Side story カール・ヴァリスト2
授業は退屈の一言だった、王宮ではもっと難しい内容を習っていた為であった。
「…魔力とは今でも詳しい事はよくわかっていない、しかし実在し、感じることができる」
教卓の前に教師が立ち魔力の基礎について授業をしている。
「自身にある魔力量は産まれた時から決まっていると言われていたが近年その理論が正しくない可能性が出てきた…」
カールは授業以外のことを考えていた。
(王都での生活は窮屈で思わず留学をしてしまいましたが、卒業したらその王都に戻らなければならないなんて…)
カールはこの学び舎を卒業してからの事を考え気分が落ち込む。
「火の魔法は水で消すことができ、魔法ではない現象と密接に関わり合っているのではと言われている…」
(私は…)
「むっ時間か、何かわからないことがあれば私に聞くように、それでは」
昼の時間を告げる鐘が都に鳴り響いた。
カールはそそくさと立ち上がり学食へ向かった。
(早く行かないと座れなくなってしまいますからね)
カールは一度少し遅れて学食に行き、席に座れない事があった。
学食は鐘が鳴ったばかりなのにとても混んでいた、入り口には今日のメニューが二つ書かれた立て看板があった。
(Aは肉でBは魚ね、今日は魚を食べましょうか)
なぜ2種類しか無いのかは生徒が沢山いるため個別に対応ができないためである。
カールはメニューを決めて列に並ぶ。
待っている間に周りを見渡す。
(ユフィーレ様はお昼はどうしてるのかしら?)
この学園では昼は自由にしていいので、学食に行く者や、売店で食べ物を買う者、自分の家から弁当を持参する者そして外に食べに行く者様々である。
「はい!次の人!」
元気の良い掛け声でおばさんが次の人を呼ぶ。
「Bセット一つ」
「銅貨3枚だよ!」
銅貨を3枚渡し前へ進む。
ほとんど待たずに料理が出てくる。
「はいよBセットお待ち」
「うむ」
カールはお盆を受け取ると空いている席を探す。
「カール殿下ーここ空いてますよー」
生徒の誰かが席を空けてくれた。
「ああ、すまないな」
席に着くとカールはお昼を食べ始めた。
午後の授業は選択授業だったので午前よりはましだった。
「それではこの魔法陣のどこが間違っているかわかるか?、えっとカール殿下よろしくお願いいたします」
「うむ、この魔法陣は右端の発動術式の一部が書かれておらず、魔力を食われるだけで特に何も起き起きはしないだろう」
「お見事です、カール殿下が仰ったように発動術式の一部が書かれていないそのため…」
この授業は王宮で習う範囲と同じか少し先なため退屈する事はなかった。
「そして魔法陣を頭の中に思い浮かべ詠唱をすると魔法を発動することができる」
このクラスにはカール殿下を含めて10人しかいない、ほとんどが貴族で他は天才しかいなくこの授業がそれだけ難しいと物語っている。
「詠唱より難しい無詠唱は出来る人が限られている、もちろん私もできない、詠唱することにより一部術式を無視することができる、無詠唱で発動する場合は術式を立体に考えなければならない…」
「おっと、時間が経つのは早いな、授業はここまでとする解散」
夕方の鐘が鳴り本日の授業が終わる。
(さて、少し生徒会室に顔を出しますか)
カールは生徒会室へと歩き出した。
日入りの鐘が鳴り学園の最終下校時刻を告げる。
家に帰る者、寮に帰るもの、街へ繰り出すものがいる。
カール殿下は校門前でネルを待っていた。
「すみません少々遅れました!」
ネルは早足でこちらに向かってきた。
「ああ、それでは帰ろうか」
カールはネルに続いて歩き出す。
「どうでした今日の学園は?」
「いつも通りだ」
その言葉に隠された意味はネルはわかっていた、つまらないと…。
「そうでしたか…」
「ネルよ、すまぬが市場に寄ってはくれぬか?」
「ああ、はいはい、いつもの気分転換ですね」
角を曲がり市場の方へ歩いて行った。
市場の通りに出るとそこは人で溢れかえっていた。
「うむうむ、今日も色々な店が出ているな!」
先ほどとは違いカールのテンションはうなぎのぼりであった。
「いつも言ってますがあまり離れないでくださいね?」
そうネルが釘をさす。
「わかっておる!」
ネルの話も聞かず気になるものへ走り出していた。
「ちょっ!カール殿下言ったそばから…」
ネルはこの一瞬でカール殿下を見失ってしまった。
一方カールは市場を練り歩いてた。
(このネックレスは南の方のデザインなのかしら)
カールはネルの約束を忘れ一人アクセサリー屋の前で南にある国の流行の品を見ていた。
カールは品物を見終わると次の店へと歩き出した。
少し入り組んだ道へと入るとカールは立ち止まった。
「うむ…道に迷った」
カールは暗い裏道に迷い込んでしまう。
すると、カールは誰かに口を塞がれた。
(え?なに?)
「動くんじゃねえぞ死にたくなければな」
喉元に何か冷たいものが当たっている。それが何かは想像がついた。
「お前さんカールだな、ちょいと確かめさせともらうぞっ!」
誰かに服を脱がされる。
「きゃーだれっ…むぐー!」
「騒ぐんじゃねえ」
カールは気付いた時には袋の中に入れられていた。
(ああ、ネルの忠告を真剣に聞いておけばこんな事にならなかったのに)
カールの目から涙が溢れる。
すると外から声が聞こえる。
「何をしているのですか?」
可愛らしい女の子の声だった。
(だっだめよこっちに来ちゃ!)
「んーんー」
しかしカールの努力は報われず、女の子は捕まってしまったらしい。
(ああ、神さま私は自分の性別に嘘をつきながら生きてきました、その罰がこれですか)
その時よく聞く声が聞こえてくる。
(ネルが助けに来てくれた!)
最後の気力を振り絞り暴れる。
一緒んの浮遊感の後、横からネルの声が聞こえる。
(助かった…)
袋を開けられてすぐ目に付いた人物はネルとこんな場所にはいないはずのユフィーレだった。
(ああ神さま、こんな事があっていいのでしょうか。)
それがユフィーレと知り合うきっかけとなった。
明日は誤字脱字の編集のため投稿ができません、ご了承ください。