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プロットができてきたので、この話の内容をだいぶ変えました。
プロット真っ白でその場テンションで小説なんか書くもんじゃないね。
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ぐちゃり、ぐちゃり、と肉を断つ音が、森の中に静かに響いている。
私はオークを解体していた。
オーク共の肉は奴らが雑食だからかクソまずいが、栄養も量もある。
こんなのでも私の大切な栄養源だ。
このオークの集落はそこそこデカかったから、それなりの量のオークを狩れた。
しかし結構な数を狩り損ねてしまったのは痛い。
奴ら、野蛮で馬鹿だから全員突っ込んでくると踏んでたんだが、あんな一目散に逃げられるとは思っていなかった。
クソッタレ。
逃げるとわかってりゃいちいち1匹1匹いたぶって殺さなかったんだかな。
こいつら結構イイ声で鳴くからな。
数少ない私のストレス発散方だ。
まあ数逃がしたせいで発散した分のストレスがまた溜まっているが。
ああくそ。
もうひとつ集落探しに行くか?
そんなどうでもいいことを考えながら、解体したオークの肉を、集落に残っていた焚き火で焼いていく。
――ふと、クソ犬が視界に入り、この世界に来たばかりの頃を思い出す。
最初のころはこいつ1匹殺すのにもだいぶ苦労していた。
殺しを、躊躇すらしていた。
殺さなきゃ殺されるってのに。
しかしそれでもよく生き残れてたもんだとも思う。
なんたってあの頃、魔力の存在を知らなかったんだからな。
信じらんねえ。
いや、知らなかった、というのはいささか語弊があるか。
この世界に来たときから、つまり最初から、私は魔力の存在を知っていた。
感じていた。
ずっと身体にまとわりついていた違和感、最初は男性から女性になったからだと思っていたが、実際は魔力の蓄積によるものだった。
まあ、もといた世界に魔力なんてものは存在しなかったし、つまり新たな概念というわけだから、それを認識し、理解し、利用し、洗練するのにかなりの時間がかかってしまったのは、仕方のないことか。
「魔力」ってのも便宜上そう呼んでるだけだしな。
感覚的に操作でき、さまざまに変換可能なちょうべんりエネルギー。
もといた世界に欲しかったよ。
――もといた世界に欲しかった、か。
エネルギーに関わる仕事でもしていたのかね、私は。
この世界に来たばかりの頃が、もうずいぶん遠く昔のことのように感じる。
いや、実際それなりの年月が経っているんだろう。
もういちいち数えちゃいないが。
魔力の扱い方もだいたい分かって、この森に生息していたモンスター、例えばオークとかオーガとかなんかよくわからんデカイ動物とか、そいつらももはや敵ではなくなった。
でもそれだけだ。
私は未だ、この森から抜けだせずにいる。
そして、自分が何者かも思い出せていない。
ずっと、こんなサバイバル生活を続けている。
正直、頭がおかしくなりそうだ。
いっそ狂えてしまえたほうが、楽になれるのだろうか。
私は未だに、かすかに残った自分の人間性に引き摺られているのだろう。
すがりついているのだろう。
殺生をすることに何も感じなくなったことに、何も感じていない自分を。
心のどこかで、否定しているのだろう。
……やはり、今日はもう休もう。
こういう考えはどツボに嵌まると危険だ。
また明日、オークの集落を探しに――
――遠くで、オークと何かが戦闘を始めた音が聞こえた。
しかも、かすかに聞こえるこの声は。
人間だ。
私はオークが持っていた巨大な石斧をひっつかむと、声がした方向に走り出した。