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 ――現状を整理しよう。


 こんなところでパニックになったってなんの特もない。落ち着け。無理にでも。


 現状、回りを見渡してもあるのは木、木、木。人の気配は先ほどざっとは確認したが、改めて見ても全くない。


 とりあえず人を探しに探索を――



 ――いや待て。


 本当にここが異世界だとしたら、ファンタジックでデンジャラスなモンスターがいても不思議じゃない。


 それでなくとも、もとの世界にいたような熊や猪でさえ、遭えば死を覚悟するような危険な相手だ。

 私の周りにはこれといってそのような気配を感じないことを考えると、むやみにここから動くのは愚策になりかねない。


 ――とはいえ、このままここにいても得られるもは無さそうでもある。

 食料や水は早めに目処を立てたいし、日があるうちにとりあえずの寝床も見つけたい。


 おそらく異世界で、森の中、少女の姿で一人。


 そう思うと現状が絶望的過ぎて泣きたくなるけれど、そう情けない真似もできない。なんたって私は――


 私、私は――


 私は、














 私は――どんな人間だった?


 私は、ごくありふれた会社員で、男性で、それで、それで――









 ――思い、出せない。


 名前も。


 住所も。


 務めていた会社の名前も。


 家族も。友達も。同僚も。上司も。


 思い出も学歴も年齢も生年月日も家も成績も朝飯も晩飯も身長も体重も座高も視力も顔も身体も髪も目も鼻も口も――






 








 "私"にかかわることだけが。


 なにも。


 思い出せない。





 私は、誰だ?












△▼△▼△

























 きゅるる、と、お腹が鳴った。


 その音でふと正気を取り戻すと、すでに日は落ち、月明かりが木々を淡く照らしていた。


 おそらくショックで放心していたのだろう。


 情けない。


 しかし、事態を考えると、仕方ないのかもしれない。


 今日はもう、考えるのはよそう。


 私はそのまま目をつむり、地面に身体を投げ出した。


話が進まないんだが?

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