指数関数 e^xで戦うダンジョン
オイラーのベルト理論をファンタジーで使えないかについてです。
これは円柱にロープを巻きつけると巻き付け回数によって摩擦が増大して外れなくなるというものです。
数式は
外す力=外すまいとする力X{e^(摩擦係数×接触している角度ラジアン)}
になります。
摩擦係数:石=0.3として
一回巻くと
外す力=外すまいとする力X{2.7^(0.3X2π)=外すまいとする力X6.58
二回巻くと
外す力=外すまいとする力X{2.7^(0.3X4π)=外すまいとする力X43.3
三回巻くと
外す力=外すまいとする力X{2.7^(0.3X6π)=外すまいとする力X284.9
……
五回巻くと
外す力=外すまいとする力X{2.7^(0.3X10π)=外すまいとする力X12332.58
になります。
作例1
ここはダンジョン最下層。
オークジェネラルの{HP}は5000、こっちの攻撃力は30だ。勝てる道理がない。
だが魔法使いが高等呪文で魔神を呼び出せば勝てる!
しかしそれには高等呪文の長い詠唱が必要だ。一分以上掛かる。
そこでワナにかける事にした。
オークジェネラルが超重量級のメイスを振り回しながら攻撃してきた。
ブンブン、ブンブン、ゴッツ!
戦士が盾をかまえて防御したが一撃で吹っ飛び、壁に叩きつけられた。
大腿骨骨幹部骨折、アキレス腱皮下断裂。
すまん、フェイクだと見破られるんだ、あとで治療魔法で治すから!
シーフが魔法で強化した革紐をオークジェネラルの利き腕じゃないほう目掛けて投げた。
クルクルと革紐が腕に絡まったがオークジェネラルは気にも咎めない。
ブンブン、ブンブン、ゴッツ!
上肢デグロービング損傷。
すまん、本当にすまん、あとで治療魔法で治すから!
ズシンズシンと接近してくる。
近くの石柱に革紐を五回巻きつけた。
オイラーのベルト理論で五回で一万二千倍の力に耐えられる筈だ。
「よいしょ、よいしょ」
ちょっと非力だがクレリックの女の子に引っ張ってもらった。
すまん、フェイクだと見破られるんだ、頑張ってくれ!
バビンッ!
オークジェネラルの猛進が突然非力なクレリックの引っ張る革紐に妨げられた。
ここでオークジェネラルは自分の怪力を過信しているため、怪力で引っ張り合いに出るだろう。
だがオイラーのベルト理論の一万二千倍の力に勝てるかな?
予想通り、オークジェネラルは怪力無双を過信するあまり、猛烈な勢いで革紐を引っ張り出した。
たかが小娘一人ごときの細腕に負けてたまるかといったところだろう。
その間に魔法使いが呪文を詠唱する。
「地獄の業火をまとう灼熱の王……」
長い、こういう時は本当に時間が長い。
「よいしょ、よいしょ」
あいかわらずクレリックの女の子はマイペースだ。
しかしそれがオークジェネラルの癪に障るのだった。
火に油を注ぐとはこのことだ。
物凄い力で革紐を引っ張るので石柱の基部が妖しくなってきた。
革紐より石柱を引っこ抜きそうな勢いだ。
メリメリ、ミシミシッ
「その頚木を解き放ち、炎の腕、炎の息吹、」
おいおい、まだかよ、石柱が引っこ抜けるぞ!
バキバキバキッ!
とうとう石柱は引っこ抜けてクレリックの女の子はすっ飛んでいった。
指尖部打撲骨折。
すまん、自分で治癒魔法で治してくれ!
ズシンズシンッ
よくもふざけたマネをしてくれたなといった風体のオークジェネラルが突進してくる。
「我、命ず!焼き払え!イフリート!」
間に合った!
物凄い炎の魔神かなにかの形が現れたと思った瞬間、オークジェネラルは黒コゲになってしまった。
ダンジョンの床が炎の熱で溶けてすぐ凝固した。1200度ぐらいの高熱だ。放射熱も凄い。
ようやく抜けた石柱を確認したら、よく見ると六回巻いてあった。
そりゃあ勝てるだろ。
はい、ストップ。
指数関数 e^xで戦うダンジョン。そういうのがあってもいいのではないでしょうか。
■文章中受傷詳細
大腿骨骨幹部骨折:交通事故などの激しい衝撃で大腿骨の中央部(幹部)が受傷する事。
アキレス腱皮下断裂:アキレス腱が着地のショック等で断裂する事。
上肢デグロービング損傷:圧延機や輪転機などの回転するローラーに挟まれて深筋膜上で皮膚軟部組織が剥脱される損傷。
指尖部打撲骨折:つき指。