02. 一通の手紙の重要性
ピーマンの肉詰め旨かったなー
〔昨夜この男・小柳若哉は手紙に見向きもせず夕食を完食したあとゲーム三昧だったのだ。全く話しが進まないから早く開けろ、馬鹿者め。〕
ブロロロ
新聞配達の人のバイクのエンジン音で目が覚める今日この頃。
おはよう
ん?引きこもりのニートの癖に早起きだねって。
いやいやいや、俺はついさっき寝たばかりで睡眠に要する時間は2時間もあれば十分。もともと、寝つきはいいが深い睡眠が続かないため、起きてしまうことが多いのだ。
お前はジジイかって幼馴染の樂に散々言われたが、その通りかもしれない…
最近は誰とも喋ってないから、独り言とか壁に向かって呟くとき滑舌が悪い…もう歳だ…目も悪くなってきたしねハハハ
あ、なんか空気が重い窓開けて外空気でも吸いますかな…ダルい。
風邪が吹き込んで心地がよい。
瞬間、机上にあった手紙が落ちた。
はぁ、送り主の名前も住所も記されてない手紙って普通に怖いよな。俺は決して、決して、チキンとかビビりとかじゃあないが、正直開けたくない。手紙には昔から嫌な思い出しかない。
幼少期、家に1通の手紙が届いた。内容は
子供ハ預カッタ、返シテ欲シクバ
身代金8千万ヲ用意シ、明日ノ正午、
中央公園ニアル少女ノ銅像ノ前マデ持ッテ来イ。
と言うものだった。ここで拐われたのは俺。双子の妹でなく俺。警察のお陰で金も俺も無事保護されたのだ。
あと、それから幼少期はストーカーに追い回され、家にまたもや届く1通の手紙。俺を隠し撮った写真数枚とラブレター的なものが入っていた。そして、またもや警察にお世話になった。
真面目にあのショタコン野郎はキモかった…。
極めつけは、小中学生の時の下駄箱に入ってた謎のいかにも病んでそうな文面の手紙…しかも、毎日。送り主は不明。俺は律儀に読んでやってはゴミ箱にちゃんと捨てた。こっちまで病みそうだった…。
たまに何故か男子からの果たし状が入っててビクビクしながら過ごしてた。
そんなこんなあって俺宛ての手紙には良いことがなかった。
さて、目の前の手紙を開けるか否か。
家族に迷惑をかけるわけにはいかない。もし、脅しとかだったらこの部屋から一生出れない覚悟をせねば。
よし、開けよう、開けるぞ。開けるからな。
白い封筒の中には二つ折してある白いカードが入っていた。
内容は…解読不能…
なんだこの文字、楔形文字とかルーン文字的な、、俺が日本人だって知ってるのかこいつは。
「手紙を読んでほしかったら日本語で送ってくるんだな。」
取り敢えず大切そうな手紙ではないので放っておこうと思う。ゴミ箱行きだな。
ゴミ箱に手紙が着地する前にその手紙は宙にひゅるりと飛んだ。
窓は開けているが今は風は吹いていない。
手紙は空中で停止した。
「捨てるとは無礼な奴!我らが王・レナルド・タ・フェンツェ様が直筆なされた御手紙を読まずに捨てたなんて国に知れたら、貴様なんぞ木端微塵に肉片も残らないであろう!」
な、なんか声がする…ゲームし過ぎで頭、可笑しくしたのか俺?(笑)
可愛い声のSっ毛たっぷりなツンデレ系の女子が俺に話しかけてくれてるだと!姿は見えないが外見もきっときゃわうぃーだろう。何か話さなくては、またとないチャンス、逃す訳にはいかぬ。
頑張れ、俺。
「コンニチハ、あ、あの、ドチラサマで、ですか?」
あ、ヤバイ緊張と引きこもりのせいで片言だし謎の汗が…
「質問に答えて進ぜよう。我の名はレンディエル。国内最高位の魔女、以後お見知りおきよ勇者さん。」
「え、お、俺、勇者とかじゃないです。宛名間違えてませんか?」
おいおい、引きこもりが勇者になるとか現実味ねーな俺の夢。
「間違っておらんわ!小柳若哉!明日から貴様は勇者だ、夢と思うてるかもしれんがこれは現実だ」
「はぁ?」
真面目に何言ってるんだこいつ。引きこもりに勤まるわけないだろ。まあ、異世界なら生きやすくて楽かもな…そんなことは後々考えて、一つ気になることがある。どうしても聞かなきゃいけない気がする。
「あの一つお尋ねしてもよろしいでしょうか。」
「うむ、許そう。」
「その手紙はどういった内容でしょうか。」
「そうか、読めぬか。読んでやろう───」
小柳 若哉 殿
貴君を勇者として召還したい。
我王国の平和を揺るがすものを消滅させ幸福を
もたらして欲しい。活躍を期待する。
(尚、拒否権や代行を一切認めず。)
フェンツェ王国 国王レナルド・タ・フェンツェ
ってめちゃくちゃ重要な手紙じゃねーか!俺の人生に関わるじゃん!
日本語で書けよ…。