できない日が続きそうです…
落ち着いたらまた頑張るので、楽しみにされている方がいたらごめんなさい!