偽りの勇者
人生の幕切れとは案外あっけないものなのだと、ある少年は思った。
少年の名は『皐月 悠遠』
彼は不運なことに、学校への通学のためにバスに乗っていたら偶然にもそのバスがテロリストに占拠され更には警察の突入の際に流れ弾を受けてしまうという、ここまでくるとある意味奇跡ともいえる死に方をしてしまった。
「なんで…俺が…」
悠遠は己の運命を呪った、というより誰だってこんな状況になれば自らの運命を呪わずにはいられないだろう。
そして悠遠はそのまま息を引き取った。
享年17歳であった。
「う…んー…」
次に目が覚めると、何故か悠遠はふかふかのベッドに病衣を着せられた状態で寝かされていた。
「どこだ…ここ、っていうか俺死んだんじゃ?」
確かにあの時死んだのだと思ったが、もしかすると意識を失っただけで一命はとりとめたのだろうか。
そんなことを考えていると、何者かによってドアが開けられた。
「お、もう起きてるのかどれどれ…うんうんなかなかいい出来なんじゃないか?」
ドアを開けた犯人はいきなり悠遠に近づいて来ると、いきなり体をペタペタとさわりながら何かに満足したようにうなずいている。
「当然です、私が丹精込めて仕立てましたから。」
一緒に入ってきた人物は、先程の人物とは打って変わってかなり不機嫌なようだ。
「ええと、あんたたちは?」
そう尋ねると、「よくぞ聞いてくれた」とばかりに体中を触り続けていた人物が答え始めた。
「自己紹介が遅れてすまないね、ついつい興奮してしまったようだ。
気を取り直して、私の名前はルシフェル、こっちはここでメイドやってるリリスだ。」
体を触っていた少女はまるで宇宙のように黒いドレスを着ており、また美しい銀色の髪を地面すれすれまで伸ばしている、そして彼女の顔を見て何よりも印象に残るのは今まで見たこともない引き込まれるような金色の瞳だろう、そしてどことなく幼げな印象を受ける。
対するもう一人の少女は、先ほどの少女ルシフェルと比べると少しだけ大人びた雰囲気を帯びている。
ルシフェルの言葉通り、彼女の姿は現代日本で主に知られているメイドのイメージとほぼ変わらないものだろう、給仕服を着ているのはもちろんのこと、栗色ストレートの髪の毛の上にはホワイトブリムが乗せられている。
「恐らく君はまだいろいろと状況が分かってないだろうし、他にも説明をしなくちゃいけないこともあるからとりあえずこの服に着替えるといい。」
ルシフェルから手渡された薄手の黒色無地のシャツと革製のズボンに着替えた。
「いまはとりあえずそれで我慢してくれ、後でちゃんとした服は用意するよ」
「それで、結局俺はあの後どうなったんだ?」
とりあえず今一番気になっている疑問をぶつけてみた。
「あの後…というと君が人間界で命を落とした後というので認識に間違いはないかな?」
さらっと自分の死亡を肯定されてしまった、薄々想像はしていたがいざ事実として述べられると心に刺さるものがある。
「あぁ、そうだ」
ひとまずはそう答えるしかなかった。
「その後君は魂だけの存在となって人間界を彷徨っていた、そしてそこを私が見つけある目的に協力してもらうために君に新たな体を与えたんだ。」
「新たな…体」
そう言われてみると確かにほんの少しだが体に違和感がある気がする。
(あとで着替える時に鏡で確認してみるか)
「それで、あんたの言う目的って具体的に何なんだ?」
「ああ、当然説明するとも、だがその前に前提として君に知っておいてほしい事がある。
まずこの世界は君の住んでいた世界とは違う世界だという事だ、君の住んでいた世界が人間界と呼ばれているのに対しここは天獄界と呼ばれている。」
「なるほど、つまりあれか俺は俗に言う異世界転生ってやつをしたわけか」
「そう思ってくれて間違いない、そして二つ目だ私は…人であって人ではない」
片翼の天使はここで転生させた側と転生させられた側に分かれます。
転生させられた視点の話はいわゆる主人公最強系のよくあるストーリーにしようと考えています。
同時投稿はたぶん不可能なので転生させた側を完結させてから転生させられた側を投稿しようと思っています