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分岐点

カール殿下とは昨日知り合う事になったその時の話をしよう、時は昨日の夕刻まで遡る。


ユフィーレの住んでいる家はファリスの外壁を抜けた外にあるため一度外に出なければならない。


学園の帰り道、いつものように食料の買い出しをするため少し大通りを外れて歩いていた。



「らっしゃーい、今日はいい肉が入ってるよー」



「そこのお姉さん、このアクセサリーはいかがかな、貴方にならとても似合いますよ!」



「馬車が通るぞー」



市場では様々な国から集められた品が至る所で売られていた、今日もいつものようにとても賑やかだった。


(肉は昨日買ったから今日は野菜を買を買って炒め物にしようかな)


ユフィーレは晩御飯のレシピを考えながら歩いていく。


すると突然路地裏の方から女性の悲鳴と男の声が聞こえて来た。



「きゃーだれっ…むぐー!」



「騒ぐんじゃねえ…」



これは面倒なことになったとユフィーレは心の中で思いながら、丁度近くにいた男性に声をかけた。



「すみません警備隊を読んできてもらえませんか?」



「君はどうするんだ?」



「これでも冒険者の端くれです、警備隊が来るまで時間を稼ぎます」



腰の短剣を男性に見せる。



「おっおう、気おつけてな無理はするなよ、ダメそうだったらすぐに逃げるんだぞ」



心配そうに男性が何度も確認をしてくる。



「はい、無理はできるだけはしません、後はよろしくお願いします」



そして声が聞こえた方向へ走り出した。



ここで少し冒険者について語ろう、冒険者とは主に魔物と戦ってお金を稼ぐ職業を指す、しかし此処ではその説明は少し正しくない、ユフィーレは一応冒険者ではあるが違う方法でお金を稼いでいる。


主に都内の雑用や街道の近くに生えている物の採取など危険が少ない依頼をこなしている。


なぜかと言うとユフィーレはまだ12歳、討伐依頼などは危険な為、冒険者ギルド側が依頼を絞っている。


冒険者ギルドとは冒険者の派遣を行なっている場所で、そこに自分を登録して、冒険者ギルドに来ている依頼を受ける所である。


詳しくはまたの機会に語ろう、話に戻って。



現在ユフィーレは路地をゆっくりと進んでいた、この先の曲がり角から喋り声が聞こえて来る


建物に張り付きこっそりと曲がり角に近づき路地を覗き込む、すると5人の身なりの悪い男たちが女の子を拘束していた。



「上物だぜこりゃ、男かと思ったら服を脱がしたら女だったとはな!あいつに聞いた通りだったぜ!」



「ああ、それに金も沢山持ってるしよ、いいこと尽くしだぜ!」



「安心しろ、俺たちがたっぷり可愛がった後に奴隷商に売ってやるからな」



「んっんー!」



女の子は縄で手際よく縛られ袋に詰められていた。


その動きからは慣れを感じる、もしかすると有名なお尋ね者かもしれないとユフィーレは冷や汗が背中を伝う。


(うん?でもあの女の子どこかで見た事あるような…)


ユフィーレは学園で何度か見かけたことがあるような気がした。


学園の生徒なら流石にこの状況を見て見ぬ振りはできないと考えた、このままでは女の子が連れ去れれてしまうので意を決し、震える足に無理矢理力を入れ男たちに向かって行った。



「何をしているのですか?」



震える声で喋りかけると男達は一斉に武器を引き抜きこちらを振り向いた。


それと同時にユフィーレの体は硬直した。



「ガキが!驚かせるんじゃね!うん?フードでよく見えなかったがお前も上玉じゃねえか、今日は運がいいぜ、おいおいお嬢ちゃん、こんな所で会ったのが運の尽きだぜ」



(驚いたのはこっちの方なんですけど!?)


男の一人が武器を持ったままこちらに近づいてくる。



「こっ、こっちに来ないでください!」



思わず後ずさってしまう。



「動くなよ、それと口の聞き方に気をつけな!ガキでも容赦はしないぜ、長生きはしたいだろ?」



「…確かに長生きはしたいですけど」



男はユフィーレの首元に剣を近づける、ユフィーレは足が震えてしまい立っているのがやっとだった。。



「へっへ、綺麗な足だな」



男は体を弄ってきた。


(ひ〜気持ち悪い)


ちょうどその時、後ろから複数の足音が聞こえてきた。


(思ったより早く警備隊の人が来てくれた!)


男達はまだ足音には気づいてないらしい。


気をそらすために話を続ける。



「貴方達は一つ間違っている事があるので一つ訂正させてください」



「あ?」



5人の男達はこちらを注目した。



「私は…」





「男です!」



声と同時にユフィーレを弄っていた身なりの悪い男が宙を飛んだ。



「よく時間を稼いでくれた、後は私たちに任せろ」



青い鎧を着た騎士が片手剣を振り下ろした格好でそこへいた。



「警備隊の方はその女の子を守ってください」



「了解しました!」



(王国近衛騎士!?)


ユフィーレはとても驚いていた、年に一度開催される王都の王国誕生祭の時に王様の警護をしていた特徴的な青い鎧を着た近衛騎士が目の前に突如現れたからだ。


しかしその周りは都で見かける警備隊の人が二人いた。


(偶然居合わせた?)



「覚悟しろ、いや覚悟をしなくてもいい、どの道お縄についてもらい色々吐いてもらおう」



近衛騎士はそう言うと男達に突っ込んでいった。


男達は近衛騎士を知らないらしく焦りを見せていなかった、知っていたら一目散に逃げていただろう、それほどの強さを近衛騎士は持っている。



「相手は一人だ、囲んでやっちまっ!」



近衛騎士は言い切る前に男の意識を刈り取る。



「こいつ強いぞ!」



近衛騎士は次々と相手を倒していく。


(すっすごい!)



「後はお前だけだ」



そして4人はあっと言うまに倒されていき最後の一人が呆然と立ち尽くしていた。


男は、はっ!と気づいたそぶりを見せると女の子の入っている袋を担ぎナイフを当てた。



「こ、こいつの命がどうなってもいいのか!?」



「くっ卑怯な!」



近衛騎士は踏み込む事が出来ずにらみ合いが続く。



「よーし、そこから動くなよ」



「むー!」



女の子が入った袋は陸にあげられた魚のように暴れていた。



「おら、じっとしてろ」



男が少しナイフを強く押し当てたのと同時に何故かユフィーレは男に向かって踏み出した、黙ってこのまま見ていることができなかった。



「なっ、待つんだ君!」



警備隊の人が何かを言ったがユフィーレは止まらなかった。



「その子を…、離せ!」



男の横から近づいていく!



「このガキが!」



こちらに剣を向けてくる。


(ちょっとやばいかも!)


ユフィーレは勢いがついて止まることができない。


死ぬと言う言葉が頭をよぎる。


そう思った矢先に視界には近衛騎士が映った。



「がっ!」



「君のおかげで注意がそれた礼を言うありがとう、しかし勇気と無謀を履き違えてはいけない」



男を倒し片手で女の子を入れた袋を担いでいた。



「すみません…」



「嫌いいんだそれぐらいの年頃の子にはよくあることだ」



袋を下ろして警備隊へ命令する。



「警備隊はこの男達を連行しろ、それ以外の始末は私がやっておく」



「はっ!わかりました、ご協力感謝いたします、それでは私どもはこれで」



警備隊の人は5人を馬車に乗せ連行していった。



「さて、お嬢様助けに参りましたよ」



近衛騎士は袋を開ける。


よく顔を確認するとカール殿下がそこにいた。



「えっ貴方はカール・ヴァリスト殿下!?」



「あっはい、助けていただきありがとうございます」



「女の子?……あっ失礼いたしました!」



そう言い放ち膝をつく。



「顔を上げてください貴方のおかげで助かりました、礼を言います、ありがとう」



「殿下、礼には及びません私はただ、時間を稼いだだけで何もしていません」



「私のことはカールと呼んでください花の姫君」



「わかりましたカール殿下、私のことを知っておいでなのですね」



「別に呼び捨てでもいいのにですけれど…、ええ存じております、学園では有名ですもの」



カール殿下と話をしている間に近衛騎士はロープを解きカール殿下の身なりを整え始める。



「全くお嬢様、あれほど遠くには行ってはいけないと言ったではありませんか」



「ごめんなさい、どうしてもあっちの方が気になって」



「別にいくのは構いませんが私を置いていかないでください、一応護衛なんですから」



「ごめんなさい」



カール殿下は怒られて落ち込んでしまった。



「それでは帰りましょう、このままでは帰りが遅くなってしまいます」



「そうね…」



近衛騎士こちらを振り向くと礼をした。



「ユフィーレ様この度はありがとうございました、貴方がいなければ今頃お嬢様は連れ去られていたでしょう、後日お礼をさせていただきます…私個人が」



「いえあまりお気になさらないでください」



カール殿下もこちらに振り向き言葉を発した。



「私に何か出来ることがあればなんでもいたします、今ここでは返事を聞きませんので後日聞かせてくださいね、それと私が女と言うのは秘密にしてくださいね、それでは御機嫌よう」



ユフィーレの返事も聞かず去って行った。


一人残されたユフィーレは大きく息を吐いた。


(なんだか今日はとても疲れた気がする)


それが昨日起こった事件である。



「…ゆ……ユフィ!」



「どうしたのですか?」



ユフィーレは昨日のことを思い出しておりあまり話を聞いていなかった。



「どうしたではない、昨日の助けてくれたお礼に我に出来ることがあればなんでもすると言ったではないか返事は明日聞くと!」



「なんでもですか…」



「えっと、えっちいのは流石にダメだぞ…いやでもやぶさかではないと言うか…なんていうか…」



恥ずかしそうにうつむきながら小声で何かを言っている。



「ん?何か言いました?」



「いや特に何も言ってないが!?!」



大声で思わず返事をしてしまう。



「じゃあ一つだけお願いしたい事があるのですが」



「ああどんなことだ?」



「それは…」


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