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プロローグ 花の都の始まりから



花の都ファリス、そう呼ばれるようになってから歴史は浅い、この場所は長らく砦として使われていたが元々は小さな村であった。


何も特色がないこの場所で村人たちは細々と生き暮らしていた。


この村がガラリと変わっていったのは1000年以上前の出来事、魔王と英雄の戦いである。


魔王は突如として北の大地に現れ何万もの魔物を携え知識ある者に宣戦布告をした。



「我らは世界を滅ぼす使者なり、生きとし生きるものよ命を差し出せ」



生き物であれば全てを殺し、魔王が通った道には何も残らないと言われた。


ファリス村は北から攻め入る魔王軍を止める砦の一つとして生まれ変わり重要拠点となる。


ここが落とされれば王都まではほぼ一直線な為頑丈に作られた。名をファリス砦、元々この村に付けられていた名前をそのまま使用した。


砦の北には防衛のために多くの砦が造られたがそのほとんどが役割を果たせず魔王軍の手に渡る事になる。


人々は徐々に追い詰められ一ヶ月後にはファリス砦以外の砦は魔王軍の手に落ち、多くの人はこの大陸の歴史が途絶えるのではと噂した。


戦争終盤に王は神からのお告げを受ける、大陸中から戦えるものを集めよと。


人々は最後の攻勢に出る、その中で圧倒的な力を見せたのは後に英雄と呼ばれる一人の女性である。


名は文献に記されておらず詳しい事はわかっていない。


戦の終盤ファリスの戦いでは魔王と戦い負傷しながらも魔王の首を切り飛ばしたと言われている、その後その傷が原因となり帰らぬ人となった。


遺体は砦内の教会地下で眠りについている。


そしてその後数百年砦は北から来る魔物の防衛に使われた。


近年この地より北に新しく都ができファリス砦はその役目を終えた。


王国が管理していた砦周辺の土地は貴族の手に渡り新しい領主が赴任した、その貴族の祖先は英雄とともに戦った一人であり彼の言葉のおかげで花の都と呼ばれるようになる。


英雄を弔うために花を捧げたかった彼だが傭兵であったために王国が管理している砦内の教会には入ることが叶わず息子に遺言で「英雄に花を…」の言葉でこの世を去ってしまう。


その後も子孫が花を捧げたかったらしいが王国の管理になっておりそれができずにいた、しかし近年その子孫が功績を立て、砦周辺の土地を所望したため貰い受ける事が出来た。


簡単に貰い受けることができたのは砦の立地に問題があったためである。


砦は二つの山の間に建てられており、辺りは見渡す限り森が広がり魔獣も多く住んでいて農地にすることも出来ない。


北からの魔物を抑える必要性がなくなったこの砦は利用価値がなくなり王国はどうするか決めあぐねていた所に今回の話がやってきた。


遺言どうり花を捧げることができた彼は今まで捧げられなかった祖先の分も、と思い砦中を花で埋め尽くした。


商売で来ていた商人が砦を見て感動するほど美しい場所になり、そこから人々の噂になり徐々に人が集まり一つの都として成長することになる、それがこの都の成り立ちである。



「…今では砦を囲うように家が建ち新しい外壁に囲まれその中で私たちは暮らしている。」



教卓の前では眼鏡をかけた教師がこの町の成り立ちを喋っている。


その話を聞いている生徒達は年齢がバラバラでまだ幼さいものが多い、しかし騒ぐ者は誰一人いなかった、ここにいる大半の人物は庶民であり真剣に知識を吸収し今後に生かしたい者達が集まったためこのような事になっている。



しかしこの時間を過ごす生徒達の授業態度は主に二つに分かれていた、真面目に話を聞いている者と聞き流すように聞いている者である、その原因は生徒の半数がこの都出身でこの都の歴史を生まれた時から聞かされているからである。


真面目に聞いている者はこの都生まれでは無い貴族の人達が大半であった。


ここは花の都ファリス内にある学び舎の一つレーゼン学園、ここでは多くの知識を学ぶことができる、普通の学園と違うのは貴族と庶民が分かれていない事だろう、学長の教えで貴族は自分たちが守るべき庶民をよく知るべしと良く言っている。


他にも変わっているのは授業の制度である、授業の半分は決められている科目を学ばなければいけないが他の半分は自分の興味のある科目を選ぶ事ができる、異端と呼ばれる錬金術や騎士道精神、他の宗教のことについても、選択すれば自由に学べる。


今の授業は決められた授業なのでクラスのみんなが揃っていた。



「…そして私たちは…」



教師の言葉を遮るように鐘の音が都に響き渡る、ため息を吐いた教師は手に持っていた教本を閉じる。



「今日の授業はここまで、明日は砦内の教会へ見学へ向かうので遅れないように」



そう言い残し教師は教室から出ていった。



「授業終わったー」



クラスの誰かが放った言葉がキッカケとなり緊張の糸がほぐれ教室は一気に騒がしくなる。



「明日の砦見学めんどくせー…」



「ねえねえ知ってる?大通りに新しい服屋ができたみたいよ行ってみない?」



「腹が減ったべ、学食に行こうぜ」



早々と教室を立ち去るもの、授業の復習に入るもの、友人と語り合うもの、様々であるが

その中でも一人異彩を放つ人物がいる。



「…ユフィーレ様、今日もお美しい」



クラスの誰かがそう呟く。

席は一番奥、窓際に座る一人の人物を何人かの生徒が熱い視線で見ていた。



「ああ、花の姫君は今日も花を愛でられているわ」



「貴族であれば婚約が殺到するだろうに…」



その噂の人物は遠い目をしながら窓の外の花壇を眺めている



「あの髪の美しさは宝石にも劣らないよな」



「ああ…」



髪は燃えるように赤く透き通り、その長い癖っ毛はまさに燃え上がる炎のようで荒々しいが対照的に横顔は芸術品のように可愛らしい、名をユフィーレ、学園内での通り名は花の姫君、その名の由来は学園内にある花壇の側で授業をよくサボっていたり自分の席から花壇をよく見つめている為その名を付けられた。


その姿は一つの絵画のようで、一部の生徒はその姿を見てうっとりとしている。


ユフィーレのファンは多く廊下からも多くの人物が教室内のユフィーレを見ている。



「なあ、お前声かけてみろよ」



「無理だって、恐れ多くて何を喋ればいいかわかんないって」



ユフィーレはその雰囲気ゆえに近づく者はほとんどおらず孤立をしていた、しかし嫌われているわけでは無く逆に好意を持った人が大半であった。


入学して一ヶ月、クラスの皆はまだ距離感がうまく掴めていなかった。



「ん?なんか廊下が騒がしくないか?」



誰かがそう呟くと騒がしさが徐々にこの教室へと向かってきていた。



「なっ!」



「嘘だろ!」



「あなた様は!」



教室の外では色々な声が飛び交いそして誰かが教室へと入ってきた。



「皆の衆御機嫌よう、お〜いユフィー、とっくに授業終わっているぞ!」



その姿は凛としているが、茶色の短髪がどこか幼さを残しつつ大人への階段を一歩踏み出したような雰囲気を醸し出す青年がそこにいた。


教室内に入ってきた人物に皆驚いた、それもそのはずヴァリスト王国第3王子カール・ヴァリストその人が入って来たためである、ヴァリスト王国とはファリスから南にある国で多くの賢者を輩出しており知識が生まれる場所と呼ばれている。



「何で学年が下のクラスに殿下が?」



「ユフィーレ様に何の御用かしら?」



「…!」



カール殿下が教室内に入ると空気がガラッと変わった、中には膝をつくそぶりを見せる生徒もいるがそれを見てカール殿下はその行為を止めた。



「膝をつくのはやめたまえ、ここは公の場ではない私は一学生で皆と同じ生徒だ、皆と同じに接してくれ」



「誠に申し訳ございませんカール殿下」



「良い良い、あまり気にするな」



生徒たちを横目に教室の奥へと進んでいく。



「おーいユフィねているのか?」



ユフィーレは声の主人に気がつくと大きなため息をして視線をカール殿下に移す、そして一呼吸置き他の人には聞こえないぐらいの声でボソッと囁いた。



「何ですか?男装王女様」



その言葉を聞いたカールは顔を青くしてユフィーレに詰め寄り小声で返事をした。



「っそ、それは秘密にしてくださいと昨日言いましたよね!」



「確かに言いましたね、すみません、でも少し馴れ馴れしくないですか?昨日知り合ったばかりですよ?」



今度は顔色が青から赤くなり恥ずかしそうにしている。



「それはまあ、そうなのだが。」



(口調が安定しないな…)



ユフィーレは思わず心の中で思ってしまう。


そしてもう一度ため息をするとなぜこうなってしまったのだろうとユフィーレは視線を外に移し昨日のことを振り返る。

思いつき投稿ですのでこちらも不定期投稿になります、ご容赦ください。

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