第九話 ギルド
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目を開けると知らない天井だった。どうやらカガリはベッドに寝かされている様だ。ニードルスパイダーに襲われたことを思い出し飛び起きると、ビキィィィィ!!と全身に激痛が走りまたしてもベッドに倒れ込む事になった。
「ギャアアア!!痛ぇぇ…」
痛みに悶えていると、部屋のドアが開いた。
スレンダーな若い女性が入ってきた。
「目が覚めたのね、体がボロボロだったから一応治療はしたけど痛みは残ってるだろうから安静にしないとだめよ」
「ここはどこですか?どうして俺はここに?」
「ここは私たちが立ち上げたギルドの休憩室です。ダンジョンに異常があったとと聞いて調査へ向かった旦那がニードルスパイダーに襲われていたあなたを見つけて連れて帰ってきたのですよ」
どうやら助けてくれた人はこの女性の旦那さんらしい。
「旦那が連れて帰ってきてからすぐに治療はしたんだけど、丸二日も目を覚まさなくて心配しちゃったわ。お腹空いたでしょう、何か食べられそうなものを持ってくるわね」
そういうと、女性は部屋から出ていってしまった。数分経つとお盆を持って再びカガリの隣へ戻ってきた。上には、スープらしいものが器によそわれていた。
「お待たせ、ゆっくりでいいから食べてね」
お盆ごとカガリに渡すとベッドの横の椅子に座り優しい笑顔を向けきた。
カガリは渡されたスープを一口ゆっくり飲むと、無言で全て飲みきってしまった。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです。」
「お粗末様でした。少しは元気が出たかしら。ところでお名前を聞いてもいいかしら」
「小鳥遊カガリです。まだ冒険者になったばかりです」
「カガリくんね、私は津島ナナコよ。聞きたいことがあったらなんでも聞いてね」
「あの、津島さん。ここは津島さん『たちが』と言われたんですが、他にも誰かいるんですか?」
「ナナコでいいわよ。いいえ、このギルドはつい最近私と旦那の二人で立ち上げたのよ。所属する冒険者の人もまだ一人もけどね。旦那が冒険者だからダンジョンに入るような依頼が来た時に動いてるだけね」
「あの、ナナコさん、旦那さんというのは…」
「ちょっと待っててね、今呼んでくるから」
そう言うと、部屋にあったもう一つのドアを開けてナナコの旦那さんを呼んでくれた。大柄な男がナナコの後に続いて部屋へ入ってきた。
「おはよう少年。大丈夫かい?と言っても大丈夫ではないだろうけどね、ハハハ。私が津島ゲンジだ、今回の事は気にしないでくれよ?困ってる人が居たら助けるのは当たり前だからな、ハハハ」
ゲンジは大声で笑いながらカガリの心配をする。とんでもないワイルドな人のようだ。カガリは圧倒されながらも思いを伝えた。
「あの、今回は助けてくれて本当にありがとうございました。あのニードルスパイダーを倒す事からしてかなりの実力をお持ちだとお見受けします。出来るならこのギルドに私を入れて貰えませんか?」
「ハハハハ!急にギルド入会希望か、嬉しいぞ!半年ごとに入会行事をするからその十日ほど前に来ていてくれればいいさ。広い心を持てってな、あの英雄クレハも言っていた。詳細はナナコに聞いておいてくれ」
父親の名前が出て誇らしげに思いながらも、お礼を言えたことに一安心した。すると、仕事があるからとゲンジはすぐに部屋へ戻ってしまった。するとナナコは、
「そういえば、あなた小鳥遊って言ったわね、もしかして…」
「えっと、はい。一応小鳥遊クレハの息子です」
「やっぱり、名前を聞いて一瞬思ったけどそうだったのね」
そう言って色々話すと、ナナコさんは仕事へと戻る。
「じゃあ私も仕事に戻るわね。大人しく寝て安静にしててね!おやすみ」
「ありがとうございます。おやすみなさい」
そう挨拶を交わしナナコは部屋を出ていった。おなかいっぱいになったカガリは目を瞑るとすぐに眠りについた。
目が覚めるともう翌日の朝になっていた。体もまだ痛みはあるが動けるくらいには回復していた。
居間へ出ると明日にはサザガーイへ帰らなければならない事を伝えると朝食を食べ、改めてお礼を伝えるとカガリはそのギルドを後にした。
帰り道にクレハとツグハへのお土産を買い、宿屋へと戻った。部屋へ出していた服などの私物をバッグへ詰め込むと既に太陽はてっぺんを回っていた。宿屋の食堂で軽く食事をとると部屋へ戻りベッドへ寝転がった。
包帯だらけの自分の腕を見ながら、何も出来ずに助けられた事を悔やんでいた。昔思った、父のようになりたいという思いはずっと消えていないがそれは夢でありただの理想ではなく目標として成立すらしていない。考え込んでいる内に眠ってしまったのか窓に目を向けると日も暮れ始めており、明日の朝一番の馬車に乗るためにそのまま、安静に休むことにした。