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Side story カール・ヴァリスト

このお話は2分割いたします。

ヴァリスト王国には3人の王子がいる事になっている。


第1王子ライオネル・ヴァリスト、ヴァリスト王の血筋を色濃く受け継ぎ、まさに獅子のような人である。剣の腕に優れており、自らの腕で民を守る王族の鏡である。


第2王子エドワード・ヴァリスト、第二王妃の血を色濃く受け継ぎ、魔力の扱いにとても優れている、彼はとても賢く内政は彼が舵を取っている。


第3王子カール・ヴァリスト一番の問題児、第1王妃エリザベスの子。


エリザベスは結婚当初から中々子を作れずにいた。


子供ができず役5年の月日が経ち他の貴族の反発もあったため第二王妃メアリーを迎える事となった。


メアリーはすぐに子を授かる事ができ第1、第2王子を出産する、そしてその数年後ついにエリザベスに子ができる、しかし産まれてきたのは女の子であった。


それは望まれぬ生であり、しかも出産の後遺症で次に子をなす事はできなくなった。


それに悲しんだエリザベスは娘を息子として育てることを決意する。


女の子は死んだ事となり、第三王子として民に発表された。兄弟仲はとても良く貴族達はこれでこの国も安泰だと皆噂した。


そして王子達はすくすくと成長し、第三王子が18歳となり成人の儀を執り行った年、悲劇が幕を上げる。



それは束の間の平和だった、成人の儀の晩メアリーの食事に毒が盛られる事件が発生する、犠牲になったのは毒味役の人であった。



それからも度々第二王妃は命を狙われる事となり、このままでは第二王妃の命が危ないと思った王子達は現在第三王子の留学しているファリスへと秘密裏に第二王妃の住所を移し第二王妃が病死したと発表した。




カールはいつもと変わらない日常を過ごしていた。



「お義母さま、それでは行ってきます」



この人の存在以外は。



「ええ、行ってらっしゃい、遅くならないように帰ってくるのよ?」



「わかりました」



横にいた近衛騎士にも元王妃は声をかける。



「ネルさん、カールの事よろしくお願いしますね?」



「お任せくださいこの命に代えてもお守りいたします」



「ふふ、そこまで頑張らなくてもいいのよ、でもお願いね」



「はっ!」



「あっ、少し待って」



「どうしましたお義母さま?」



「髪に寝癖がついているわ、だめよ女の子は髪が命なのだから」



メアリーはどこからか櫛を取り出すと髪をとかし始めた。



「私は男です…男として振舞っているので大丈夫です」



カールは少し言葉に詰まり難しい顔をしながら髪をとかされる。



「それでもよ、はい、直ったわそれじゃあ行ってらっしゃい」



そう言って見送りをしてくれた。


それから少し歩いたところでネルが喋り出した。



「カール様、前から聞きたかった事があるのですがなぜ馬車で通学しないのですか?他の貴族の方はほとんどが馬車で通学をしていますが…」



その後の言葉は聞き取れないほど小声であった。



「毎朝毎夕、フル装備の鎧を着て歩くのとても大変なんですよ?しかもこれは儀礼用でめっちゃ重いんですよ…あれですかお嬢様はSなんですか?それともアレですか私をいじめるのが楽し…」



「他は他、我は我だ、歩く事で普段馬車からは見えない景色がよく見える」



他の人にも聞かれてもいいように言葉遣いが男になっていた。



「我は王族だからと言う理由だけで無知にはなりたくはない、まずは我らを支える民の事をよく知らなければ王と言うものはわかるまい」



「ただ単に馬車の移動がつまらないだけでは?」



「なっ何を言うかそそそっそんなことは無いぞ」



「はあ…、まあいいですけれどダイエットにはちょうどいいですしね」



「ん?そんなに太っては無いだろう?」



「太ってはいないですけれどこのままだと太りそうなんです」



「ああ、なるほど」



カールにもその原因がわかってしまった。

その原因は一月前にこの都にやってきたメアリーが作る食事にあった。



「なぜ…なぜあれほどまでに料理が上手いのですか!」



メアリーの食事はついつい食べ過ぎてしまうほど美味であった、しかも食後には必ずデザートがついてくる。


本人曰く



「あらあら、育ち盛りなのだから遠慮しないでどんどん食べてね」



メアリーはこの都についてから数日は大人しくしていたが、ネル一人では手が回っていないことに気づき、いつのまにか料理を作る担当になり、そして炊事洗濯、家事全般をこなすようになっていった。


「私はもう婚期を逃すほどの年なんですよ!育ち盛りじゃありません!でも作ってもらっている手前文句は言えないですし、しかもあの方は元王妃様ですよね?、なぜ私より家事スキルが高いのですか!?」



「お義母さまは元々は庶民の出だ、彼女は回復魔法の使い手で王都では聖女と呼ばれ、功績が認めら貴族となった珍しい方だ」



「今まで作らせてもらえなかったから久し振りに腕がなるわ〜」との事。



そんなたわいのない話をしている間に学園の校門前に到着した。




「それではカール殿下夕方にはお迎えにあがりますので」



「うむ、よろしく頼む」



ネルは綺麗な礼をして立ち去る。


(よし、今日も頑張りましょう!)


そしてカールは校門をくぐった。



「カール殿下おはようございます」



「ああ、おはよう」



「カール殿下、本日もご機嫌麗しゅう」



「うむ」



次々に挨拶をされる、これは王族だからではなくカールの人柄ゆえだろう。


お人好しで困っていることがあればついつい手を出しまう、そのせいで今では生徒会長をしている。


そんな王子は全校生徒の憧れの的だった。


そんな王子の朝の密やかな楽しみは彼を見ることである。


カールは毎朝遠回りをして花壇のそばを通り校舎の中に入る。


そう、お目当の人物はユフィーレであった。


彼は1ヶ月前の新学期に入学をしてきた、その見た目からすぐに有名人となり今では多くのファンがいる。


その一人がカールである。



校門から花壇に向かうとそこには数人の人影が見えた。


気づかれないように遠くからユフィーレを見ている男女数人がいる。


(今日もいらっしゃるみたいね)


カール殿下もその集団にこっそりと合流し気づかれないように遠くから寝ているユフィーレを見る。



「美しい…」



そんな声が周りから聞こえる。


(ユフィーレ様、私の王子様…いえ私が王子でユフィーレ様がお姫様です)


そんな訳のわからないことが頭の中で繰り広げられている。


(どう見ても男の子には見えません、神はなぜこんな大罪を犯したのですか)


カールの脳内暴走は止まらない。


(花の姫君、まさにその通りです始めにその名前をつけた人に敬意を送ります)



「…きゃっ!」



周りからそんな小さな声が上がると同時にユフィーレが体勢を変え横になる。


(脇チラですわ!レアですわ!きゃーーーー)


誰かこの人を止めてくれ。


しかしそんな幸せの時間もあっという間に過ぎてしまう。


(そろそろ教室に向かわないと遅刻してしまいます、王族たるもの遅刻をしては民に示しがつきませんからね)


周りの人たちも次々に教室へと向かうのと一緒にカールは名残惜しそうに同じ方向へと歩き出した。


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