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Metal Doll  作者: アンファング
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見知らぬゲーム

 此所は企業発展を目指して海の上に建造された人工島「ラウンドアイランド」の中心部にある町、近械町(こんかいちょう)

 

 機械工業が、急速に発達した事により生活や事業等の様々な分野が、機械化された町である。

 

 町の中心部にそびえ立つ巨大なビル、「セントラルタワー」には町中の機械の制御や、配備されている数億台のコンピュータにより、世界中の情報が何処よりもいち早く知る事が出来る。

 

 そして、その様々な情報を知るためにセントラルタワーの周辺には多くの住宅地が広がっている。

 

 その住宅地の中にある何処にでもあるような普通の家に、少年「斬原 巧」は住んでいた。


『ジリリリリリ!』


 アラームをセットしていた目覚時計の音が部屋に鳴り響く。


 その音で布団の中にいる巧は目を覚ました。


「あ……朝かぁ…………って、もうこんな時間かよっ!?」


 手に取った時計の針は8時を指していた。


 巧の通う高校には8時30分以内に校内に居ない場合、一週間の掃除当番にさせられてしまう、という厳しい校則がある。


「くっそ、全部クリアするとは思ってなかったんだけどな」


 巧は、テレビの前に置いてある5種類のゲームディスクを見ながら呟く。


 これは昨日買ってきたばかりの物なのだが、一つ目をあっという間に終わらせてしまったため、もう一つをやる事にした。


 しかし、それも同じような速さでクリア……とそれを繰り返していて、昨日の夜中だけで全て終わらせてしまった。


「難しいって聞いてたけど大した事なかったな……」


 巧は、単に上手いだけなのかそういう体質なのか解らないが、テレビゲームをいかなるジャンルであっても僅かな時間でクリアまで導いてしまう。


 勿論、そのゲームのクリアタイムは平均値より断然早い。


 そのため、日々巧は自分を満足させるため難しいと言われるゲームを探している。

 

「まっ、暇つぶしにはなったからいいかな」


 そういいながら、巧はまだ眠い目を擦りつつ制服に着替える。


 「巧ー? 早く朝御飯食べなさいよー」


 隣りのリビングから、いつもの様に母の声が聞こえてくる。


 だが、今の巧に朝食を食べている時間はない。


「えーっとごめん! 朝飯いらないから! 行ってきまーっす」


 母親にそう言いながら着替え終った巧は、部屋のドアを開け走って家を飛び出した


「間に合うか、間に合わないか……間に合わないかなぁ……」


 巧は、自転車を急いで引っ張りだしながら呟いた。


「さーてと、掃除当番にされないためにさっさと行くとしますかっ!」


 巧は自転車にまたがると、全速力でこぎ出した。


 巧は、いつものように家をでてすぐの所にある十字路に向かった。


 この辺りは、電化街や、ゲームセンターなどが立ち並ぶ場所で、巧が毎日遊んでいるゲームセンターも此処にある。


「此処まで機械化してんのに、なんで自転車は機械化してくれないのかねぇ……」


 巧は、ペダルを漕ぐ足が辛いのでそんなことを呟いた。


 毎日毎日、自転車を漕いでいると、たまにそんなことを思う。


「なんかこう…道路が勝手に動くとか、何もしなくても目的地に着くとかさぁ……」


 そんなことを思っていると、後ろから巧を呼ぶ声がした。


「おーい、巧ぃー」


「おぁ?」


 呼ばれて振り替えると、目に映ったのは巧の友達で、ゲーム仲間の「三部 賢人」(みべ けんと)が同じく自転車でこちらに向かって来ていた。


「なんだ、お前か……」


 巧は、少しがっかりした表情をする。


 それを見た賢人は、


「ダチに対してなんだ、は無いだろなんだは」


「別に深い意味は無いけどさ……少しは期待を裏切ってほしいっていうかさぁ……」


「何わけ分かんねー事言ってんだ?いいから早く学校行こうぜ?このままじゃ、掃除当番だしなぁ」


「あ、忘れてたわ」


 巧は、何の為に朝飯も食わずに家を出て来たのか思い出した。


「忘れんなよ……」


 賢人は飽きれて言う。


「と…………とりあえず、さっさといくぞ!」


 巧は、足に力をいれ全速力で駆け出す。


「あ、おい!待てよ!」


 賢人も、急いで巧に着いていった。


「あ、そういやぁ昨日……俺がオススメしたゲームどうだった? 中々ムズかっただろ?」


 賢人が思い出したように聞いてきた。


「あぁあれ? 予想通りすぐ終わっちまったよ」


 昨日の事を思い出して、残念そうな顔で巧は言い返す。


「あっちゃ~、やっぱりかよ? お前の苦手なシューティング系も入れといたのによぉ…」


「あのなぁ? 俺だって苦手分野は頑張って克服してるっての」


「マジかよ? じゃあアクション系のロボゲーで射撃も使いこなせるようになっちまったじゃんか……まーたお前に勝つ夢が一歩遠のいたか」


「ま、お前じゃ無理だな無理」


 巧は笑いながら、賢人に言い放つ。


 確かに、今まで賢人は巧に何度もロボット物のゲームで対戦を挑んではいるが、1度も勝った事が無い。と言うか様々なジャンルのプロが居るであろうゲームセンターの場ですら負けた所を見た事が無い。


「くっそー……流石にチャンピオン様は言う事違うなぁ?」


 賢人は嫌みたっぷりに負けじと言い返す。


「あのなぁ……只でさえその呼ばれ方は嫌いなのに更に様をつけるなよ、様を…………」


「様は様だろぉ? 1日でゲーセン内全ての記録を塗り替えて全ランク1位だぜ? お陰で、あそこのゲーマー達に「チャンピオン様っ!」て呼ばれてんだからさ」


「あれは……呼ぶなって言っても聞かねえからさぁ……」


 実は少し前に、いつも学校帰りに通っているゲームセンターで賢人が冗談で


「なぁなぁ、お前なら此所のゲームの記録、全部塗り替えられるんじゃねぇの?」


 と、言ってきたので


「じゃあ、やってみるか?」


 勿論巧自身も、軽い気持ちで挑戦する事にした。


 最初は、少しやったらすぐにつまずいて終わると思っていた。


 が、予想とは裏腹に次々と記録を塗り替えてしまい、最終的には店内全てのゲームの記録を塗り替えてしまっていた。


 それ以来、それを見ていたそこのゲーマー達に「チャンピオン様」と呼ばれている。


 しかし、巧本人はそれを良く思っていない。


「大体……あれはあそこのレベルが低かっただけだし、「チャンピオン」とか「様」とかつけられる程の事じゃねぇよ……」


「なーに言ってんだよ?あれはお前の実力だっての。なんなら俺は「巧様」って呼んでやろうか?」


「なっ、お前、ふざけんなっ!」


 にやにや笑っている賢人に、右手を振り上げて殴りかかろうとする。


「わっ、馬鹿っ、よせってっ、倒れるって!」


 賢人は自転車のペダルを急いで漕いで、巧から離れた。


「あ、おい、待ちやがれっ!」


 巧も負けずに、立ち漕ぎでスピードを出し追いかける。


「そうだ、このまま学校まで競争しようぜ? 体力ならお前に負けないからな~?」


 賢人はそう言った後、全速力で自転車を漕ぎだす。


「おいコラ、賢人! 待てっての!……だぁぁぁもうっ! やってやるよ!」


 どうするか一瞬迷ったが、巧は全速力で賢人を追いかける事にした。


 どうせこのままじゃ、急がなければ学校に遅刻してしまう。それならこれは、賢人を追いかける「ゲーム」と思えばなんだか早く着けそうな気がした。


「よっし……ゲームスタートだっ!」


 巧は、気合いを入れ直して自転車のペダルを漕ぎ始めた。


――――――――――――――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 朝から授業に取り組んだり、運動をしたりといつもと同じ学校生活を送る生徒達が使う教室も、その使用者達が居なくなると随分静かな場所になる。


 そして、静まり返った教室には今、学校の終了を知らせる鐘が鳴り響く。


 だが、この時間には誰も居るはずの居ない教室にホウキとチリトリを持ってたたずむ2人の生徒、巧と賢人が居た。


「ちぇっ……結局こうなんのかよ」


 巧はホウキを乱暴に扱いながら、機嫌悪そうにぶつぶつと不満をこぼす。


「おいこら。ちゃんとゴミ入れろ」


 それを聞きながら賢人はチリトリを構え、巧のホウキの動きに合わせながらゴミを入れていく。


 この2人、急いで自転車を漕いで学校まで来たはいいがカバンを忘れると言う重大なミスをした。


 巧達の通う学校には、カバンの様に中に何かを入れられる持ち物を持っていないといけないと言う訳の解らない校則がある。


 勿論取りに戻る時間も無く、2人はこっそり校内に入ろうという事にした。


 頃合を見計らって、学校を囲んでいる塀を乗り越えようとした。


 だが、その時偶然見回りをしていた先生に見つかってしまい全速力で逃げだした。


 だが運悪く相手は体育教師、逃げ切れる筈も無く呆気なく捕まり厳しいお叱りを受け、現在今日から一週間の掃除当番をやらされている。


「大体よーカバンとか何かしら入れ物を持ってなきゃ学校入れねぇとかおかしいだろ……」


 ゴミをはき終わったホウキで遊びながら、巧はまだぶつぶつ言っている。


「んなもん校則作った先生方にでも言ってこいよ」


 呆れた声で呟き、チリトリに入れられたゴミをゴミ箱に捨て、掃除用具箱に片付ける。


「それができたら苦労しねぇよ……」


 遊び疲れたのか巧もホウキを片付けに掃除用具箱に向かい、ホウキを投げ入れてドアを閉めた。


「さぁてと……あらかた終わったし、帰るとしますかぁ……」


 軽くあくびをしながら、巧はカバンを肩にかける。すると賢人が押し止めるように


「ちょ~っと待ったぁ!」


 と、言いながら巧の前に回り込み、1枚のチラシを掲げる。


「ん……? なんだよこれ?」


 その掲げられたチラシを手に取り眺める。



 〈本日、近械町のゲームセンターに新作ゲームが降り立ちます。新感覚のロボットアクション!その名は……〉


「メタル……ドール……?」


 巧はそう呟いた。チラシにも


 【Metal Doll】


 と、黒字でデカデカと書かれ、その回りにはロボットらしき物が戦っている写真等が掲載されている。


「なんでも、かなり手の混んだ作品らしいな。でもよ、今まで何処にもそんな情報無かったんだぜ? それなのに昨日、ネットで調べ物してたら見るとこ見るとこ至る所に宣伝の広告とかされてて、こりゃプレイするしかねぇなと思った訳よ」


 賢人は、巧ですら知らなかった情報を話せて嬉しそうにしていた。そして更に話を続ける。


「そんで、このゲーム本当に情報が少なくてさ、操作方法とかストーリー、登場人物とかも明らかになってなくて解ってんのは、ロボットが関係してるって事だけなんだよなぁ」


 チラシのロボットの写真を見ながら、賢人は頭を抱えた。


「ふーん、ほとんど謎ってか……だけどそこまでして隠してるって事は、何かしら凄い秘密があるって事だよな? これは……面白そうだな」


 巧の「面白そうだな」という言葉を聞いた瞬間、チラシと睨めっこをしていた賢人が振り向いた。


「巧っ!! やっぱりお前ならそう言うと思ったぜ! よっしゃ、ならこの後はゲーセンに直行してさっそくプレイだな? そうと決まれば、今すぐチャリを取りに行かねばぁぁ!」


 言葉に反応した賢人は、目を輝かせながら叫び、教室から走って行ってしまった。


「…………」


 その行動に巧は暫く呆気に取られて居たが


「ったく、勝手に決めんなよなぁ……ま、今日は暇だったし付き合ってやるか」


 気を取り直し、近くに置いていた鞄を持って椅子から立ち上がった。その時、机の下に賢人が落としていった先程のメタルドールのチラシを見つけた。


「おいおい、今からやろうとしてる物のチラシを落としてくなよ……」


 机の下に手を伸ばし、そのチラシを拾いあげる。そして、もう一度見てみる。


「メタルドール……か。……このゲームなら、俺を満足させてくれんのかな? ま、期待するだけなら……って早くあの馬鹿追わねぇと」


 掲載された写真を一通り見回すと、そのチラシを急いで鞄に突っ込み、巧は教室を後にした。



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