第五話 父の思い出【後編】
カガリは父を尊敬し、父のようになりたい!と感じた出来事です!
現れたのは父であるクレハだった。
「カガリ、大丈夫だったか。見回りをしていると急にモンスターが現れて村に入り込んできたんだ。村人達を避難させてから退治したんだが損害は免れなかった」
「村のみんなを助けたんでしょ?どれだけじゃダメなの?」
悔しそうな父親の顔を見てカガリは五歳ながらにそのような質問をすると、
「命も大事だが場所というものもとても価値のあるものなんだ。場所というものにはそこであった出来事が思い出として残るんだ、生まれた場所、家族と一緒にご飯を食べた場所、笑い合って涙を流した場所、そういう物が形として残るんだ。それは一度壊れてしまうと二度と同じものは出来ないんだ。俺はそれが守れなかったんだ、それがどうしても悔しいんだ」
父は命だけではなくその人の大切なものも守ろうとしていた。そしてカガリは、その言葉に鈍器で殴られたかの様な衝撃を受けた。
カガリが父を本当の意味で尊敬したのはきっとこの時のこの言葉があったからだろう。普段は少しおっちょこちょいな父親だが、ふと他人の事になると真剣になる少し可笑しな英雄とも世界で言われている位なのだから。
次の日山の上にあるカガリの祖母にあたる人が埋まっていると言われるお墓にお参りをしてから二人は一度ツグハのいる家に帰ると父は昨夜起きた事を伝えるために出ていった。カガリは、
「僕、お父さんみたいなかっこいい冒険者さんになりたい!」
そう母に告げると、
「そうね〜、難しいけど出来る?自分が好きな事だけしててもダメなんだからね。嫌いな事も自分には何もいい事が無くても助けるのよ。カガリは我慢できるの?」
「うん、お父さんみたいになれるなら何でも我慢する!お手伝いもするし嫌いな事も野菜もちゃんと食べるもん!」
「それは凄いわね。じゃあお父さんと同じくらい強くなってたくさんの人を助けてたくさんの人を幸せにしてお母さんに教えてね」
美しい笑顔で話を聞くツグハとカガリはそんな約束をした。