初めての戦闘2
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「あれ?召喚獣は使わないんですね」
外に出てお互いに準備が完了したとき、クロコはこちらを不思議そうに見ながら言ってきた。
「まあな、一対一じゃないと不公平だろ。そうだあいつにも見ててもらおう。【召喚】;玉藻」
やる気満々といった様子で玉藻が現れた。しかし今回は戦わないと知ると、がっかりした様子でこちらを見てくる。
「悪いって。次はちゃんと戦わせるから、今回は見てるだけな?」
不承不承といった様子で玉藻は後ろに下がった。その時宿からジャックタチが出てきた。何かを感じ取ったのか、ベルセポネは玉藻を見ながらこちらに話しかけてきた。
「主様、このメスの獣は一体誰ですか?どうしてかそいつから主様のにおいがするのですが」
「そういえば言ってなかったな、この子は玉藻。俺の初めての召喚獣だ」
「なるほど主様の初めての相手ですか…」
玉藻は凝視してくるベルセポネをにらみ返す。しばらくすると互いに少しずつ近づいた。
「玉藻さん。初めまして。私はベルセポネと言います。同じ主の召喚獣同士よろしくお願いしますね」
「クゥーン!」
どうやら二人は仲良くやっていけそうだ。
「待たせたな。じゃあ始めようか」
「いいですよ。ではこちらから挑戦状を出しますね」
このゲームでは、町中においてダメージは発生しないので町中で対戦するには挑戦状システムを使わなくてはいけない。ちなみに町の外でプレイヤーやNPCにダメージを与えると体から黄色のオーラのような靄が出るようになるらしい。
『【プレイヤー;クロコ】から挑戦状が来ました。挑戦を受けますか?』『Yes/No』
まよわずYesを押した。
『Yesを選択しましたので、戦闘フィールドに移動します』
しばらくすると周りに何もない殺風景な場所に俺はいた。仲間はどうやら別の場所から見ているようで、周りにあるスクリーンに顔だけが映っている。
『戦闘開始まであと1分です』
目の前のスクリーンではカウントダウンが始まっている。俺は腰につけてある刀を抜くと、下段に構えた。正面に見えるクロコは弓を構えている。
『残り10秒』
足に力をこめ、前かがみの体制になる。
『5・4・3・2・1、戦闘開始です。』
戦闘が始まると一気にクロコの下に走る。相手は弓使い、中距離から遠距離は相手の得意としているところ。ならこちらは近距離に持ち込むしかない。
相手は後ろに下がりながら矢を撃ってくる。あたるものは刀ではじき、当たらないものやかする程度なら無視する。
「なんで、当たんないんですかねぇ!」
「はっ!そんな見え見えの矢なんて当たるかよ!」
そして1割ほどダメージを食らったところでようやくクロコを攻撃範囲にとらえた。
「くらえ!」
下段に構えていた刀を振り上げる。どうにか当てたがクロコが後ろに下がったため直撃とはいかない。
「今です!」
がら空きの体めがけてクロコは弓を射る。何もしなければ直撃するコースだ。俺はそれをあえて体で受ける。
「なっ!?」
一瞬固まったクロコの動きを見逃さず、振り上げた刀を振り下ろした。回避行動をとれなかったクロコの肩から入った刀は横腹に抜けていく。
クロコは切られた後とっさに距離をとった。互いのHPはどちらも5割を切ったほどだ。
「まさか、矢をよけるのではなく一歩詰めてくるなんて予想外ですよ」
「あそこで距離を取られたら厄介だったからな。おかげで俺とお前のHPはほとんど一緒だ」
話しながらもクロコとの距離を詰めようとするが、こちらを警戒してかなかなか距離を詰めさせてくれない。
「今回もこちらから行きますよ!」
またもや中距離からクロコが矢を撃ってくる。ほとんどさっきと変わらない光景だが、クロコがこちらの動きになれたのかよけなければ命中する矢の数か確実に増えている。
そのためクロコとの距離を詰めるのがさらに厳しくなっている。
「さあ、どうします?降参してもいいんですよ?」
「するわけねえだろ!俺は変態に負けたなんてレッテルはいらないんだよ!」
「なっ!まだそんなこと言いますか!いいでしょうコテンパンにしてあげますよ!」
クロコを挑発して、少しでも矢の軌道がぶれればよかったのだが一切ぶれない。
一度大きくクロコとの距離をとった。距離が離れたためクロコが撃ってくる矢の量は格段に減る。クロコの方を見ながら、俺は大きく一回息を吐く。そして限界まで頭を動かすイメージをもちながら、強く刀を握る。すると飛んでくる矢の速さがゆっくりになった。
「行くぞ」
クロコから飛んでくる矢をかいくぐりながらクロコに近づく。クロコはより多くの矢を撃ってくるが、矢と矢の間にある小さな隙間に体をねじ込みながら前進する。
「なんで、当たんないんですか!」
そしてもう少しで攻撃範囲に入るとき、俺は素早く前方斜め前に体を沈ませることでクロコの視界から消えた。
四季流刀術 百舌鳥
一瞬俺を見失ったクロコの首に向けて突きを放つ。間一髪クロコは顔を傾けることでよけた。しかし、刀の刃は突きを放った時点ですでに首の方を向いている。
四季流刀術 燕
突きを放つために前に傾けた重心を後ろに戻すとき、刀を引きながら重心を戻す。
「がはっ!」
二発目はしっかりとクロコに当て、クロコのHPはあと1割ほどだ。クロコは大きく後ろの跳ぶと切られた首を気にしながら弓を構えた。
「驚きましたよ、よけたはずなのにあなたの攻撃が当たってるんですから」
「まあ、そういう技だしな」
「なら次は私のとっておきを見せてあげますよ」
そういうと何やら小さくつぶやきながら弓を放った。その弓を俺がはじく瞬間、
「砂塵!」
そうクロコが言うとはじこうとしていた矢が爆発し、なぜか爆発した矢から砂が降ってきた。その砂は一瞬とはいえ俺の視界を遮った。
視界が戻りクロコの方を見ると、クロコの姿はフィールドのどこにもなかった。